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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第九章:魔法少女戦争(仮)が始まったよ
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みんなの〝想い〟をシャルちゃんへ

先週更新できませんでした。ごめんなさい。


 シヴァとテレジアが巨人の大口に飛びこんでのち、しばらく巨人の動きは止まっていたが、のったり動き出したかと思うと長い腕を振り回しての攻撃を再開した。

 大きくしならせ腕を振るうたびに黒い肉片らしきが飛び散って、離宮や地面で小爆発を起こしている。


「ボクとマリアンヌ、ライアスはシャルの防御を担当する! 護りきるぞ!」


「わかりました!」


「おうよ! って僕の正体バレてんのかよ!?」


 ロボ刑事風のマッチョがショックを受けているようだが気にする余裕がない。

 イリスフィリアは上空へも声を飛ばした。


「ユリヤは引き続き攻撃魔法で牽制を。シャル、キミはとにかく特殊能力で巨人を足止めするんだ!」


「了解よ」

「わ、わかりました……」


 金色の魔法少女に余裕がある一方、魔法少女ピンクことシャルロッテは額に汗をにじませながら奥歯を噛みしめている。

 なにせ絶対的に魔力量が違いすぎる。おそらく桁が違うのだ。


 巨人に向けて伸ばした片腕を、もう一方が指し示す地面へと動かそうと力をこめる。しかしピクリとも動かないどころか逆方向へ引っ張られていった。


 巨人は緩慢でありながらも体を揺らし、ずりずりと少しずつ、王宮へ進んでいる。王都の象徴を破壊したならその先は、人の集まる王都中心部だ。


 すでに避難が完了している王宮内でどうにか食い止めなければ。

 だが対抗策が見い出せない。


「こういうときは――根性! です!」


 シャルロッテは小さな体で魔力を燃やす。ひとつ、魔法レベルが開いた気がしたがまだ全然足りていない。


「それでも! 諦めなければなんとかなるなるです!」


 魂の叫びに、快活な声音が応じた。


『その意気や良し! 私の攻撃はまったく効かないようなので仕方がない。今こそ奥の手をみせるとき!』


 ぼわっと炎をまとって現れたのは、巨大な赤狼だ。


『シャルロッテ、ステッキをかざせ!』


 本来の大狼形態になったフレイの指示に、シャルロッテは一瞬だけ躊躇ったものの特殊能力を解除した。


 オオオオオォォオオーーン!


 巨人が煩わしい拘束を解かれ、歓喜するかのような雄叫びを上げた。侵攻速度が上がり、王宮へと迫っていく。


 シャルロッテは焦りながらも、謎時空から魔法のステッキを取り出した。

 高々と掲げるや、


『今こそ我らの力をお前に託す!』


 巨人の雄叫びを裂くほどの咆哮。全身を炎で包んだ大狼から「謎の赤いビームが飛び出しましたぁ!?」真っ直ぐにシャルロッテの手元――魔法のステッキへと向かう。


「ほわわっ! こ、これは……」


 赤い光線はバッチーンとステッキにぶち当たり、シャルロッテは思わず手を離してしまう。

 魔法のステッキは空中で静止したまま光を受け続けていた。そしてステッキ自体も薄いピンクの光をぽわぽわ放出している。


「ほえ? なんだか力がみなぎってきます」


 ステッキが醸す光を浴びていると身体が熱くなる感覚。


『そうだ! これこそ私が八番目の魔法少女として選ばれた理由でもある。本当のところは後付けだがそこは気にするな。ともかくこうして私の魔力をお前の魔力に変換してくれるらしいのだ! 理屈はさっぱりわからんがな!』


 さすがはハルト様、と背景事情を暴露したがイリスフィリアもマリアンヌも聞かなかったことにする。きっとつい今しがた考え付いて実戦投入したに違いないのだ。


「ありがとうございます、フレイ。ではこれで――」


 シャルロッテは再び片方の指先を黒い巨人に向け、もう一方を地面へと固定した。


「仲良くくっついちゃってください!」


 特殊能力を発動する。


「でも止まってくれません!」


 どうやら魔力差を埋められるほどではなかったようだ。


「フレイの魔力だけでは足りないようです」


『その言い方は私に効くぞ?』


 しょんぼりするフレイに「ごめんなさいです」と謝りつつ、


「みなさん、わたくしに勇気を分けてください!」


 地上と上空でがんばる仲間に呼びかけた。


「ボクとしてはやりたい気持ちはあるのだけど……」

「そもそもやり方を知りません」

「気合でなんとかすりゃいいのか?」


 地上の三人は困惑中。


「あらあなた、たまにはいいこと言うのね」


 上空の魔法少女はころころ笑い、


「要するに気持ちをこめればいいのでしょう? こんな具合に」


 静かに目を閉じ、両手を広げた。

 魔力を高め、〝友〟を想う。

 すると淡く儚い黄金の光があふれ出て、


「ビームが飛んできました!」


 フレイのときと同じく、謎の金色光線が魔法のステッキにぶち当たった。


「ふおおぉぉ……、フレイのときよりがっつり魔力がアップしてます!」


『だからその言い方は私に効くぞ?』


 またもしょんぼりしつつも、フレイは負けじと魔力を高めた。赤いビームがちょっとだけ太くなる。


「じゃあシャルロッテ様、わたしもやってみるね」


 ほっそりしたネコちゃんから水色のビームが飛んでいく。


「来た! こちらもキましたよ!」


 大興奮の魔法少女ピンクを眺め、地上支援組も意を決した。


「あの三人には及ばないだろうが、ボクたちもやってみよう」


 イリスフィリアの言葉に、マリアンヌとライアスはうなずいた。

 意識を内へと沈め、魔力を練る。やがて蒼天に輝くステッキを見つめると、


「本当に出た!?」

「ですがこれ……」

「なんか吸われてるんだが!?」


 青とオレンジ、緑のビームがステッキに集まる。練り上げた魔力がものすごい勢いで減っていくのをそれぞれ感じた。


「またまたキました! これで勝つります!」


 シャルロッテの瞳に自身が満ちる。ピンクの光が小躯からあふれ出した。


「せーぇ、のっ!」


 全身全霊の力をこめて、両の腕を近づける。

 ぐらりと、黒い巨人がよろめいた。


「シャル、いけるわ」「もうすこしだ!」「がんばってください!」「気合入れろぉ!」『貴様ずいぶんえらそうだな』「シャルロッテ様への口のきき方に気をつけて」「僕にだけ圧が強くないか?」


 仲間たちの声援に加えてさらなる魔力を受け、シャルロッテはいっそう力を増した。


「くっつけぇーーーーっ、です!」


 裂帛の気合とともに、一気に両手を引きつけた。


 巨人が傾く。

 長い腕で支えようとするも、地面で爆発を起こしてさらに態勢が崩れた。


「やったか」


 イリスフィリアが歓喜にも似た声を上げるも、


「それ、フラグってやつじゃない?」


 ユリヤがどこか楽しそうにツッコむと、


「いや、これやっただろ」


 ライアスの言葉のとおり、


 ドドォォーーン。


 大地を激しく揺らし、ついに黒い巨人は横に倒れた。特殊能力の効果か、動けないだけでなく黒い肉片も飛ばせなくなっている。


 動きは封じた。

 それは間違いない。

 だというのに、


「やりました! これで――ぇ?」


 黒い巨人の脅威はむしろ、最悪に向かうのだった――。



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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

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