プロローグ
静寂な場に声が響き渡った。
「わたしは、こんな世界に来たくて来たわけじゃない!!」
癇癪を起こした子供のように喚きながら女は無作為に女にだけ与えられた魔法を放つ。真白に伸びる白い線。
「ぐわぁっ_____!!」
少女の手から放たれたものは狙いを定めてもいなかったにもかかわらずただ真っ直ぐ、一直線に嘗て愛した、今も尚愛しているのであろう男にぶつかり光の粒子がパァっと飛び散る。火花が飛び散るように散った粒子は彼を包み込み隠した。次いで何発か投げ捨てるように放ち切った後、膨れた光が萎む頃には絢爛だった空間は糜爛していた。
女は焦点が合わない目で睨みつけ飛びかかるような勢いで継ぐ。
「ねぇ、これで満足?...わたしをここまで落として満足かって聞いてんのよ!!答えなさいよ!!」
「...」
また1歩足を進め相手の胸ぐらに掴み掛かりながら怒号を響かせる。
「まだ喋らないつもり?あなたが言ったからシナリオをここまで壊してやったのよ!!いい加減わたしを元の世界に戻してよ!!ねえ!!!」
_____問は帰ってこない。
________________
窓から射す陽に部屋が照らされいる中彼女は目をゆっくりと開いた。
いつもと変わらない陽気に二度寝がしたくなるだろう。朝ではない空気を肌で感じつつも目は開きたくないと駄々をこねる。
...ちぃ、ちぃ。外で鳥がないているらしい…….くぁ..。
ふわぁ、と魔の誘惑を断ち切り大きな欠伸をしつつ伸びをし体を目覚めさせる。
開かない眼を寝かせて、_みぎ、ひだり、みぎ、ひだり。
いつものルーティンである軽いストレッチを行い、
何かが引っかかった。どこかが変わってしまったかのような違和感。
緩慢な動作でベッドの上に立ち上がりそっと自分の体を見下ろした。
そしてすぐその'違和感'に気づきぺたぺたと体を触ったあと、一息深呼吸を挟んだ後カッと目を見開き近所迷惑になるような大声で叫んだ。
「うっそー!!わたしの胸がなくなってるっー!!」
たわたわしててマシュマロみたいで周りの(下心のある)男の視線を釘付けにしてた周りの女達に羨まれる立派なブツがっっ!ああ“あ"あ"どうしてくれようかっっっ!!!!!胸だけと罵られても立派に張っていたあの胸がっ!!!
........すみません、勘違いでしたね…?これからに期待するような子です。わたしまだまだ成長期なのー!!
んー、でもでもこんな引き締まった筋肉どちら様のでしょうか?まあるい石鹸みたいにツルツルだったはずのお腹。わたしのじゃないの。あれれ?手にあった傷もなくなって.....?なんでだろー?
あ、ほら力こぶもできちゃう。わあ、腹筋も割れてる。…大人と比べると残念だけれどチョコレート板というのかしら?みたいにパッキリパキッとね。
「ふー、ん??え、!?!それに何かしら!?この声...」
さっきから響き渡るソプラノボイス。
えぇー わたしの声はこんなショタっ子ボイスとは程遠い声なのですのに...
そう将来耳元でお姉ちゃん大好き♡って囁かれた日にはもう一生離さないと涙ながらに誓う声などじゃない、これは勝手な予想に過ぎないが絶対ある一定の層にモテちゃう将来の女たらし...そうなるだろうと第六感が告げている。
そしてわたしはショタボではなく小鳥が囀っているような声だったはずだ!これぞ奥ゆかしい女性!って感じの...こんな.........
※読まなくていい
(...過保護な家族の元に生まれ蝶よ花よと大切に育てられたがある日騎士と恋に落ち結婚を目指すが、なかなかに認めて貰えなく仕方がないから駆け落ちして田舎暮らしを始めるも小さな頃から豪華絢爛な日々を歩んできたためになかなか慣れず苦労するも村の人たちに支えられその村のマドンナに_______苦労話を聞き付け迎えに来る家族、改めて愛を感じるもこれまでの恩やここでの生活を好きになった少女は家には帰れないけど里帰りするようになるそこで持病があったパパにの病状に急激な悪化が.....)
