なろう系「じゃない」ジャンルが抱える大問題
なろう系「じゃない」ジャンルは、ランキングからも、検索からも探しづらいという大きな問題をはらんでいます。
そもそも、小説に限らず「じゃない」ものの検索は、とてもむずかしいですよね。
仮に、好きな色を質問したというシチュエーションで想像してみましょう。
「好きな色は?」と聞いたときに「赤色」と返答されれば、対象は一瞬で絞られます。
しかし、これが「赤色じゃない色」と返ってきたら、どうでしょう?
「赤色じゃない色」は、それこそ無数にあります。「赤色」以外はすべて対象になるので、とても絞りこめません。
なろう系「じゃない」小説は、検索しづらい。
これは、対象以外のすべてが対象になってしまうためではないか?
というのが、筆者が最初に立てた仮説です。
逆にいえば、「そうじゃない」ではなく「そうである」という検索ができれば、この問題は解決できるのではないか?
ということなのです。
世の中を見渡してみれば、「そうじゃない」が「そうである」に変わったものを、たくさん見つけられます。
たとえば、2019年におおいに流行った「タピる」という言葉。
タピオカ自体は、飲むわけじゃない。
でもドリンクだから、食べるわけじゃない。
そんな葛藤を「タピる」という言葉が、一気に解消してくれました。
2018年には「U・S・A」が大ヒットすると同時に、「ダサかっこいい」という言葉が生まれました。
ダサいんだけど、それだけじゃない。
そうかといって、かっこいいだけじゃない。
新語、流行語という新しい言葉は「そうじゃない」が「そうである」に変わった瞬間に生まれます。
そして新しい言葉は、広く認知され、人々に受け入れられた瞬間に、新しいジャンルを確立するという力を持っているのです。
これらを例にして、「じゃない小説問題」を考えていきますと、このような仮説も立てられます。
なろう系「じゃない」ジャンルが、低迷・停滞し、表層に出てこれないでいるのは、新しい言葉=キーワード=新ジャンル名の発明をおろそかにしているからではないか?
仮説を立てたところで、一度、なろう系小説をふり返ってみましょう。
ひとくちになろう系と言っても、対象となる言葉=ジャンル名はたくさん思い浮かびますね。
主人公最強、無双、俺TUEEE
転生、転移、集団転移
チート、最強スキル、成り上がり、やり直し
悪役令嬢、婚約破棄、追放、ざまぁ
これらはすべて、最初からあったものではありません。
だれかが「これだ!」と表現し、多くの人が「それだ!」と受け入れたものです。
なろう系は、常にだれかが新しい言葉を発明し、広く認知されて新しいジャンル(サブジャンル)として受け入れられてきた。
その結果、なろう系小説は活性化しつづけ、なろう系というジャンル全体が成長しつづけているのです。