10
「うおわ...巨大苔玉.....」
「看板がなきゃ一見何の店だか分からないな...」
少し歩いて街はずれにあるぽつんと外装はジメジメキノコが生えてそうな苔の生えた緑の丸い塊...にしか見えない錬金術店に着いた。なんだか心做しか空気もしっとりしているような?ぺたぺたする。周りには畑や花壇、温室に何やら怪しい扉。どこかで見たことがあるような...?ここから材料を採取するのかしら。
...あら!これは恋呪いの妙薬の材料になるピテアゴにこっちは忘却の導に必須なファゲッスでこれは蜂の怒り粉が作れるタルブェ茸!これだけたくさんの種類があったなら調合し放題で...危ない人になるのかしら、.....いやぁね自家栽培って便利だこと。あ、このお花魔法道具屋にあったのと同じだわ。仲がいいのかしら?素敵ね。
あらあら、近づいてみると花壇にうにょうにょミミズがいっぱいいるのね、これを乾燥させて炒め粉にするとてくてく蟻も列を為しているわ、これもミミズ同じで...隣の指で小突き催促するのを知らぬ振りし、花壇の前でしゃがみ観察していると、緑の物体から軋む音と低めのドアベルの音
「坊ちゃん方そんなところに長居しないでささお入りなさいな。」
「はーい、ほらリュゼ行くぞ。」
おばあさんの言葉を聞きレオはリュゼに手を差し伸べる。その手を掴み立ち上がり礼を言ってから苔玉ハウスに足を踏み入れた。
コロンコロン...
「いらっしゃい...」
店内は暗くじめぇっとしているが清掃はちゃんとしてあるのか埃っぽい印象はない。そこら中にトカゲの干物や蝙蝠の羽、なんかの海藻に普通の洗濯物...?がぶら下がっておりお店というにはお粗末な感じである。端の方では魔物を飼っているらしく匂いは、お察しの通り。糞も材料になるので...まぁ、まぁ。間接照明の代わりに光るキノコが生えておりおばあさんの後ろを着いて歩く今、踏まないようにするのでいっぱいだ。この店不備が多すぎるとぼやこうと奥に足を踏み入れ正面に向き直す。私の目は輝く、こんなにも揃えられているのははじめてだった。素晴らしいわ!
「初版のコレに絶版となったアレに新作のソレまで...!?おばあさん凄い錬金術オタクなんですね...!」
「オタクってなんだよ?」
「錬金術愛好収集家」
「へー」
「ほらあ!これとかつまらなすぎて睡眠効果のある魔術が掛かってるなんて1回問題になった本とか、難しすぎて気が狂い、"混乱の香水が振りかけられた危ない代物なのではないか!?"って一時期魔女狩りされた本とか!_____」
「はー」
「目に見えるものが見えなくなり、目に見えないものが目に見えてくる。僕は一線を超えた。この右手に暖かいものがある。____ぇあ、気狂いの錬金術師の研究日記まで...」
「ほー」
「ふふふ、さあ今日は何を買いに来なさったのかな?」
魔術具と錬金術で作る道具の違いは核から作るか0から作るかとその作る際の危険度、そして使える人の限定性だ。魔術具はラナを流せば使える簡単便利な道具である。それで略させてもらうが錬術具は使う道具の効果の属性を持っていないと使えないというちょっと厄介な道具だ。しかし3を使うと10効果がでる高い性能を持っている。だからこれから偉大な魔法師を目指す者には結構重要な技術なのだ。その分作る時の難易度は高い。練習あるのみですわ。
「俺は一通り揃えてあるから素材だけ買えばいいな、...っとじゃあおばちゃんこれとこれ。うお、こんなんもあんのか.....リュゼじゃねぇけどこれはテンション上がるな...。」
「そう言って貰えると商売をやってて良かったと思えるよ、ほれこれはおまけじゃ。あぁ、もう1人の坊ちゃんは時間がかかりそうだねぇ、いまお茶を入れるからそこで休んでなさいな。」
