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1 訪ねるは

さらっと詰めるだけ詰めました。


屋敷の中には私たち以外居ないという情報をサラリと言い捨て、弾む心を抑えきれないシュティは軽く弾みながらキッチンへ向かった。ひとり侍女部屋からティールームへ向かいながら世話をする人がこんな様変わりしては秘密厳守としての長期休暇、も妥当ねと思い彼女が茶菓子とお茶を手に帰ってくるまでにできるだけ記憶を頭の中で探る。


(わたくしの、記憶力よ〜!今目覚めなさい〜!)

……うぅん、おやすみなさいと挨拶した後の記憶がないわ。うぅん、うぅぅん。


…………いくら深く考えようとも出ないものは出てこなかった。




顎に手を添え眉間に皺を寄せている間にテーブル上には丁寧に配膳し終えた場が整っていた。

いつものように私の隣に立ち、話を始めようとするのをとめ、なれない手つきで自分の正面に茶を注ぎ入れ向かいの椅子に手を差し出す。そう。いつもうるさい執事がいないので今日はお友達としてのシュティと話すのだ。


「では、お嬢様がまずどこまで記憶があるのか教えていただけますか?」


「そうね、確かこの最後の記憶の2晩前はあなたの誕生日だったわよね?」


「いいえ、そこからまず違いますね。…あれは_____」

シュティの話を聞き何とか記憶の断片を繋ぎ合わせられなかった私にわかったことといえば事件が起こる前一季の夜まででことがあったのはなんの特別でもないただの日だということ。その日の私は日課を済ませることが出来なかったという。しかしどうやら魔法の練習にだけは欠かさず熱心に取り組んでおりその日も全力で取り組み元気に暴れ回っていたとのこと、そこで魔力がつき果ててヘトヘトだった私を狙った犯行。護衛を一瞬で全員昏倒させてしまうほどの刺客が現れ攫っていったらしい。

しばらく経ちいつもの時間に帰ってこない私を心配し修練場に来たシュティがそこで倒れている護衛を発見後すぐに状況を理解しお父様に救援要請を出した。家門を上げ大々的に探しては外聞に傷がつくと判断が遅れたのが致命的だったのだろうか。それとも表沙汰にしなかったのが失策だったかその後1週間探し続けたが見つからない結果になってしまった。さすがにこれ以上の空席はと重い腰をあげ公表すべく時に私の祖母が動いたのだ。


そして祖母がしばらくどこかへ出かけ帰ってくると「ただいま戻りました!」と元気な女の子の声、そう1週間行方不明だった私が祖母と手を繋いで連れて帰ってきたのだ。と、こんな感じ。


「流石私のお祖母様ね!」

いつも苦労ばかり掛けられていたのだけれど全て許しましょう!この国じゃ陛下と同等ぐらいの知名度と力を持ってるだけあるわね。敵にはまわしちゃ行けない人No.1よ!





---


さて、ここで疑問に思うことがあるだろう、お祖母様の事だ。


お祖母様はイセカイテンセイシャ?イセカイショウカンシャ?という変わった産まれだと初めて会った時に周りから教えて貰った。


はじめて聞いた時は???しか浮かばなかったし何仰ってるのかしら?状態だったのだけれどこの国にはいや、どの国にもないどこか違うクニのお話をしてくださったり、

(マンガ?ゲーム?ケンダマ?ザゼン?ジュウ?などとにかく様々な事をお教えいただいたのです)


そのお国にあったシャンプー?リンス?とか匂いのついたオイルや化粧品などを発明して大成功したと他に厄災が訪れると予言しそれが見事的中しそのことを信じたこの国は救われただの正直出来すぎてはいるが周りがみんな信じてるので半信半疑だった気持ちを飲み込み受け止めることにしたのよね、あら懐かしい。



更にお祖母様は美の方にも手をかけており、自身考えた化粧品は肌に優しく保湿力も抜群、顔がとても映えるとかで他のものを使えなくなるくらい顔が映えるから大人気で新商品はすぐ売り切れになってしまうほどだとか。

ふふ、私も愛用しております。






-----



話を戻すとそのイセカイという生まれ故郷にあるオトメゲーム?とやらのお話の上を今私が歩んでいる(ここの部分は胡散臭いことこの上ないわ)らしく攫われるまでは想定内だったと、すぐそれこそ攫われ逃走中に取り返せる筋書きだったと。その後はアクヤクノ・テノホドコシヨウガナイ・レイジョウ人生が幕を開ける...と?!だが現実は違ったと...?




