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詰め込み足りない..タリナイ...タリナイ!!

時はまだ日が落ち月が上り下る間、吟遊詩人の奏が夜の風に吹かれ綿毛のように落ちてゆく。あるものには子守唄に。あるものには感傷に浸る故郷の詩に。そして心地よい音楽はただの綿毛を地につかせやがての花を芽吹かせる後押しもする。人によって効力を変える奏はこの場でお寝坊さんの目覚めの唄に。



「.....んんっ、..........あれ、いつの間に部屋に帰ってきたんだ..............ん?...ぉ、おぉお?!.....ってなんだリュゼか、...あ?リュゼ!?なんで一緒に寝てるんだ?!」


「...うりゅさいわね.....耳障りよぉ、お黙ぁりなさぁい.....すやぁ.....」


「.....なんで女口調?どんな夢見てんだこいつは。」

呆れたように呟くがすぐ起こさないところを見るとやはり彼は優しい。顔に掛かり食べてしまっている髪を起こさぬよう注意し払い退ける当たりを見てしまうと破落戸ママと言ったところかしら。


「...ぁお、よく見りゃ飛び抜けて綺麗な顔してんな、男の俺でも見惚れるぐらい.....ははっ、そりゃ女どもが察知して寄ってくるはずだな。」


剣もろくに振るっていないのかと思うほどの白魚のような手に日に焼けていない肌。適度に筋肉があり肉体美と言える身体に失礼、立派なもの。を見たあと思い出す背中の温かみ。乗せて帰路につきしばらくした後に感じた違和感、ほんとに男かってくらい軽かった。

というか全く重さを感じなかった。いや乗っける時はあったぜ?もちろん。でも段々あ、ニホンっつー異国のヨウカイのコナキジジイとやらの反対みたいな感じでよ段々と軽くなるなんてそんなことあるのか?ちっ、他をおぶったことがねぇのが仇となるなんて。...いや、普通ねぇよな。



「あー、目が覚めちまったしちょっくら走りにでも行くか...やべっ、制服のまま寝ちまった。」





_______

...夜は明け新しい朝になった!わぁ、朝日が綺麗ね。隣をみればまだレオが寝ている、ことはなく一体どこへ消えてしまったのかとソワソワしていると変な顔をしたレオが帰ってきた。何やら足元を気にしている様子で。あらあら、踏んでしまったのね...。


黙って差し出すタオルに首を傾げながら受け取るレオに水浴びを勧め自らは彼の着替えを用意する。いいのよいいの。ますます訳の分からない行動に困惑気味だがはじめから変わった奴だったことを思い出すとレオは礼を言い去っていった。

「落ち込むことは無い、むしろ運がついて良かったと思うぞ」


「は?」


燦々と光るだろうお日様にご挨拶してさあ今日はワクワク魔宝具の店と杖...というのかしらね?...正式名称はまだ決まっていないの。まだ必要なピースが揃ってなくて決められないのだとか、私がわかっているのはこれらの名は12神から名をとるのだそうだ。

とにかく魔法を扱うものならば通るべき棒具の店に3年生ながらも高い位をお持ちになっている私の憧れのラレンヴィッツ殿下に案内していただけるのですから!うーわー!!わー!わー!「準備は良い?!」「はあ?!」もう待ちきれないの!行きますわよ!


「おい、ちょっ!...俺まだ水濡れなんだけどなぁ.....」

あ、待って。もしもしヴィッツ殿下!支度はよろしいですよね?またまた〜そう仰って実はもうできていらっしゃるんでしょ?では失礼させていただいて...いでよ!殿下!\\パァァァ//


「え」





___カランカラン。

「リュゼくん、さすがにあれはひどいと思うな僕。」


「こればかりは同意見です。突発的に行動を取りすぎなんだよ!この馬鹿!」


「...すみませんでした」


「がははっ!!坊主怒られてやんの!こんな朝っぱらから一体何やらかしたんだ?お?おっちゃんに言ってみろ?お?お?」


「勘弁してください...」


髪が乾くどころか半裸のままの水も滴る自分よりお家の地位が高いいい男を掴み片手間に王族を呼び出す無礼極まりない行為。そして出てきた殿下がまた同じく半裸だったのに驚き掴んでいる男も同じ状況だったことに気が付き叫び駆け出すリュゼ。その声に駆けつけ何事かと慌てる下働きの若者。覗けば何やら半裸の男2人...に逃げ出したはだけている男1人。彼らは考えた。そして導き出した答えが怒られる原因となった出来事である。