...ん"ん"っと 妄想の世界に浸ってしまうところでしたわ。危ない危ない、
ぶんぶんっぶんぶんと音がなりそうなほど首を振り、_視界がクラり。
ふわふわした気分が飛び正気に戻るとはたと気づきゆっくり見上げる。
「ふわぁああ、視界がたっかいっ!あらてんじょうもいつもより近くかんじるわ!」
.....身長がとても伸びてるって事ね。こんな一晩で伸びてよく成長痛に悩まされなかったわね... すごいわ!わたくしの体!こんだけ高いと背が小さいと影で馬鹿にしたあの令嬢たちを見下ろせるわね。今度は私が貴方たちを嘲笑う番よ!ふふふ!
(あ、でも私が伸びたからと言って相手が縮んでる訳じゃないから立場は変わらないわね、むしろ低い時には高くするのはできるけど高すぎるっていうはどうしようも出来ないから状況は悪化してるのではなくて?ヤハズ(世界最小の豆)令嬢の後はマリンド(世界最大の豆)令嬢なんって...困ったわ。)
はぁ、と頬に手を当て考える。身長が伸びたと言ってもまだ低い、このままもう少しだけ伸びてくれたらいいなと思うくらいなのだ。お母様のようなすらりと四肢が伸びでる童話のエルフみたいな体型。理想は高く持っていたいの。お母様の小さい頃は周りの人から抜きん出てた背だったのらしいけれど、っと
...うん、そろそろ惚けることをやめて現実と対面しようではないか。
ベッドの上からぴょいっと飛び降り んーとっ、伸びひとつ。長い髪が邪魔だこと…。
とはいえああのはしたない言葉を叫んだのに誰も来ないなんて不思議ね。何かあったのかしら?疑問は残るけれどとりあえず変わりに変わった自分の姿を確認したいところね。
もうひと伸びついでに軽く周りを見渡すとここはやっぱり私の見知った部屋だった。
部屋の中には姿見を置かない主義なのである場所へ向かおう。なぜ他に手鏡などもないかって?えぇ、
...決しておばけが怖いからなどの理由ではない。そう夜中に鏡に映った自分と目が合うと引きずり込まれるなんて迷信を信じてる訳でもないのよ。
ドアにかかった鍵を解き目的の部屋へ向いはじめた。
--------------------
すたすた、すたすた......
歩いてみてわかったわ。この体、歩幅も全く違う。
---------------------
「はぁ〜、や、やっと着いたわ。」
こ、こんなに廊下は長かったかしら…。息を軽く切らしながら宝石で飾られている訳でもないただの木の枠に嵌まる鏡の前に着いた。使用人が身だしなみを整えるための鏡なので手入れは定期的にされているため曇りひとつない。そんな鏡で見る自分自身はよく見るまでもなく別人。
そう、そこに映っていたのは誰もがすれ違えば誰もが振り向き目で追ってしまうような美貌の持ち主だった。
誤解がないように書き記すとどちらかと言うと恋を知らない私の容姿は美しいと形容するよりも可愛らしいとの方があっているのだ。よくお兄様には、いえ。
決して美人じゃないなんてことは無いということをここで宣言しておこう。恋をしたら美人になる、この世界の常識っ! なのだといいですわね…。
それは置いといて、じっと鏡に映った人物を見る。
ほぅ... つい感嘆の息を洩らしてまった。それほどまでに整った容姿なのだ。写っている人物いや、少し年上だろうの女の子のような少年は。
プラチナブロンドのようなプラチナシルバー色。ペガサスの鬣のようなサラサラと靡くこの国中にない、みたことのない髪。毛先まで整っているロングヘアーは染めていたのか腰から下の毛先の方が橙色に染まっている。軽く片手で髪を掬い上げ上方で括れるように掴む。きれい。
これだけのものなら粗末にしてはならないのに...。色はとても美しいのに下指一本分の髪質の悪さったらとんでもないですわ、いこれでも次期眉目秀麗の淑女のベンチに控えているものとして許せないですこと!真っ直ぐにスラリと伸び絡まりもしないこの髪質は貴重ですのに。一体昔は何をなさってたの…? 腹立たしいやるせない気持ちを後ろの本棚にぶつける、_。
「_、あ」
バサバサと降ってきた本にむかつきを覚えながら足蹴にしふんっ、と鼻を鳴らす。満足して周りを見渡した後鏡に向き直すと軽く乱れた服から覗くすらっとしながらもしっかりとついている筋肉。たるみのたの字も、贅肉のゼの字もないなんて羨ましいような憎らしいような。 うん今は、 わたしの体だしね。
これでいくら食べても太らないとか言うのならば少し痛い目を見てもしょうがない事ですね、今はわたしってことになってしまうけれど...?元の姿に戻ったら覚悟しておくことね!でも今はありがたく享受させていただきます。
あとは、気になってたことを済ませてしまいましょう。この鏡が確か...シュティより高くてお父様より低くて......
