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あれからシュティと和気あいあいと話しながら支度をし私たちはお祖母様のところへ向かった。

この家から男が出てくるのは不自然極まりなく変な噂を立てられても困るので裏口から変装具をつけて従者の格好をしでて馬車を捕まえる。

行き先を伝える頃には馴れない身体のせいかはたまた3年振りにお日様の下を歩いたからだろうか少しばかり疲れてしまっているようだ。


進行方向にシュティ向側にソフィアが座り馬車は走り始めた。


馬車に揺られ揺られ、揺られ、揺られ.......こくっ........かくっ...すやぁ..........あらっ、危ない危ない。


「お嬢様、今寝ようとしましたね。」

あれだけ寝てたのにまだ足りないのか?って顔で見ないで欲しいわ?だってこんなに心地よく揺られたらそりゃね。


「ごほん、それよりもシュティ、お嬢様じゃないでしょ?」


「...ノア様もお言葉が乱れていらっしゃるようですが?」


ぎくっ...........それは知らない振りをしていたのだから言わないで欲しかったわ。

ならない口笛を吹いて誤魔化すように首を横に向け目線をずらすと前から呆れたようなため息が聞こえた。


シュティはいつもお嬢様と呼んでいたのだがこの姿だ。代わりに坊っちゃまと呼びましょうかと提案され試しに呼んでもらったのだが何故か背筋に冷たいものが走り体が拒絶したので名前呼びでお願いしますと頼んだのだ。そうしたらノア様と呼んでくれることになった。?


このノアという名前はお祖母様が考えてくれてたものだ。

正確には考えたのでは無くはじめからついてある名前ではあるそうだけれどね。


この姿はノアルカイト・リューゼって名前が正式名称...(かしらね?)らしいけれど長いし私自身も自分のん名前を省略して公表(?)しているので略させて貰った。


そう、眠っている間、お祖母様もお見舞いに来てくれていたらしく徐々に変わっていく私の姿を見てその時にまた予言をしたらしい。「3年後の今日目覚めるよ」と。そのついでだと名前も置いてったって...だから人払いがしてあってシュティしかいなかったわけね。失礼だけれどみんなクビになったのかと思ってたわ。


そして何やら今度はアクヤクレイジョウ役からコウリャクタイショウシャ役に変わりったと。...なによそれ?




って私、3年も眠っていたのね... シュティは全く変わってないし屋敷内も変わってなかったからそんなにも時間が経ってるなんて思いもしなかったわ。

うわぁ、今から勉強とか色々と間に合うのかしらねぇ.... 頭が痛いこと...ううっ......





嫌なことは後で散々聞きそうなので今は誘拐事件(仮)から今にかけて欠けた記憶の他に足りない記憶が無いかシュティと確認することにした。そう高位な魔法ほど代償が大きくつき大体は気づかない。(・・・・・・)気づいた時にはもう遅く全て手遅れなんてざらにある。だから確認が必須なのだ。とは言ってもかけられた方が代償を取られるなんて聞いたことがないけれど。


心做しか緊張した面持ちでシュティに自分()の名前、次にこの国の名前とその国の王の名を聞かれた。


「えっと私の名はスフィアリゼ・ティファート。そうね、私の家は簡単に言ってエンノシタノチカラモチって言うらしいわね?」

これもお祖母様の言葉。派手な手柄などは持ち合わせていないがこの国には欠かせない存在、それが我がティファート家。知らない人が多いけれど公爵家並みには裏権力を持ち合わせているわ。だから私は大暴れできたのよね.....