「大変だったなぁ、誤解解くの。不本意で不名誉な二つ名がつくところだったし、...なぁーにが熟れた苺では物足りず青い檸檬にまで手を出されるとは...!だよ。僕がそんなだらしがない男に見えるというのか?!」


「もうあの宿屋は使えねぇ...」


「本当に申し訳ございませんでした」


「レオもレオだよ、なんで君も僕と同じ状態だったんだよ!おかげで両手に花ならぬ両手に若木とも言われたんだ、一方は上手にお育てになられたのに育ち切ってない実に手をつけるから苦い思いをするのですなんてこんな怒られ方はじめてだったよ...」


「よく覚えてますね、俺そのあとのリュゼの突撃の衝撃でそれどころじゃ...」


「...お前は本命って呼ばれてたよ、俺は間男..当て馬.....」


「おい、坊主等そんな寸劇するために来たのか?違うだろ?お?今日は何探しに来たんだ?」

腰を曲げ誠心誠意謝罪するリュゼに同情心が芽生えたのか仕事が滞るからなのか助け舟を出してくれる。


「そうだったね、この話はまた後で。僕は付き添いだから好きなだけ見てきなよ」


「リュゼ俺は心が広いから許してやるよ!もう滅多なことがない限り叫ぶな、急に走り出すなよ!お前は見目が良いんだから勘違いされやすいんだ。どんな方面でもな。

おっちゃん俺に合う杖ってどっち?」


「...坊主、ほんとに貴族だよな?おっちゃん本気で心配になったぞ...。

赤髪の坊主!お前さんにゃーあっちの方にいいのがあるぞ!ゆっくり品定めしな!」


「どうも」


「.....店主さんこれと反発しないのってこのお店に置いていますか?」


「おう、お、腕白坊主!一丁前にいいの持ってんじゃねぇかよ!おいおいこれシュテシオンシリーズのカーウェトじゃねぇか!でも...1本だけか..お?高等魔術までかかってら、ん?.....こりゃぁ珍しいもんみたな、坊主名前は?」


「リューゼルダン・ツヴィリングです」


「ツヴィリング...?聞いた事ねぇ家名だな...」


「...分不相応と仰られますか?」


「いや、そうじゃねぇ。これと対となると同じシリーズのウェックスになるんだがそれを探しているわけじゃないんだろ?その調子じゃ。ただこいつと相性のいい"使い捨て"の杖が欲しいって話なのはわかってる。だがなそいつはお前さんにとって使い捨てなのかもしれんがそこらの貴族でも買えねぇくれぇ高ぇ一生物の杖に本来なるブツだ、今持ってるそいつが高ぇレアもんだからな。そんなのを有名じゃねぇ家紋のお前が払えんのか?」

出世払いなんていって身の丈に合わないものを買って潰れていく下っ端貴族なんざもう見たくねぇんだ...

思い出して顔を顰める杖屋のおじ様はきっと多額の借金を抱え没落していく人間を沢山見てきたのだろう。でもおじ様が罪悪感を感じることは無いのだ、ただそいつらに山っけがありすぎるだけなのだから。一攫千金なぞ夢に見て勝手に落ちていく可哀想な人間。魔法学園だってそう。お祖母様が転生してき猪一にこの国の底上げをしたのだがもう他国の方が余程進んでいる。

だから私は一縷の望みにかけた。


「はい、なんの問題もありません 」


お金の問題は全くない。お祖母様からお小遣いとお捻り、更にはお父様からのお小遣いと眠っていてもなお無くなり続けることは無い支援金。店主さんが言うお高い杖なぞ10本買ってもまだまだ余裕があるくらいだ。