そしてナイフでつけた傷がわたしだったのだから____
頭に手を乗せ比べ測っていると遠くからたったっと駆けている足音が聞こえてきた。
もしかしてようやく気づいたのかしら?起きる前に朝食からモーニングティーまでわたしのために準備してくれるのに変だとおもったのよね。待ってたわ!この見目をどうにかしなくちゃ、
その音が近づいてきて扉の前でとまりしばらく経つ、
__変ね。
なかなか開かないドアに?を浮かべながら、相手が開けないのならと取手に手をかけたと同時に「失礼致します」との声と押し開けられたドアに額をぶつける。
「い“っ、」
ゴッ!_といい音が鳴った私は額を抑えしゃがみ込みながら見え上げる
痛みと共に現れたのは私のよく知る相手だった。
「っ... やっ...やっとお目覚めになられたのですね...!お嬢様、私のことはわかりますか?!お身体の具合はいかがですか?!どこか具合が優れないところは...」
「ちょ、ちょっとシュティ落ち着いて...」
「!はい!私がシュティです、そうですよ、、っっお嬢様〜!!!」
扉を開いた相手は目を見開き驚いた表情をしたあと頬と涙腺を緩め涙を浮かべるもすぐに拭いながら怒涛の勢いで声をかけてきた。
黒と白の職服が良く似合う茶髪の彼女は、私に付いてくれている侍女のシュティ。
私とシュティは歳が近いこともあって幼い頃から共に遊んだりどこかに行こうものなら必ずと言ってもいいほどついてつかれるほどずっと一緒だった。
四六時中ベッタリでも苦痛にならないほどの関係を築いている。私自身によく尽くしてくれるし、とってとてもとても大事な人。
「...んん、とても嬉しくてつい言葉遣いが乱れてしまいました。申し訳ありません。...改めまして体調の方は如何ですか?どこかいつもと違ったり不便なところは…?」
「えぇ、体調の方は全く問題ないわ!貴女と話してから頭もなんだかスッキリして...。好調ね。
変わりすぎてまだ考えがまとまらないのが難点ね。うーん。そうね、むしろ前より高いところに手が届きそうで便利だし、なんだか流れるラナも魔力の調子も良くって、万全そのものね。でもねぇ、そういいことばかりではなくてね、その、私の性別って実は男だったのかしら?!???!
両手を広げくるりとその場で回り見せる。
「...もしかしてお嬢様は暫くの眠りにつく前の出来事は覚えていらっしゃらないのですか?」
シュティは困惑した表情をして尋ねる。目が覚めたら体が変わっていたこと以外になにかあるのかしらと ?を浮かべながら聞き返す。
「眠りについた?それってどういう意味かしら?」
そうだ、私は普通にいつも通りに勉強の復習とこっそり魔法の勉強と練習をしたあと普段と変わらず寝たはずだ。暗い部屋では寝れないからしばらく灯り番をシュティにしてもらって、たしかいい夢は見たはずだけれど眠りについたなんて...まるで吸血鬼の睡眠期みたい。
「......そうでございますか、でしたら私が知る限りのことをお伝え致しましょう。」
複雑そうなでも少しほっとしたような顔をしてそういうとシュティはお茶の用意をしにいった。
はじめて小説というものを書くので変なところが多々あると思いますがよろしくお願いします。