思い出して落ち込むが今は記憶の確認が大事、幼い頭を使って思い出していく。


「この国の名はドラッフェルト王国 「宝の持ち腐れ(遊休の国) 」って影で呼ばれてるわね 」


先代国王が戦に強く政に弱く土地を余しすぎていているのだ、分配は済んでいるのだが王が王なら家臣も家臣ってこと。現在の隣国がそれを知らないのは自国の立て直しが大変だったからであって気づかれたらまた狙われてしまうかもしれないわね。最も武で勝てないので戦争になるなんてことは無いが王子たちが次の国王になるため争っていらっしゃるのなら話は変わってくるのかもしれない...。その苦労して胃が痛そうな王様の、


「お名前よね...国王陛下のお名前はたしか..........そう、バルタザール!」


影が薄いとは言わないが前王のせいでインパクトがなく普通の王様。実は正式名称はすごーく長く覚えられないほど...バルタほにゃなやザール。そう国王だものね、いくら威厳がなくても。





ちなみに第1王子の名前はベルンハルト、第2王子はシュバルベルドという名だ。第1王子の方はフィエル系統の魔法が得意で、第2王子の方はヴァサァ系統の魔法が得意らしいわ、魔法愛好会会長の私としてはぜひとも見せてもらいたい!ちなみにどっちもジュゲムさん並よ。


埃の被った宝石、今は亡き地図に乗る程の宝って呼ばれている第3王子もいるらしいけどみたことないわ、噂では床に臥せってるとか。そして第3王子はエインス系統の魔法が得意と聞いたわ!


基本的に王家の血を継いでおられる方々笑 ですから魔法の威力などの格が違うのですがどうやら剣術の方が好みらしくあまり力を入れてないのだとか?遠目からでもどんな方たちなのか見てみたかったのですけれど私実は接近禁止命令が下っておりますの。残念だわ...。




この国では爵位の他に個人に1(アインス)から13(ドライツェーン)の数字から位が与えられる。13が王様の数字12(ヴェルフ)は王妃。その子らには1が、11(ルフ)はそれらとそれらの宝を守る騎士へと。これらの数字を手に入れるためには学園への入学が必須なのだ!


学園は2(ヴァイツ)の数字を貰って始まるの、2より落ちると退学。察しのいい方は解るだろうけれど問題行動を起こすと位って下がるの。ちなみに10まであるって言ったけどそこまでたどり着いた人はいないの。普通のお家で6、最良家でさらに頑張っても7(ヴェン)8(アハト)取れるか取れないかぐらいね。

もうそこからはもう異次元なのよ。

噂もあってどうやら10の称の中にもまだあるのだ!


それでね、実はお家の位が上でも数字が下位なら下位の扱いをされるの。大体はそんなことにはならないから大丈夫だとは思うのだけれどちょっとドキドキするわ。



でもこれはあくまで[魔法]が使えるもの達の価だ。



この感情を誤魔化すよう窓から外を見ると木が生い茂る森に入っていた。木の影から小動物が覗いていたり見たことも無い変なきのこや蔦、不思議なお花など心躍る場面がそこには広がっていた。ふふっ、帰りに寄り道したいわね。


そんなこんなでちょっと振り返ったところで着きました、お祖母様の所に!



お祖母様の家は変わっていてなんとツリーハウスなのだ!この森一大きい木の遥か高い場所にあるのでそこから見る景色は絶景なのよ。樹齢10000年はゆうに超えているだろう巨木の上にちょこんと質素な小屋がぼこぼこくっついているようにみえるツリーハウス。一つ一つの部屋が別れているように見えるがそこはお祖母様クオリティ。扉に手をかけ行きたい部屋を思い浮かべるだけで開けた先がその場所に早変わりする不思議扉があるのだ。誰にでも使用可能なためこの場所にしかなくこの周辺にしか使えないように一応管理はされてある。


さあ一声で呼べるといいのだけれども。すぅ、


「お祖母様ー!!」


と声をかけるとしばらくし木の枝が動き出し階段になっていく。うねうねうねうね動くその枝はなんだかミミズみたいでちょっと気持ち悪い。はやく終わらないかしら。時間はかかるけど1回1回こうやって階段が作られているのなら刺客とかに狙われる心配もなくいいかもしれないわね。


そんなことを考えているうちに長い螺旋階段が出来上がった。

枝が地面に着いたことを確認し上を見上げる。はるか高くにあるためかはたまたキリが出ているのか、雲に隠れているのか...どこまで登ればいいのか目視できない所まで登っていかないといけないことがわかった。


「シュティ、やっぱり一か八かで魔法...「ダメですよ。.....はぁ、やっぱり私も一緒に行きます」


うわーん....





