苦手
少し肌寒い夜。僕は夢を描いていた。
赤色でも黄色でも青でも緑でもない。なんとも言い難い。道路に交じっている鉱物のような夢。ただ静寂で息が凍るような夜に描いていた。
「絵を描いてるの?陰キャラ?」
暑く湿気が漂っている教室で。まだ入学して半年もたっていないのに。
「絵を描くのが好きだか・・・」
「運動部なのに文化部みたいで変だね」
返答することを遮られた。彼女は芽衣、小島芽衣だ。僕はこの子が苦手だ。なんというか自分が軸で生きてそうで。自分とは人種が違うんだろうなと思いながら遠くで見ていた。
「そうかな。そういう君も変わってると思うよ」
皮肉で返してやった。だって自分からしたら変わっているんだもん。
「よく知っているね!まさか桐谷君にそんなこと言われるとは」
動揺した。笑顔で返されるととても申し訳なく感じた。
「え、ああ、ごめん」
「え?なんで、変わり者ってこの世で一番の個性だとおもうよ!変わり者同士仲良くしよ!!」
この子正気か。20人くらいいるこの教室でよく大きな声で言えるな。恥ずかしくないのだろうか。外から光が差し込んだ。急に机、黒板が彩りだした。
「うん。よろしく」
この一言で僕の人生が大きく変わることも知らずに。