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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第六章:学院引きこもりライフ
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シャルちゃんの密会、お相手は?


 ひっきりなしにやってきていた相談者たちは、王女様と王子様を窓口にしたことでずいぶん数が減り、俺へ到達するのは皆無となった。

 ようやく存分に引きこもれるぞと、俺は辺境伯領にあるログハウスでアニメを楽しんでいた。そんな折だ。


「兄上さま、ただいま戻りました!」


 元気いっぱいでシャルロッテが帰ってきた。この子は学院に通うにあたり、(いちおう寮の部屋は確保しているが)このログハウスに住み着いている。


「おうシャル、お帰り………………って、どうした?」


 シャルはランドセルを置くやあっちこっちへパタパタ忙しなく移動する。制服はそのままに、髪を整えたり身だしなみをチェックしたり。


「今から人に会うのです。失礼のないように注意しませんと」


 ふむ、貴族の重要人物とかだろうか? 俺はまったく関与していないが、辺境伯という重要ポジションの息女であるシャルは、幼いながらも社交界とかそんな感じの場に顔を出すことも……あるのか?


「では兄上さま、行ってまいります!」


 やたら気合満々で出かけた妹に、不安が鎌首をもたげる。

 おめかし(というほどではないかもしれんが)して会う人物とは、果たしてどんな奴なのか?


「まさか男?」


 ははは、シャルに限ってまさか、ははは……。


「あり得なくなくなくない!?」


 思ったらものすごく不安になってきた。いや、しかし、うん、そうだな。

 ここは兄として、相手が誰だかを確認する義務がある。兄だから。兄なので。お兄ちゃんってそういうものよね? ね?


 監視用結界を飛ばせばここからでも確認できる。引きこもりLoveな俺はそうしたいところなのだが、妹のプライバシーを覗き見るような気がして躊躇われるのも事実。


 ので、光学迷彩結界で姿を消し、後を付けることにした。これなら覗き見じゃない。堂々と見てるわけだしね!(隠れていることは考えない)




 ――で。

 シャルは学内に戻ると、脇目も振らずに校門を出た。


 おいおい、学外で会うのかよ。学校関係者じゃない? てことはやっぱり相手は貴族様?


 ところがシャルは、乗合馬車も使わず人目を避けるように路地をあっちこっち移動して、やがて治安の悪そうな地域にやってきた。

 飲んだくれが道でへたりこんでそうな雰囲気だが、犬っころ一匹いやしない。


 なんだ? こんなところで誰と会うんだ? なんとなく既視感があるものの、これって『密会』なんじゃございませんこと? などと不安がマシマシになったそのときだ。


『ハルト様、お忙しいところ失礼いたします』


 耳朶を震わせる声が届いた。通信用結界だ。シャルに気づかれないよう、小声で応じる。


「フレイか、どうした?」


『今から寝室の掃除をしようと赴きましたが、部屋に何やら散乱しておりまして。重要なものとお見受けしますが、いかがいたしましょう?』


 あー、シャルに頼まれた便利道具をそこらに散らかしっぱなしだったか。


「適当に端っこに寄せててくれ」


『かしこまりました』


 と、話すうち。


「おまたせしました」


 シャルが路地の角を曲がった先に立っていたのは――。


「いや、迷わずこられたようでなによりだよ。呼び立ててすまなかったね」


 銀髪の、イケメン、だと……? まさか、まさか本当に若い男と会っていたなんて!?

 ていうかこいつ、見たことある。


 『1』の人だ!


 学生のみで構成された秘密組織『ナンバーズ』のリーダーさん。

 えっと、名前はなんだったかな? たしか四年生で、ア、ア……アレ?


「いいえ、お誘いいただいて嬉しいです。アレクセイ・グーベルクさん」


 そうそう、そんな名前の人だった。どうでもいいけど。

 そうだ。今はそんな残念グループ、どうでもいい。

 イケメンが我が妹をたぶらかしているという事実、一点をもって――。


「滅ぼさねばならない……」


『ッ!?』


「(シャルにまとわりつく)悪い虫は、俺が手ずから駆逐してくれる……」


『………………』


 おっと、変なスイッチが入るところだったぜ。

 まだ『1』の人がシャルをかどわかしていると決まったわけではなかったな。

 だが『1』の人よ、シャルに指一本でも触れてみやがれ。その瞬間に謎時空に引きずり落としてやる。


 果てのない暗闇の中、わずかな水と食料を与えて生き永らえさせるのだ。糞尿を垂れ流し、永遠の闇に精神こころを犯されてしまうがいい!


 俺は半眼で睨み据えながら二人の後をつける。

 まったく会話もなく、シャルはちょこちょこと『1』の人の後ろを歩いていたのだが。


「?」


 唐突に立ち止まって振り向いた。

 ぴたりと俺も止まる。足を踏み出した無理な体勢で固まって辛い。


「シャルロッテ君、どうかしたのかな?」


「……」


 シャルはじーっと俺を見ている。って、え? もしかして気づかれた? 光学迷彩結界は完璧なはずだけど……。


「いえ、なんでもありません」


 シャルは振り返ったままにっこりと微笑んで応じると、再び『1』の人について行く。

 気づかれてはない……よな? でもあいつ、ときどき超感覚で俺が面倒な事態に陥ってるのを察知するんだよな。なんで?


 ともあれ、尾行を再開したわけだが。


 二人は古い集合住宅に入った。見覚えがあるようなないような感じだが、これはいよいよ俺も腹をくくらねばならんだろう。


 幼い女の子を寂れた建物に連れこむだと?

 これってあれでしょ?

 中にはオラついた仲間がたむろしていて、下卑た笑いで迎えるんでしょ? 高画質カメラとか照明とかもあってさ。そしていたいけな女の子にあれやこれやいやーーっ!!


「では、こちらの部屋で着替えてくれたまえ。事前に話していた通りにね」


 『1』の人は歪な笑みを浮かべると廊下を進んでいく。シャルは指定された部屋の中へ。

 着替え、か。きっと露出の多い服でうんぬんかんぬん……ちょっと待って。

 ものすごく見たことある木箱が置いてあるね。


 数字の『7』が書かれたそれをシャルが明けると、空き瓶がいくつか入っていて……うん、二重底になってるんだよね。で、白い貫頭衣と顔を隠すとんがり頭巾があって――。



「ただいまご紹介にあずかりました! わたくし、新たな『ナンバー7』に選んでいただきました、シャルロッテ・ゼンフィスです!」


 一番奥の妖しげな部屋で、テーブルを囲む白頭巾の方々。

 重々しくも面白可笑しい雰囲気の中、額に『7』の字がある我が妹が元気いっぱいに挨拶した。


「……いや、ここでは名を告げなくてもよいと言ったよね?」


「はっ!? ごめんなさいです。つい、うっかり」


 きっと頭巾の中でてへぺろしているのだろう、シャルは頭をポリポリ。可愛い。


 てか待って。

 んん? これってどういう状況なの? なんでシャルがオモシロ集団のメンバーに?

 混乱しきりの俺は、その謎を解明すべく部屋の隅っこに居座ることにした――。


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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

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