魔法師は鍛錬を積むことで呪文を簡略化できるようになり最終的には無詠唱で杖を出したり攻撃を与えたりすることができるようになる。実は杖がないと魔法が使えないなんてことは無い。杖は魔法の精度をあげるものであり出力もあげられるが本来繊細な魔法に重宝されるものだ。だからか全体的に細かい装飾がされたものが多くただの木の棒なんてものはひとつもない。話は外れたが魔法を学ぶ上でまず自分に合った杖を探すのは必須であり運命の一振を選べなければ扉の前に立つことすらおこがましくありきっと魔法の女神様は振り向きもしないのだ。




「ならいいが借金だけはしないでおくれよ、よいっと。たしかこっちの方にじゃなかったな。倉庫の方か、今奥から持ってくっから待ってな」


私の運命はお預け。次の機会まで眠っててもらうの、これから出会うよく出かけるお友達の隣で。






「どうだ?多分そいつと仲良くなれるのはこの人魚の鱗か、ドラゴンの鱗、まあ鱗なんて言っても下級の生え変わった後のだからサイズは小さいし珍しいくもなんともないけどな。あとはユニコーンの尻尾の毛にグリフォンの羽くらいだろうな。」


...わかってない、

「.....店主、心配しないでくれ。俺にはちゃんと後見人がいる、こいつに魔術をかけてくれた人が。」

さっと杖に手を翳すと浮かび上がる孔雀の紋。


「...なるほどなぁ、こりゃ余計なことしたな。詫びと言っちゃなんだがお前さんも運がいぃ..今朝来たばかりのあいつがもう行っちまうなんてなぁ.....くぅ、辛れぇ....。が俺も商売人、気持ちを決めるぞ!

本物の対には劣るがそこらのとは格が違うこいつを持ってきな!」


「これは....!」


この国3つしかないお店だとはいえここはいわば初心者向けの杖を売る店、失敬ではあるがこんな店にこれほどの業物があるとは驚きだ。

「おっちゃーん!俺、とりあえずコレにするぜ!」


「赤髪の坊主...俺は今機嫌がいい、こいつはおまけだっ!まいどぉっ!!」


...こんなんだから尚更に。




_____カランコロン 「ありあとやしたー!またいつでも来いよ!」



「思ったより、時間がかかったな。」


「そうか?」


「ああ、現に殿下が先に帰っただろ。」


「本当だ..いつの間に... 「お前にもちゃんと声掛けてたぞ。...ガン無視してたけどな」

...俺、いつか不敬罪で処されるんだろうな.....」


「おぉぉ...なんとも言えねぇのがあれだな、まっ気にすんなって次は魔法道具店行くんだろ」


「...うん」



さて、またちょこっと追われてしまったのは割愛して路地を抜けた先に見えたルビー色の屋根に煉瓦でできた外壁には小さな丸い窓。様々な色が混じり合う花壇が、白く丸いポストが、扉の前にいるイグハーゼの置物が可愛いを演出。先程の店とは大違いの外装と中に入ればわかる心惹かれる魔法道具がズラリ。お値段も杖と比べお手頃で平民でも大きく無理をすれば買える額となっている。随分良心的な創造者がいたものね...。これじゃあ見境なくなんでも買えちゃうから困っちゃうじゃないの!!


「リュゼ!リュゼ!これ良くねっ?魔獣の卵!」


「買った!」


「なあなあ!このイワク人形もよくねっ?!」


「このドゥファの種も!」


「一体誰に使うんだよ...お、マンゴドラの叫び声...「コンフルツのカップケーキ.....」



「...坊ちゃんがたや、それもいいが君らが買いに来たのって魔法具じゃないんかね...?」

お花を見に来たのにお花そっちのけで食事をとる典型的なハナヨリダンゴ状態になる精神年齢はまだ入学可能年齢に届かない2人だった。

本命の前にこんなにも心躍るものがあるなんて!