「いや、そこまでしてもらうのは...と思ったけどほんとに長丁場になりそうだな。...おばちゃん、ありがたく休ませてもらうな。」
「こっちは錬金博士の記述録、あっちは術師の保持力差分、」
レオが首を動かしリュゼの方に視線を向けると初めてなものを目に入れた幼児のようなキラキラ輝く瞳であっちこっちに目を向けては手に取り1人で呟いている。その姿を見て長くなるだろうと思ったのだが想像と違い案外すぐ決まり娘のドレスを買いに来た父親の気持ちを知らずに済んだのであった。
「よしっ、硝子瓶とあとは黒い錬金釜と杓子と魔法陣入門書とここにある素材一通りと、ちょっと待てあれも欲しいな、おばあさんあとそれと.....」
「はいはい、ちょっと待ってなね。」
「...にしても買いすぎだな。」
釜は大きく重く掬う杓子は長く入れる瓶は多い。本は背丈の半分ほどの高さになり、素材は机いっぱい広がっている。中にある妙な液体がゆらゆら妖しい動き、薄ら寒い。なんだなんだ。...その他ごちゃごちゃと小物が勢揃い。
「あーあ、またこんなに買って...ほらまた開けよ、こんな持てねぇだろ?」
とっとと帰ろう。そんな軽い気持ちでリュゼに言ったのが間違いだった。昨日と今日の違いそれは新しいそれを買ったこと。アイツが魔法を使う時には大体楽しそうな顔をするのになんだか浮かない顔をした後に怪しい笑み。違和感を感じる。
「...ん"ん"....んー.......そうだ..........|HununIchFurarihi」
と思った時にはもう遅く、ギリギリ釜が入るサイズの穴が出来た。
「!」
「.....よし、|ShrezenIchFurarihi」
吸い込まれるかのように入っていった物品をみて穴が閉じた後満足気で悪いことをした時の子供の顔をしたリュゼが事を終えた。それをただ血の気が無い顔で見つめていたレオが正気を取り戻し血の気が戻るとリュゼの方に足を向け胸ぐらをつかみながらがなる。
「............
あ、危ねぇだろうが!!なんでだよ!杖出せよ!」
「...せっかく新しいの買ったからはじめて使うなら学園がいいと思って、」
「馬鹿かっ!このアホ、ばーかばーか!.....ああああ動揺しすぎて語彙が足りねぇ、新しいの使いたくねぇなら前の杖使えばいいんじゃねぇの?!「彼奴はしばらくお眠なんだ」は?...お前は本当に意味わかんねぇこと言うし突発的な行動ばかり..少しは考えろつったばかりだろ!もうわかった、言え!俺にこれからしようとしていることを全部言え!ったく学ばねぇ奴だな....」
「...! 少しは躊躇した、そこは成長したと言えるじゃないか?それにお祖母様の付き添いで何回も何回も何回も...杖無しで使わされたから、」
「ばぁっかっ!それはそれでも本当は許可もいるだろうが!それになんでメンドイのに杖なんてもんいちいち出して魔法使ってると思ってるんだよ?
いいか、魔法っつうのは交響楽団みたいなもんだ、ラナは演者、ラナヴィはホール..いや観客か?まあいい、それで杖は指揮者で、本人はまだまだ未熟なコンマス。その様子だと練習をしていない演者。そんなんで稚拙な楽団が指揮者なしで揃った演奏が出来ると思うか?」
つまりは杖がないとラナを熟練魔法師ではないと制御しきれず暴走して弾け飛ぶラナがラナヴィを傷つけ器が壊れると本人が爆発し爆散する。難しい魔法もしかり。貴族皆人間爆弾。
だから学園に通いラナと打ち解け練り上げラナヴィを広げ強固にしふたつと調和する事を学びに行かなければ大きな魔法は使えないし下手すれば死に至る周りを巻き込みながら。それか魔法が暴走してフェイルなら自分を中心に燃やし尽くしヴィフルなら切り刻み今回の空間魔法なら異空間に飛ばされることになるだろう。でも