はぁ、はぁ。いくら鍛えられていた体でもこれはキツい。明日は体が悲鳴を上げ始めるだろうと考え少し憂鬱になる。男の子の体ですらこれなのだ。シュティは大丈夫かしら?と後ろを振り返るとシュティもまた息が切れていた。ぜぇぜぇって聞こえるのだけれど足が震えているように見えるのは幻覚よね...1度休憩を挟みたいところ...なのだけれどあのお祖母様のことですもの一気に登ってしまわないと遅いと癇癪起こされ何を起こされることやら....。


想像してしまい少し身震いをしながらひたすら登って登って登ったときにやっと扉が見えてきた。


「やったわ!シュティ、もう少しだから頑張って!」


祖母にただ会いに行くだけなのだがこれはもうさながら小さな大冒険...。

喋るるまでの息がないのか震える手で親指をたて了解の意を伝えてくれた。ごめんね、魔法が使えたら楽だったのに。流石に体が変わっちゃったから下手に使って自爆したりしたら溜まったものでは無いので使うのはやめている。これはこれで辛いけれど木っ端微塵は勘弁...






ハアハア息を吐きながらようやくたどり着いて扉に手をかけ押し開く。ぎぃと開いた扉の音に反応した相手が視線を向け認識したと同時にこちらに駆け寄り手を握られる。今日は抱きつかれなかっただけましかな。


「いらっしゃ~い!もー!待ちくたびれちゃった!」


そこには蜂蜜のようにゆるりとウェーブのかかった髪で小動物のようなくりくりな瞳を持った16歳位の見た目をしている...というかそのまんま(16歳少女)のお祖母様がほほを少し膨らませていた。



「はぁ...お久しぶりですお祖母様。お変わりはありませんか?」


「えぇ、何もないわ。..フィーちゃんも何も無いようで良かった♡さぁ中に入って?」

...取ってつけたように言われているように感じるのは私がお祖母様のことが苦手だからだろうか?


そのまま手を引かれて連れていかれそうになったので握られた手をさりげなく外しながらシュティに視線を向けまたお祖母様の方に向き直し少し困った顔をする。そうシュティはもう限界を突破してる。



「お祖母様、シュティを休ませたいのですがどこかお部屋をお借りできませんか?」


すると今はじめてシュティの存在に気づいたという様子で驚きながら目を向けた。この高さだ、私しか登ってこないと高を括っていたのが間違い。ちょっとした私への悪戯だったのだろうが目覚めたばかりの病み上がりと言っても過言ではない私をあの過保護なシュティが1人にするはずないのだ。


本人には申し訳ないが普段1人でいる時にしか悪戯を仕掛けて来ないお祖母様にカウンターを仕掛けれたようで少し嬉しくなってしまった。ふふっ、あの予想外!って顔最高だったわ。などと少しの優越感に浸っていると今度はソフィアの顔がぽかんとマヌケ顔に変わった。


「あら、シュティアちゃん大丈夫?じゃなさそう...少し休んでなね?」

「あ..りが.........と...う..ご...「あらあらあら、っんしょと」「!?」


てくてく、ガチャ、とさっ。


「ごゆるりと~♡」


なんて華麗なお姫様抱っこ&ベッドin...。女性が一度は男性にしてもらいたいことランキングに大体入っているお姫様抱っこを軽々できてしまう私のお祖母様...あれ?お祖母様って何?私のお母様のお母様よね??...待って、今お幾つなんだろうか。誰も教えてくれないし数えたこともなかったわ、えっと今私が1「フィーちゃん?」 ...考えないでおこう。



「うふふ♡それよりもや~ね、祖母様なんて呼ばないでよ~!年齢は近いんだし?そうねメリナって呼んでよ~!!」


「いや、流石にそれは...」

冗談じゃない。一応私の祖母...なのよね?