魔法具とは少しの魔力で使える便利な道具という認識であり、始祖創造師 が1番はじめに魔物を斃すとでる謎の8角の核がある石を活用しようと試行錯誤しようやっとできたものだ。


そこから更に発展し今や平民でも買えるようになりつつあるのだ。

...疑問に思ったことがあるだろう、どうして使えないのに買うのかと。そうだな、魔法や魔術具を使うために必要な器、ラナヴィという器官があるというまでは前に話しただろう。

そのラナヴィが無くとも身体にラナという魔法を使うための燃料を染み込ませることが出来たのなら魔法といった大掛かりなラナ使いは出来ないが大幅に消費量の少ない魔法具は使用することができるのだ。

染み込ませるといったがその染みは賞味期限1年と言ったところで貯めることはできない、ので年に1回教会である程度のお布施をしたものだけに神官が集め与える行事を行う。

...結局生活を便利にさせようとすると当たり前だがお金は結構使うのである。...で



「うーん、魔法具と言っても姿を変えるのは要らないし(ラガシュ)も要らないしな、このラナの小瓶だけ買っておこうかな...調合できるけど。」

イタズラグッツはこんなにもいっぱいあるのに魔法具は初級の初、奥様方に売るもの中心で言ってしまえばガラクタばかり。私のワクワクを返してくださいまし!これだったらさっきのお店に入り浸っている方が良かったですわ、ああぁ....


「お前の場合そうだな。あー、普通に妖精の繕いシリーズ買っておけば問題ないんじゃね?

.....ここ下町向けの品揃えらしいし、そうガッカリするなよ。今度俺の領にある本格的なところに連れてってやるから?な?」


「うん、」


「じゃあおばちゃんこれとこれ___だけ買ってくわ!」


「俺もこれとこれ、あとこの認識阻害のシロメガネも!」


「はぁい、ありがとう。」



_____



「魔獣って何が生まれるんだろうな。ランダムと言ってもカエルは出ないだろ?」


「獣じゃねぇからな。まあ魔獣ってんだ強いといいよな!たしかラナを毎日注いで1ヶ月くらいを目処に孵るって言ってたっけか、楽しみだな!」


「おう!」


さっさとお店を出てきたのでまだまだ時間はたっぷりとある。さぁさぁどんどん行こう。シロメガネが反射して輝けてるうちに!もうピカピカ!こういう変身できるものって気分が上がるのよね!じゃあ次は錬金術ショップへ、あ。げっ、...知らない知らない。



「...で..から.......やっ...で.....知..な...んです........お願いします、家には帰れないんです...」

...私も知らない知らない。


「そういってもねぇ、入学前から乱闘騒ぎを起こす子を入れたい学校はないのではないかしら?」


「その件は深く反省しております、反省文も書いてきました。退学以外の罰則ならいくらでも受けます。ですからどうかお願いします、退学を取り消していただけませんか?」


「はぁ、私じゃなくて学園長に直談判なさい?私には覆す権限は持っていないもの。...もういいかしら?」


「そんなっ、待ってください!

.....学園長なんて忙しすぎて姿すら見えないと言うじゃないの!...そんなのをどうやって探せばいいって言うのよ!うぅ、せめて元凶を見つけて一緒にお願いしてもらえれば解決したもんなのに!そうこんな感じで...


(あれは私が無知だったんです...ぐすっ..私の家庭は少し複雑で、通告書も多分母に隠され..ぐすっ....でもようやく解放されると思った矢先...その母が足枷になるなんて...それで更に通告するとこの人たちに脅されて絶望し攻撃をしてしまったんです...とても反省しています、どうかどうかお慈悲を.....)

(彼女はこうして心を入れ替えました。確かに私達も売り言葉に買い言葉でしたかもしれませんこの子の心情を察するに退学まではどうか勘弁させてあげてください)

(...被害者の本人達がそう言うなら退学を取り消そう)


ってなるはずだったのに、きぃぃぃいっ!何処にいるのよ!!あの性悪ピエロはっ...!!」


やっぱり最初は可哀想に思えるが後半から図々しく思えてくるこの子は私より悪役令嬢にぴったりなのではないかと思えてしまう。どう考えても主人公格ではないのではと疑問に思っている、だってこんな大きな独り言言っていいのかしら?性格丸見え大公開じゃない。



「うわぁ、全部聞こえてしまった...レオ早く離れよう。」


「そうだな...うわぁ、女って怖ぇ....」


あれほどまでに輝いていたメガネは少しくすんだように見えた。

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