「...爆裂しなかったから良いだろ」
「したら死んでんだよっ!おばちゃん見てみろよ!驚きで倒れてるだ...ろ.............おい、大丈夫かよ!ばあちゃん!」
「!うわあああ!!おばあさん!!ごめんなさい!」
「.....謝れるなら最初から謝れよ。」
__________
「いやぁ、心臓に悪いことしたねぇ。まさかまだカラがついてるひよこちゃんがいきなり卵を産もうとするなんて、びっくりしてしまってねぇ...」
「そうだろうな、わかるぜ、ばあちゃん。」
「それは、俺も驚きますよ。」
倒れたおばあさんをそのままにしておくのは紳士の風上にも置けないので少し礼儀のなっていない行為になってしまうがお店の奥の居住スペースに入らせてもらい寝室を探し出しそこに横たえた。待っている間勝手にキッチンを借りて茶?を入れさせていただいた。起きた時にも必要でしょう?...ちょうど入れ終わった位におばあさんの目が覚めたので謝罪とお詫びの勝手に入れたお茶を手渡す。ありがとうと弱々しい笑みで受け取り一息ついた時発されたおばあさんの一言に少しムッとする。いきなりフック、無防備ですからガッツリ食らってしまったわ。ぐぬぬ、
...なんでそんな目で見るのかしら、比喩だってわかっていますとも。なんたってエンノシタですから、勉強は小さな頃からバッチリですわ。ええと翻訳すると、【学園にまだ籍を置いていない乳臭い餓鬼が、私たちを巻き込んで自殺かまそうとするなんて心臓に悪ぅことしちまったな?いてこますぞ。】てなるのよね。
でも私魔法は誇れるほど大得意ですのよ、忘れないでくださる?ふふんっ。
「大丈夫、魔法だけは特別大得意だから。」グッ
.....いったああ、...いぃ、..頭割れてない?割れてない?!..なら砕けているのかしらぁ?!..うぐごごご、こ..この国は安泰だ.....。
「誇らしげにするな馬鹿っ」
「暴力を..超えた...暴力に..訴えるのは.....どうかと、「お前話聞かねぇもん」
「聞いてるもん。でもお前と基本が違うんだよ、しょうがないだろ?お「じゃあ一緒に勉強しようか、まず前の復習から、平民に必要以上の施しはしないこと。お抱えじゃねぇ平民の御者が貴族と懇意にしてるといい気がしねぇって奴らがくだらねぇ嫌がらせをしてきたり、そこが弱点になるだろう。どっちにもいい事ナシだ。わかるだろ?
次、突拍子な行動を控えること。確かに何かあった時の瞬発力は大事だと思う、だがお前のは何もしてねぇのに騒いで走り回ったり、子供じみた理由で杖無しで魔法使いやがるし、あの女にやられている生徒なんか見つけてもすぐ庇うだろ?そこだ。貴族あるまじき行為だぞ、お前の領でどれだけ好き勝手してたか知らないがとどまれ、じゃないと俺が止められねぇ。1秒でいいから止まって考えてくれ。」...しようと思った時に即行動が私の「わかったな?」
むっ、あのおじ様は特別ですし、いざとなれば後ろ盾となり囲うことで事なきことにできるのですわ。それに突拍子と言っても喧嘩を売ったのと叫び走り出したのと魔法の行使ぐらいしかやっておりませんのに。結果悪い子を墜としたのですし、誤解は受けたものの直接的被害はないですし、(これはこれから被害を受けるのかしら)...それに結論からして心中しなかったですし!人を吸い込むこともなかったですし、何も問題はないはずよ!...本当に何も心配はいらない。
レオったら、こういう細々と口を出す事をヨメシュウトメ問題というらしいわ!気をつけなさい!