私よりもまだ年上の見た目だけれどその差はだんだんと縮まってきている。なんだろうか、なにか底知れない恐ろしさを感じる。ゾワゾワする。え、なんか怖いわ。


その気配を察したのかお祖母様は自分の部屋の中に案内してくれた。部屋の中は至って平凡、でなんかない。まず1番に目に入るのは上にある木でできた明かり。明るい球体を木の枝が軽く覆っているものがいくつもぶらさがっている。癒されるような気がするわ素敵...と上を眺めながらぼけっとしているといつの間にやらお祖母様が私の腕を引っ張って最も明るいテーブルの所まで連れていったみたいだ。幻想的なこの部屋にはなんだか妖精さんが住んでいそうだなと考えていると顔が近い。



「それにしても本当にノア様...じゃないの~!目の色とか髪までそのまま...キャー♡福眼♡♡」


「は、はぁ。ありがとうございます...?でも少し離れて貰えませんか?」


「いいじゃない...♡もう少しだけ...ね?」


何人もの男を泣かせてきたこの人の技が出る。上目遣いも様になってますね。それにさり気ないボディタッチ。これで落ちない男はいないですね、はい。って待ってください、お祖母様。中身は私ですよ?あれ、急にべたべた触ってくるようになってきた。服捲られた... ?え?は?あええ??





...私はお祖母様のこういうところが苦手で嫌いだ。







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やっと解放されボロボロになった精神を安定させるためソファに腰を掛け正面に座っているお祖母様の分と自分の分にお茶を準備し持参した菓子をだし奉仕活動が終わったあと自分のティーカップに1口つけて落ち着いたところで本題に入ることにした。


「お祖母様、そろそろこれから先について話し頂きたいのですがいかがですか?」


「あそうだった、フィーちゃんの姿がメリナの推し人(・・・)の姿をしてたから忘れてた~ てへっ☆」

いつもの調子でおどけて言ったあと置かれたお茶に目もくれず急に真剣な顔になって話しはじめた。



「...率直に言うとね、貴方が貴女として入学することは無理。理由は単純に元に戻す方法がわからないから。」


「それはお祖母様(・・・・)でもですか?」


ここへ向かう途中に話した称10(ツェン)の中の別称000(ゼン)の持ち主、それがお祖母様。パヴォーネの姫メリナ。



「あら、フィーちゃんたらそこまで過大評価してくれてたのね?ありがと~♡でも残念だけどメリナは解呪ならできるんだけどそれ呪いじゃないみたいだから解きようがないのよ。」


少しご機嫌になり硬かった表情も少し緩みにこにこしながら私がさっき出したお菓子に手をつけ淹れたお茶にミルクを入れてかき混ぜながら続けた。


「フィーちゃんはこの体って別のものみたいに言っているけどもうそれは正真正銘フィーちゃん自身なのよ。姿が変わってるっていうレベルじゃなくてもうひとつの姿と言った方が正しいかしらね。」


「じゃあもう戻れないのですか...?」


「うーん、こんなことはじめてだから分からないけれど少なからず入学式まではむりむり、諦めるしかないの。でも絶対にあなた(・・・)は入学しないとならないの!だから逃げないでね?目的探しの旅とかダメよ?」


諦める...?昔からの憧れでたった一つの夢へ向かうための門をくぐることすらできないと?上の兄弟達のように可愛がられずずっと1人で別邸に暮らし将来は知らない誰かと政略結婚しかない私の唯一の自由への抜け道。閉ざされてしまうの...?それにこの姿で行ったとして何になるというの?全て無駄ではありません...?

