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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第六章:学院引きこもりライフ
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オモシロ集団の向かう先


 ロウソクの明かりが薄ぼんやりと揺らめく中、妖しげな雰囲気を醸す室内で、俺は壁に背を預けて体育座りをする。

 本当は帰りたいのだが、そうは言っていられない事情があった。


 白い頭巾で顔を隠した面々が居並ぶ、その中の一人は我が妹シャルロッテである。与えられた番号は『7』。

 なぜ彼女が、現在進行形で黒歴史をこさえている連中の仲間になったのか。その真意を見極めねばならない。兄として。


「ようこそ、と言っておきましょうか。新たなるナンバー(セブン)


 額部分に『12』と書いてある女の人が言う。


「でも貴女、本当に理解しているの? この世界変革集団〝ナンバーズ〟の理念を」


 だ、ダメだ。まだ笑うな、こらえるんだ、しかし…………世界! 変革! ですって! ぷぎゃーっ!m9(^Д^) って指差して笑いたくなるな。大丈夫かこいつら?


「はい、なんとなく!」


 シャルちゃんの元気良いお返事に、なぜだか静まり返るオモシロ集団の皆さん。

 最初に我に返ったらしい『1』の人が告げる。


「ま、まあ、彼女にはおいおい理解してもらえばよいさ。我らの崇高な理念は、きっと彼女も共感してくれる」


「そんな甘い――」


「ナンバー12、彼女を迎え入れるにあたっては、前回の会合で承認されただろう? 君も賛同してくれたはずだが」


「……ええ、実力も家柄も申し分ないものね。ただ国王派の筆頭を父に持つ彼女に、覚悟を質したかったのよ」


 『12』の人は肩を竦めると、


「改めて、歓迎するわ、ナンバー7」


 彼女の言葉に合わせ、ぱらぱらと控えめな拍手の音。あんま歓迎してるとは思えんな。


 その後は、会合の理念やらの詳しい説明とか細かなルールとかいう、まったくもって退屈な話が延々と続く。

 さらに現王政の不満やら、貴族たるものうんたらかんたらとか説教じみた話まで。


 シャルちゃんはふむふむなるほどと相槌を打ちつつ聞き入っていた。


 うーん……これ、お子様に悪影響を及ぼしちゃわないかな?

 兄としては今すぐ連れて帰りたい。


 でもシャルはお子様だが聡い子だ。何か考えあって『1』の人の誘いに乗ったと思われる。

 もしかしたら、彼らを悪の道から救い出さんと自ら潜入したのかも。優しい子でもあるからな。うん、そうに違いない!


 だがシャルよ、悪者ってのは何をどうしても改心しない奴もいるのだよ。

 その事実を知ったとき、純真無垢なるシャルはどう感じるだろう?

 きっと、しょんぼりしちゃうよね。


 そんな悲しくも辛い現実を、シャルに見せてよいものだろうか? いやダメ、絶対。


 となれば俺のやることはひとつ。


 あらゆる手を尽くしても、このオモシロ集団をまっとうな道へと引き戻すのだ!

 あ、無理そうなら誠心誠意の話し合い(奇襲による拘束ののちに根負けするまで説得)で組織を解散してもらおう。


 という方針が定まったところで――。



「本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました」


 長く退屈な会合が終わり、シャルはぺこりとお辞儀して帰っていった。

 俺はその後を追わず、この場に留まり続ける。


 こいつらの真意を探りたいので。


 ぶっちゃけ、こいつらの正体は判明している。顔は結界で透過してバレバレだし、そもそも前にメンバー全員の素性は調査済みだった。

 ちなみに前の『7』の人がメンバーを外された理由は知らない。たしかシュナイダル先輩の取り巻きの一人だったか。まだ学校にいるのかな?


 と、シャルを見送ってしばらく沈黙していた彼らの一人、『9』の人が口を開いた。この人、前に観察したときの会合にはいなかったな。


「ふふふ、可愛らしい子じゃないの。アタシは好きよ、ああいう純真無垢な子って」


 艶めかしい女の声に応えたのは『4』の人。ガタイのいい兄ちゃんだ。こいつは前にもいた。偉そうな感じ。


「ナンバー9、彼女は貴様の玩具ではないからな。今回は自重しておけ」


「あら、心外ね。国王派筆頭のご息女を篭絡できれば、我らにとってこの上なく有用な駒となるわ。それに、白いキャンバスを好きに塗りつぶせるのはたまらないじゃない?」


「程度の問題だと言っている。以前、王妃派の令嬢の心を壊して使い物にならなくしたのを忘れたか」


「あの子はナンバーズに入る前だったじゃない。今回は慎重にするつもりよ?」


「ならばよいが……」


 さっそく妙な話になってまいりました。

 普段ならこの時点で俺の中の妙なスイッチが入って、全員謎時空送りなんだけど……なぜだか『ほっといてもべつに平気じゃね?』との不思議な安心感がある。


 ともあれ、と『1』の人が言う。


「ナンバー9が言うように、彼女が我らに共感してくれれば大きな戦力となるのは間違いない。ゼンフィス辺境伯を懐柔する上でもな。それに――」


 覆面の下で歪な笑みを浮かべて(透過して俺は見てる)、


「兄のハルトをも我らが傘下に加えられるかもしれない。彼の力はおそらく妹以上だ。そして父親同様、妹に甘い」


 最後はその通りなんだが、それ以前のお話は……まあいっか。誤解してくれてるならそれはそれで使えそうだし。


「でもさあ、そう簡単にナンバー7を引きこめるものなのかな?」


 『6』の人が割って入った。


「騙しやすそうではあるけど、それこそ兄の方に邪魔されたりしない?」


 こいつ、話し方は軽薄だが鋭いな。今まさに、俺は邪魔してやると決意したところだよ。


「なに、考えてはある。妹を上手く使えば、彼も容易に手出しはできないさ」


 目の付け所はいいんだけど、本人目の前に言っちゃったら元も子もないよなあ。

 と、今度は『2』の人が。


「その兄妹きょうだいに執着するのは構いませんが、もうひとつ、重要なことをお忘れではないですよね?」


 今度はなんのお話ですか?


「ああ、わかっている。近々面会する算段は付けてある」


 おおっ、とどよめきが起こる。


「さすがはナンバー1だ。まさか王妃との接触(・・・・・・)に成功するとは」


「気が早いぞ、ナンバー10。面会はこれからだ。閃光姫を引きこめると決まったわけではない。あの女は実力のみならず、小狡さでのし上がったのだからな。油断はできない」


 それでも、と『1』の人は自信たっぷりに言う。


「〝教団〟の支援もある。必ず口説き落として見せよう」


 わっと歓声が上がった。

 もう勝った気(何に?)でいるようだが、俺はぴこーんとひらめいた。


 よーわからんけど、あのおばちゃんと手を結ぶと嬉しいっぽいので、俺はひとっ飛びして――。




「ひぃっ!? な、なんでお前が!」


 離宮までやってきた。黒い戦士シヴァモードで。

 酒をちびちびしながらどんよりしていた王妃様はとてもびっくりしていらっしゃる。


 さて、こいつを使ってオモシロ集団を困らせてやろう。

 俺はウキウキしながら話を切り出した――。



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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

― 新着の感想 ―
[一言] 王妃…同情するZE… 日本産フッ化水素の不純物レベルだけど。
[一言] もうww王妃様がかわいそうwww
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