ってお祖母様知ってたのでしたら助けてくれもいいのではなくて??それに、はぁもういいです。私のお祖母様への親愛度は少し下が...すごい下がりがりましたわ.....





*-----


「ふむふむ、そのようなイレギュラーが発生したから記憶がなくて更にこんな姿になっているのね!」


「前者はそうかもしれませんが後者は多分違うと仰っておりました。」



え、違うの!?えぇ?私早く元に戻りたいのですが!?原因不明なのですか!?!


「申し訳ございません。祖母様はどうやって探し当てたのか、この1週間何をされていたなどは知らされなく、この事件自体口外御法度でしたので私は知りえなかったのです。」


私を連れ帰ってきた祖母はなにか悔しそうに、はたまた嬉しそうで恨み言を吐き私をみて慈しむなど行動が破茶滅茶だったのらしい。まぁ、私本人には何も変わった様子がなかったらしいが。いや今ならわかる大ありである。


「屋敷に帰ってこられたあと誘拐されたのだから当然ですがお疲れでしたのでしょうね。すぐにお嬢様はお休みになられました。」


そうだろう、いくら誘拐に縁のある貴族の子供だとしても想像でしかないが1週間も犯人とずっと行動していたのでしょう。肉体的疲労と精神的疲労が相当溜まっていたはずだ。


「私はお疲れのお嬢様に付き添いお部屋に向かいました。お休みになる前の支度を済ませ心配だったので傍で手を握って夢の世界へ入るまでお話をしていました。しばらくしてゆるりと眠りにつかれ深い眠りに変わるか変わらないか間の頃、お嬢様の体がほんのり光り輝き始め最後に一際眩しい光を放つと髪の色が今のお姿の色と同じ色に変わっていたのです。...そしてその時から今までお目覚めにはならなかった........」


これまで淡々と話していたシュティの顔が少し歪み声が震える。その時のことを思い出しているからなのか酷く苦しそうな表情に変わり確かめるかのように正面にいる私の手に触れる。


「シュティ...」


その手をとり安心させるように握る、握った手は少し湿っていてそれは当時の状況が安易に推測できるものだった。


「その後髪色変わるなんて聞いたことの無い出来事でしたのでそっち方面に詳しいお医者様にすぐに来てもらい診察してもらったのですお医者曰く「何も異常はない数日後には目覚めるだろう」とおっしゃったあとにすぐに帰られました。その方以上に詳しい方で信頼出来る医者はいなかったので安心してお目覚めのときを待ってたのですが次の日から顔立ちや骨格が少しずつ変わち段々男に近づいていくのではありませんかっ...!」


「もう一度看てもらおうとその医者をあたるももぬけの殻。他にはいない医者が失踪。裏切り...。色々な言葉が私の頭を占めました。その時に気づいたのです、自分がどれだけ無力なのだろうかと...。」


そこから何かの楔が取れたのか手を痛いくらい強く握り締め思いをぶちまける。


「.....いつも傍に居たのに!あの時だけは一緒じゃなかった!!嫌な雰囲気も感じてた、離れちゃいけなかったのに...絶対に!傍にいなきゃいけなかったのに!!」


「それに優秀な侍女なら主人の様子に1番に気づかないといけなかった、しかもこんなにも大事な幼なじみなら至極同然で気づくべきだった!そうしたら何か変わったかもしれない...スフィが3年も眠るなんてことなかったかもしれなかったじゃない!!あの医者にも付きっきりでいてもらえれば何か変わったかもしれないし全てが後手に回ってる.......。」