後の怖い2言より先の一言が重くのしかかる。なんだかまた泣きたくなる。いつもそうだ、大切なものは少しずつ指の間から零れ落ちてゆく砂のようにさらさらと流れ流れて手のひらには何も残らない。




私の落ち込みようが目に見えてわかったらしい祖母は同情するかのように言葉を繕いはじめた。


「だからって悪いことばかりじゃなくていいこともあるわ、フィーちゃん魔法は好きでしょ?その姿なら元の人物の魔法特性まで引き継いでいるから何ら影響なく更に上乗せで魔法使い放題よ!」


「...お祖母様、私をなにか魔法好きの魔法馬鹿だと勘違いしておりませんか?」


「.....そう聞こえた?」


「はい」


なんて失礼な人だ。確かに?三度の飯より魔法が好きなほどのめり込んではいたのだけれど流石に"自身"を失っているのに それは横に置いといて魔法に打ち込みましょー! なんてことにはならないわよ!!

根本が変わったことによってどれだけ使える種類が増えたのかなとか思ってませんし、威力も変わったのかなとかこの姿のもしかしたらお家魔法が使えるのかなとか思ってませんし?ワクワクもしていません。



「フィーちゃんってちょ..なんでもないわ。貴方自身で適齢期に入学することは叶わないけれどちょっとお願いはしてみるしどっちみち魔法の世界に通ずる者の入学は必須だから行きたいのなら頼んでるメリナが責任をもってアシストもするし!」



「称は入るまで貰えないけれどフィーちゃんにとって1番に大切なことは魔法でしょ?もう嫌ってほど学べるし研究もできるわよ!それに今貴方たちは一心同体。つまりは2人分それぞれ魔法を操れるのよ!そしたら近い未来優れた会長さんに憧れた子が魔法愛好会の会員になってくれるかも...?ついでに憧れの恋もできるわよ!」



「それって凄くいいかも......っではなくて!少しだけでいいので受け入れる時間を下さい!それに恋は恋でも禁断の恋になってしまうではないではありませんか!!」



いけない!!流されるところだったわ!!

目の前に人参があったとしても走れなくなった馬は現実を受け入れるまで諦めないし飛びつきもしないわ!


スフィア的に魅力的な利点ばかりあげられすっかり自分の将来のビジョンが二の次になってすり替えられていることに気づかないのはきっとシュティがいないからだと思いたい。



「んんっ、とりあえず!とりあえずですけれど仕方がないので入学はすることにしますわ。」


本当はいじけて籠邸してやろうかと思ったけれどそんな時間ももったいないわね。あぁ、はやく分離してくれないかしら、ノアルカイト様とやら...?お祖母様がノアって呼んでらっしゃるから私はカイ君とでも呼んでやろうではないの!もー!

はぁ、でもでも魔法を使える数が増えたのだとしたら無くすのは惜しいわ...見た目が変わるだけでいいの、そう私の姿になるだけで全て解決なのに!って元の人が....


「はーい、そこまでね。もう考えすぎよ~!」


「治らないものは治らないのだから受け入れて、先に進むこと!だからフィーちゃんは魔法のことと学園のこととか未来についてずっと考えててちょうだい!ノア様の未来はメリナがちゃんと導いてあげるから♡」


「やっぱりお祖母様っておs...いえいえ、わかりましたわ。」


「じゃあ決定ね!入学するのね、今言質とったわよ!!二言はないわね!」


「そんな何回も言わなくても行きますって。憧れだったですし、元に戻った時にお祖母様が融通を利かせてくださるのでしょう?なら先に学んでもなんら問題ないですし!雨が降ったのなら地が固まるまで待つしかないのですよ。」

その代わりいっぱい強請ってもいいですわよね?