"_____(契約した魔物が弱く暴力を振る名の無い生徒)「くそっ!この役たたず!契約解除して棄ててやりたい所だが父上と母上からの贈り物だからな。これだけで済んで良かったと思え、まあ今はもう言葉も分からないがな!」
げしげしとなおも蹴り続ける名無し生徒を見つけるリュゼ、
「何をしている」
「お前は...ツヴィリング、見ればわかるだろう?躾さ」
「随分と品のない躾だな」
「ああ、こいつがあまりにも使えないからな、」
「ふざけている、ならそいつ俺にくれないか?お前のお荷物なんだろう?」
「っち、俺だってそうしたいが生憎贈り物なんだ。悪いな」
「.....でもじゃまなんだろう?なら無理やり決闘を挑まれたということにしよう、断れないいい条件の」
「...頭いかれてんのか?無理だっつってんだろ?.....まあ聞くだけ聞いてやる。」
「たしかお前ん家金銭難に陥ってるんだろう?ふっ、見ればわかる、位に比べて身の丈に合わないものばかりだ。だからお前が勝ったら支援してやるし他にお前の言うこと全部聞いてやる。」
「ここまでするなんて本当の目的はなんなんだ?」
「何も、ただその子が欲しいだけだ」
「...いいよ受けてやるよ。魔法剣術混合戦でいいんだな」
「ああ。」
その後リュゼには契約者狩りという渾名が付けられ奪われることへの警戒と誰も打ち勝てない恐怖から誰も寄らず孤立しその寂しげな後ろ姿に多種多様の魔物が並び立ったと言う_____"
...という風にならないようにと教育に燃えるトメレオママ。
止めるものはシュティしかおらずずっと悪の令嬢らしく暴れていたヤンリュゼ。
"シュティこのドレスはもう古いから要らないわ、捨てておいてちょうだい。
そして新しくあのお店のを買い占めなさい。(道端を歩いている人を指さし)ねぇ、私あの子が着けている魔法陣が刻まれたブローチが欲しいですわ。いいえ、今あの子が着けているのが欲しいですの。
むぐむぐ、...なんなんですの?この味は、下が腐るわ。料理人を解雇なさい。こんなのを私に食べさせるなんて打首でもいいくらいだわ。
(スフィアが背を泥沼へ押す)あら、臭い...貴方泥遊びが好きなのね?良かったわね、そこで豚みたいにゴロゴロ転がるのがご趣味でありましたわよね?まあお似合いですこと。
(新しいものを買ってもらい喜ぶ幼児)そこのあなた、それを私に譲りなさい。あなたにはもったいないわ。
(スフィアが見てみたいと唐突に言い出し呼び出す)これが奴隷ですって?汚らしい、(ばしっ!)うっ、私の手を汚すなんていい度胸してるわねぇ。どれいしょうさん?いい?私に逆らうのならそれ相応の覚悟をしておく事よ。"
突如想像と思い出しで両者頭を抱え苦しんだ。どちらも現実になりそうなのと現実だったという真実に打ちのめされたのだ。頭痛が痛い、頭痛が痛い。
「...」
説教の時に凄く饒舌になるレオ。旅芸人の他お母さんに王宮騎士にもひとつ教師にも向いていそうで個人の将来も明るいのだろうとふと思った。個人的には騎士だと未来で会える機会ができるだろうからその道を選んで欲しいと勝手に考える。
...近くで怒ってくれる人なんてシュティ以外に居なかったから新鮮だ。嬉しいとか楽しいもんじゃないけれど。...何も言葉が出ず佇む私に微笑ましそうな声がそっと包んだのだった。
「ふふふ、仲がいいのね。あ、そうだわ。せっかくだからこれも持っていきなさいな。」
_______
コロンコロン
あの後すぐ帰るのも倒れさせてしまったこともあり心配だったのでしばらくおばあさんのそばで昨日買ったみたらし団子を食べつつ世間話を展開しつらつら話もひと段落ついた頃には日も暮れつつあった。
「とりあえずはこれで買い物は終わりだな。うぅーっ、つっれたー。どっかの暴れ子馬のせいでな。」
「わかったから、そう呼ぶのはやめてくれ。」
昔の頭痛が痛い問題が蘇るから。
「へいへい.....まあ、あれだけ言ってなんだがそんな怒ることじゃねぇよな。...なんだか急に感情の起伏を抑えられなくなって、手も出しちまって悪ぃな。もう痛くないか?」
「大丈夫だと言いたいがまだ頭痛がする。...あれは小さい頃モスクに頭突き突進された時並に痛かった。未だに夢に出てくるほどのトラウマなのにあれと並ぶなんて、デコピンで出せる威力超えすぎている...普通の人間では出せない力.....多分ヒビが入っているおでこ...。」
やりすぎよ!今度1発食らってもらうのは確定したわ!!びーびー!わーわー!
モスクとは牛のような姿をしており、サイのように太い角を頭にもつ魔物である。幸い先は潰れており刺されることは無い。普段は大人しいが縄張りを荒らされるとその太い角で突攻撃してくる突かれて骨折で済めばいいなぁと思える重さ。回復薬を使ったにもかかわらず1週間寝込んだ。
「ふははっ!よせよ、それは褒めすぎだっての!照れるだろ!」
「.....人に撃つのはこれで最後にしろよ...死人が出るぞ」
「そこまで過大評価してくれんのかよ!嬉しいぜ!あんがとな!」
まだ見ぬ未来、私がデュラハンにならないことをただ願うばかりだ。