言葉が乱れるほど感情が昂って来ているのだろう、握ってる手も爪がくい込んできて痛い。でもこんなのきっとシュティが3年という長い時間感じた痛み苦しみを思うと全く離すという選択肢ははじめからない。これがわからないのなら逆の立場で考えるといい、彼女にとってスフィアは幼なじみであり主人であり更に恩人でもあるのだ。


堪えてた涙が零れる。歪んでいた顔をさらに悔しそうに歪ませ嗚咽が出ないよう口を固く結んでいた。

しかし突然に離された手、


「あぁ、ほんっとお嬢様に仕えるものとして不甲斐ないですね...。私なんて侍女にすらなりえない



...そっか倒れている護衛を1番に見つけたのはシュティだから変に責任感を感じてるんだ。


シュティは今魔法を使えないただの侍女だから魔法が飛んでくる危険な修練場へ無理して行く必要はないのだがいつもついて来てくれたのだがその日だけは外せない用事があったらしく初の不在時に起きたのだ。そう偶然、たった一時間の出来事、瞬く間。






「あら奇遇ね、その日私も置いてかれたのよ。もういつもなら1人はつまんないなんて言って来るまで待ってるのに一体どうしたのかしらね?その時の私はきっと私じゃなかったのよ。 ...シュティ、もう自分を卑下するのはやめてたられば話は叶わないことなんてわかりきってるでしょ?場で最善を尽くしできることをやったのだから胸を張っていいわ。探しに1番に来てくれなかったらそう、見つけてなければ私という存在はもうなかったかもしれない。それにお祖母様に手を借りたりできたのは貴方だからよ、わかるでしょ?」



「それにその逃げた医者が言ってたように何も無く目覚めれたし間違った診察はしてなかったじゃない?なら終わりよければすべてよしよ!褒美もあげなくて済むから恩を着せられることも無いことでしょう?....シュティ辞めるなんて言わないでね。私にはシュティが必要なの、だって私みたいな評判も良くない危ない令嬢誰も引き取り手はいないんだもの。」


重たい空気に耐えられないのかちょこちょこ茶々を入れてしまうがそれがスフィアなのだ。


「お嬢様、そんなことは...」


「シュティ、私から贈る言葉はただ1つ、感謝の言葉だけよ。」


「見つけてくれてありがとう、傍に居て色々と尽くしてくれてありがとう、そして信じて待っててくれてありがとう。」


そんなこと当たり前なのに... なんて顔で上げ目に光が戻る。よかった、言葉が届いて。



「実はね、普通に起きただけなのに色々と変化しすぎてて怖かったのよだから1番はじめにあなたと会えて安心したの変わりなくて...いや少し痩せたかな?でもよかったわ。」

今まで頑張ってくれたシュティを抱きしめ背中に手を回す、今は見た目なんて忘れよう。傍からみれば恋人たちの痴話喧嘩後仲直りに見えているのだろうか?それを思うとやはり辛い。忘れようと思ったのに。



「...っ」


ずっとずっと我慢していたのだろうか、シュティは張り詰めた糸が切れるよう、箍が外れたようにただひたすらに泣きはじめる。スフィアもそんなシュティをみて胸が締め付けられる感覚に陥った。そして改めて現実だと認識したのか腕に力がこもり周りの風景がぼやける。 ただ上を向き静かに涙を流した。









「お嬢様、小さな獣のような唸り声が聞こえましたが一体…」


「え?嫌ね、まだこの屋敷には野良犬が住んでいるというの…?前に山へ帰したはずなのに…。」


「そのようですね、一度矯正なさってからここ暫くは出ていなかったのに...」


「まあいいわ、」








「これからもよろしくねシュティ」


「はい、私はどこまでもお嬢様と共に。」


「ありがとうシュティ!でもどうすればいいのかしらこの姿じゃ目立つわよね特に髪色...」


「大丈夫です そこはちゃんと考えておりますので 」


「なら安心ね、じゃあ私にすることはあるかしら?」


「そのことで言付けを預かっております。」


「何かしら」


「魔法学園への入学についてとこれからについてお話がしたいとの事でお目覚め後すぐにお祖母様の元へ向かうようとの事です。」








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