**


「それじゃあちゃんと入学できるようにとその後の生活のためにフィーちゃんにはこれからノア様のっていうか?男の人の歩き方から仕草、行動理念その他諸々を身につけてもらわないといけないわ。更に眠っていたぶんの勉強もしないといけないしあなた(・・・)にして貰わないことをきっちり頭に入れてもらわないと!魔法は基礎さえできていればいいから確認だけしましょうね?時間が余ったら勝手にしていいからそこは我慢よ!さあこれから忙しくなるわね!」


「え、うそぉ...。1季しかないのですよ!?それでは私の元に戻る為の研究時間が満足に取れないじゃないですか!!魔法で遊べもしない...。はっ、まさかだからあんなに確認を...?酷いですわ!鬼!」

捨てられた犬のようにきゃいんきゃいんと鳴き思い出したように怒り出すそんな私をみて堪えきれなくなったのか笑って鬼畜なことを言い出し始める。知ってますよ、お祖母様は人が苦しんでる姿を見るのがお好きなんですよね?わかってますよ。この家系はその血を継いでますから、もちろん私も...。


「だ、大丈夫よ...ふふっ...あははははっ!学園では魔法研究でもなんでもいっぱいできるからなんの問題もないわ。...先に予習して授業に出る時間を削ればね。」


「え」

「それよりもっと大変な所作とかについてはどうでもいいのね...はぁ、うふふっほんと面白い子ね。」


お祖母様お祖母様、かわいそうな子を見るような目で私を見ないでください。これから可哀想な目に会うというのに今からそんな目を向けられたら耐えられません。私、どこか遠い場所へ行きたい...。









「なんですかそれ!うぅ、もう!よしっこうなったら死ぬほど頑張りますわ!!そして目指せ魔法愛好会会員10人!」


「あらあら意外と小さい夢ね」


「...ではとりあえずprimaの中に入るのを目標としますわ!私自身と此方の為に!!」


「そうね、それは絶対入ってもらわないといけないわ。」


「絶対...?」


「えぇ、だってノア様って稀代の天才ですもの。お話はその通りに流れてもらわないと!幸いあなた自身(アクヤクレイジョウ)の話は誤差はあったもののヒロインが出てないおかげで進まないからそこは大丈夫よ!頑張りましょうね♡」


「は、はぁ。」


「なに?その気の抜けた返事、これからちょー!スパルタレッスンになるんだから気合い入れていかないとすぐ朽ちるわよ♡」


「へぁ..誠心誠意努力します...」




お祖母様へ


この数ヶ月とても頑張りました。

お祖母様の元みっちりこってりでろでろのヘロリンになるまで頑張りました。

不本意ながら男としても生きられるようになりましたし、勉学もばっちし、その他イセカイ知識もつけたのでもう来るもの敵無し状態です。

やはり魔法愛好会会長の名は間違いなく、ふさわしい私は休憩時間の全てを研究に費やした結果お伝えし忘れた事なのですが髪色、目の色などを変えれるようになったのです。

そして本命の方も進みましたわ!...えぇ、そう思います。まさに日進月歩、塵も積もれば山となるですわね。

ですから、お祖母様例の件はしっかりと頼みますね。


スフィアより





スパルタレッスンは短くも物凄く厳しく辛く今も思い出すだけで顔が真っ赤になり目が潤んできそうになるほどだった。眠る前はまだ男の子と遊ぶのを止められたりされず自由気まますぎるほどに生きてきていた純粋純白ソフィアにまずそっち方面への知識がどれだけあるのか聞いたが真っ白も真っ白。なので雌しべ雄しべ話から始まり突っ込んだ話までと御手洗の使い方などと学園に行くための基礎知識をこの年頃の女の子には少し刺激的で一歩引きたくことをいっぱい詰め込まされたのであった。(この話を聞いたあとスフィアは1日寝込んだ。)深く愛し合い、見つめあってキスをするだけでは妊娠しないらしい。


でもそんな詰め込み作業の中実はここだけは否定されていない。「赤ちゃんは妖精さんが試練を乗り越えた夫婦に授ける」という親が子のためを思ってつく優しい嘘だけは祖母はそのまま信じ込ませたのだ。(だってベタで面白いんだもん☆)そこはまあどうでもいいだろう。


