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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第五章:学校パラダイス計画
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適材適所に業務委託

五章スタートです。


 王立グランフェルト特級魔法学院の敷地内にひっそり佇む古い屋敷。その一室でティアリエッタ・ルセイヤンネル教授がソファーに座り、虚空に浮かぶ板状結界を通して会話していた。

 相手は白い仮面をかぶった少女だ。

 

『――と、いう感じでして、残念ながら王都騒乱事件――『無血の第四曜日ブラッドレス・フィーア』の首謀者はいまだに判明していません』


「ブラッ――え? なに?」


『ただそちらはシヴァにお任せしてよいでしょう。というかすでに把握し、対処を進めているはずです』


「あー、うん……そうね」


 ティア教授はちらちらと横に視線を流す。こっち(・・・)見ないでよ。

 

『わたくしたちは今後、学内で暗躍する裏生徒会との対決に注力します。ティア教授にもご協力をお願いしたいのですけど、いいですか?』


「へ? あ、ああ、構わないよ。というかワタシはキミたちの……えーと、なんだっけ? ベオバハターだったかな。それに仮ではなく正式に加入したと考えてよいのかな?」


『呼称はキャメロットに定めました。ただ残念ながら、まだ内部で反対意見がありまして……。ごめんなさい、わたくしの力が及ばず……。なのでわたくしの正体も明かせません』


「いや、気長に待ちはするけど……」


 呆れたような苦笑いを浮かべるティア教授。

 その直後、

 

『シャルロッテ? お部屋にいるの?』


 通信用結界から別の声が聞こえてきた。


『はうわ!? は、母上さま、ちょ、待ってください!』


 白仮面がわたわたと慌てる。匿名ユーチューバーの身バレ配信事故みたいだ。

 

『き、聞こえましたか?』


「……何も」


『そうですか! あーよかった。とにかく続きはまたいずれ。では失礼します!』


 ぷつん、と通信が途絶えると、ティア教授は引きつった笑みで俺に(・・)顔を向けた。


「先に言っておくと、彼女の正体には察しがついていた。というか彼女はいろいろ微笑ましすぎるよね!? だからワタシを消さないで!」


 この人ってふだんは飄々としてるクセにテンパるとド直球投げてくるよな。

 ちなみに俺は黒い戦士シヴァモードだ。

 

「ついでに言っておくとキミの正体も一人に絞られている。といっても知っている中からではその人物以外に該当者がいないというね。それにどうしても解答が見いだせない難問があって、確度は一割未満というお粗末な推測だ」


 うむ。これもう完全にバレてるな。べつに困りはしないんだが。この人って口が固そうだし。

 

「ともあれシャルロ――じゃなかった白仮面のお仲間とは違い、キミはワタシを『使える』と判断してくれたようだね。突然の通信に割りこまれて話を中断されてしまったけど、ふむ……〝魔神〟に〝魔人〟か。ははは、いきなり壮大すぎやしないかい!?」


「貴女は知っているのか?」


「結論から言えば『知っている者が知っている程度のレベルでは知っている』。ワタシの解釈とは異なるけどね。何が正解かは『知る人ぞ知る』だろうさ」


「なるほど?」


「〝魔神〟とは古の神々のうち破壊と殺戮に心を支配され〝堕ちた〟神である、と神話研究者は口をそろえる。けれどワタシの解釈は違う」


 ティア教授は立ち上がってこほんとひとつ咳払い。

 

「まず『神』などという存在からしてワタシは否定している。神話時代にいた化け物どもはたんに今に比べてはるかに力が強かったのさ。その中で善性に傾いていたのが神と呼ばれ、悪性に引きずられていた者たちが魔神と呼称されていたと考えている」


「では〝魔人〟とは?」


「通常解釈では魔神の使徒たちを指す。魔神から生まれた、あるいは魔神となんらかの契約をした、当時の中位階級の強さを持つ者たちといったところか。こちらはワタシも同様に解釈しているよ」


 で――とティア教授は俺が小脇に抱えるものを指差す。

 

「それが魔人だって? 驚いたね。頭部だけで存命できるのか」


 俺はとっ捕まえた魔人男の首だけを持っていた。

 

「いや、こうなっているのは俺の魔法だ。バル・アゴスという名の貴族らしい」


「バル・アゴス? うーん、貴族連中にはまったく興味ないから知らないな。でも貴族か。魔人が人の上級社会に紛れているとは……で、どんな魔法?」


 この人の興味はホント偏ってるなあ。

 

「俺の依頼に応えてくれたら、そこの辺りの質問にもそのうち答えよう」


「キミ、人をヤル気にさせる天才だね! 『そのうち』と期間を曖昧にされても期待で胸が膨らむよ」


 鼻息荒く讃えられても嬉しくなかった。

 

「胸はちっともないけどさ!」


 あえてスルーしたのにセルフツッコミしないでよ。

 

「でもワタシに何をしてほしいんだい?」


「ああ、実はな――」


 俺がアゴスの頭をちょいちょいと叩くも、

 

「…………殺せ。……殺せ」


 うわごとのように繰り返すだけ。目は虚ろでなんともかんともしようがなかった。

 

「こいつからいろいろ訊き出したいのだが、こんな状況でな。尋問を頼みたい」


「なぜワタシに? もしかしてキミ、ワタシを拷問好きのマッドサイエンティストだとか思ってないかい?」


「シュナイダルのときは嬉々として痛めつけてたろ?」


「あれは容赦しなかっただけで、べつに拷問が好きなわけじゃないよ。だいたい、あの状態にしたのはキミだろう? 拷問ならキミのほうが得意そうだけど」


「いや、俺はダメだ。専門じゃない」


「言ってる側から生首を指先にのせてくるくる回してるじゃないか。ほら彼、めちゃくちゃ恐怖に引きつっているよ」


 物扱いしていることは認めよう。でも俺だって拷問は好きじゃないし、やり方に精通もしていない。

 

「俺が欲しいのは結果だけだ。こいつは好きにしてくれていい」

 

 メガネの奥がきらんと光る。

 

「魔人を! 自由に解体していいのかい!?」


 すぐ殺しちゃイヤよ? ちゃんと聞くこと訊いてからね。

 

「でも頭だけか。ちょっとしょんぼり」


「他のもあるぞ?」


 俺は謎時空からどさどさと残りの部分を落っことした。アゴスが「ひぎょっ」とか言う。手足と胴体をバラバラにしていた。

 

「関節部分は拘束している。それ以外の部分は開いても閉じても構わない」


「うんうん、それは助かる。体を調べる過程で苦痛は伴う。ワタシはけっして拷問が好きではないけど、きっと彼も泣いて話してくれると思うよ」


 純真無垢な笑顔が怖い。心の底から『研究がはかどるたーのしーぃ♪』って感じだ。

 

「用件はそれだけだ。経過はちょくちょく確認に来る」


「うん、任されたよ。それじゃあさっそく――」


 俺が指先でバスケットボールみたいにくるくる回していた頭部に、ティア教授が手を伸ばしたとき。

 

 ドタドタと廊下を走る音。

 ひとまずアゴスの体を光学迷彩結界で隠し、監視用結界で近づく者を確認して……俺は首をひねった。

 

 バーンとドアが開かれる。

 

「やあ、難問がやってきたぞ」


「わーん、助けてティア教授ーっ!」


 俺だ。正確には俺のコピーアンドロイド。名を便宜上、ハルトCとしているそいつが、なぜか涙目で突入してきたのだ。

 てか今は授業中では? 俺は訝った――。


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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

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