エスコートの仕方、ダンス、剣技、料理、お菓子作り、裁縫、魔法知識、歴史、薬草学、召喚術、魔法陣学、魅了学、生物、異世界...これだけじゃまだまだ足りないぐらい...って途中変なのも入ってるわね。いいわ、頑張ったの!休憩時間にはお菓子作ってお茶入れてお祖母様をもてなし後異世界話と乙ゲー?の話をみっちり聞かされそのノアとその娘とのモエ?とかときめきポイント?を散々聞いた...。割合は1:9勿論トウトイポイントが9である。極めつけには「フィーちゃん、ヒロインちゃん貴族の世界に入ったばかりだし困ってること多いと思うの、だから助けてあげてね?」と私に告げたあと小声で中身は違うけど見た目はノア様だしリアル ノア×ヒロがみれるなんて最高...!!あぁ、神様ありがとう...!!よぉっし、実現させるために頑張ってくっつかせなきゃと何やら気合が入っている様子_____


そんなお祖母様みて私は決意したのだ。ヒロインとやらには近づかないと。そうここは彼女が主人公などの言う世界ではない、そんな平民上がりでマナーもなってなく、婚約者が居る男にべたべたする娘を複数人の男が奪い合うなんてことないのだとお祖母様に証明してやるの!だからそのために他の攻略対象者とは良好な関係を築くことをごりごり頭に刻み込んだ。目指せ親友!心の友!名前も顔も知らない状態でやる気を出してもから回るだけだと打倒相手に思われていることなど本人は知る由もなかった。




さあ、そんな感じで行きましょう!いざ、入学式!!








青い青い空、清々しい風が吹き渡り草木がざわめく。春を少し過ぎたくらいの過ごしやすいこのごろ、今期入学する準備が整えられつつあった。

彼の姿は美麗男子の極みであったがさらに磨きがかかったようだ。目覚め当時、幼さが少し残っておりお人形さんと言っても過言ではあるがないような近寄りやすさがあったのだが今は少々畏怖を抱くほどの圧が出てきた。少々の少々だが。うん、成長したらどうなるのかわからない。きっと目が合っただけで倒れられるご婦人が出てきそうね…。



研究によって変えれるようになったら髪色と目の色、名前も弄ってやれることは全てやった。髪の色は黒にしたのだがなんと毛先の色は変わらなかったのでそのまま。ついでに長くなっていたので顔が隠れる程度前髪を残しさっぱり切った。(知ってる人がまじまじみるとやばい顔なのと言われたのだ)短くなっても毛先の色はまんま...。一体どんなもので染めたのかしらお祖母様ったら。

目の色はエメラルドグリーンぽい碧色にした。実は目の色が揺れ変わる特殊な眼球の持ち主のようでまた溜息をつきたくなるのですがバレる事は例によって良くないことへの始まりに繋がってしまうので忘れないようにそして証拠も残らないようカラーコンタクトではなく魔法でひとつの色に固定することに決まった。変化について研究したかいあるわね!本来自分の利便さのために軽々しく使っては行けない魔法を気にせず使えることと前節から練習するにも規約をいちいち守らないといけないのを省略できるのとで一石二鳥だわ!



そして名前はノアルカイトほちゃちゃ(長すぎるのよ)じゃダメ(お祖母様云々)だと言うので私の名前とも近いところを取りリューゼルダン・ツヴィングルになりました。


総取っ替えよ!




「お嬢様、支度は終わりましたか?」

おろしたての制服に袖を通しループタイをつけ鏡で確認しているところにシュティが来た。


「えぇ、バッチリよ!でもこれからというか今からもう気を抜けない状況になるのよね。私は男、私は男、俺..私...ブツブツ」

自己暗示のようにずっと言い続ける私にシュティは呆れたのか、ため息を吐きながら


「はぁ、大丈夫ですよ、あれだけ厳しいレッスンに耐えられたのですから少しぐらい気を抜いてもというか、リラックスしないと逆にやらかしますよ。」


「!そ、そうよね...でも緊張しちゃって.....学園じゃシュティいないでしょ?はぁ、フォローしてくれる人がいないのって案外心細いことなのね。」


「お嬢様...そんなことを仰られましたら何も言えなくなってしまうではありませんか。」

心配ですと顔に書いてある、それくらいわかりやすく眉を下げこちらを見上げてくるシュティ。行きたくなくなることはないけれど後ろ髪引かれるわね... でもこれくらい振り切れなきゃこの先のりこえられないわ!歩こう。門のところまで行こうではないか。シュティ、そんな顔しないで。私もできれば一緒に行きたかったわ。男でごめんね。くぅっ...

学園へは男子寮から通うため何か問題があったら困るため侍女は連れて行けないルールなのだ。



心を無にしたいところだがそんな芸当私にはできないのでアクヤクレイジョウ(私)の話でもしよう。


...そう、何を隠そう!私は結構やんちゃな暴れ子馬のあだ名を持ったわがまま放題の女王様状態で手のかかるのだが可愛いので許されちゃう1番良くないタイプの子だったのだ。そうなるのも仕方がないといえる理由もあるのだけれどそれを盾にするのは甘えね。


でも影で支えてちゃんと叱ってくれる人もいる、過ちに気づいたのはもう1人の幼なじみにおんぶにだっこ甘えたさんの手の施しようがない糞ガキって悪態つかれシュティ自身にも着いていけない宣告された時だった。2人に怒鳴られてやっと気づくほどあの頃の私は愚かだった。



でも人間そんなすぐ変われないじゃない?気づいたのはいいけれど変わるきっかけがなくてうじうじしてた時またシュティにフォローにフォローにフォローされて考えを改めた、このままじゃだめだって。



その後お祖母様に会いに行ったりして、アクヤクレイジョウの話を教えてくれたの、一歩間違ってたら私もああなってたって思うと鳥肌が立ちすぎて鳥になっちゃいそうだわ。



そのお話では、幼いときからわがまま放題の私は成長し魔法学園へ行ったあとも自己中心的に行動を起こしていた。なので当然勉学も魔法力も下の下。

なんでも1番じゃなきゃ気が済まない私はちょこっと頑張るが自分の才能の無さに打ちのめされ更にグレ始め悪という言葉が似合う女になってしまうのだ。

それからというものこの世にあるもの全てが憎く見え権力に溺れ選民意識も強くなりぽっとでてきたヒロインとやらの平民上がりの才能持ちに不快感を抱き罵倒し影から色々と手を加え虐め抜いていたという。

そこへ王子様(笑)とやらが来て私へ罰を与える。そして、そこからルートは別れる。処刑、魔法勝負でのぼろ負け死、没落飢え死などなどバリエーションは豊富だ。


ってこんな種類豊富じゃなくていいのではなくて?


...もう回避したも同然だからどうでもいいことだけれどね!!何故か黒歴史を話したみたいな恥ずかしさがあるわ...っとと、門が見えてきたからこの話はこのくらいにして私は振り返った。


やっぱりシュティは心配そうで嬉しそうだった。親が子を送り出す心境なのだろう。ちゃんと馴染めるか、ご飯は抜かないか、部屋はしっかり管理できるのか、など心配の種が多いのがこの私だ。大丈夫大丈夫、心配いらないわよ。




「じゃあシュティ。行ってくるわ!」


「いってらっしゃいませ、お嬢様。どうかお身体には気をつけて下さいませ。」



荷物片手に用意された馬車に乗り切り替える。一人称は私、俺。二人称は貴方、お前。本来の性格を忠実に再現せねば戻れた時に困ってしまうだろうからやり遂げよう。


未来に思いを馳せ私の半身、リューゼルダン・ツヴィリングとして生活するために。




さあ、ここからがはじまりだ。



幕は上がり開演のブザーが鳴り響く。この話の結末は果たしてハッピーエンドで終わるのか、はたまたバッドエンドになるのか。それは本人たちの行動しだいである。


駆け足すぎてますね。気が向いたら加筆します。

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