表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第九章:魔法少女戦争(仮)が始まったよ
247/268

脱落者二人目


 間に合わない。テレジアは奥歯を噛んだ。


 矢を放っても白い魔弾が黒い宝石を砕く方が早い。

 そうなればブラックの特殊能力がヴィーイの特性によって奪われてしまう。


 ヴィーイは三主神の中でもっとも弱く、反則級の特性を持っていながらも、自分より弱い者の特性を漁るくらいしかできなかった。

 ゆえに他の二柱とはけして戦おうとはしなかった。倒せない相手にはまったくの無力な特性だったからだ。


 だがこの大魔法儀式においては、相手を実力で倒す必要がない。勝利条件は『腕輪の宝石を砕く』のみであるため、難易度がぐっと下がるのだ。

 さらに魔法少女の特殊能力は儀式に特化したもの。使い方次第で利便性が高まる汎用性を有している。


(その中でもブラックさんの特殊能力は極めて危険なモノ。もしヴィーイの手に渡れば……)


 彼の勝利が現実味を帯びてくる。


(そんなことはさせません!)


 打つ手はない。自分にできることはもはやなかった。


(ええ、すでに手は(・・・・・)打ちました(・・・・・)から、今さら必要ありません)


 勝利を確信していたヴィーイの目が、驚きに見開いた。

 背後から完全に不意を衝き、白い魔弾が黒い宝石へ届くその一歩手前で。



「あ、見て。犬がいる」



 ブラックは地上に大きな生き物を見つけ、にっこにこで指差した。その手はブレスレットの嵌められた方で。


 すかーっ。


 白い魔弾は虚空に消えていく。

 ブラックはまったく意図せずヴィーイの魔弾を避けてしまったのだ。


 地上にいたのは犬ではなく、銀狼。

 魔法少女同士の戦闘を察知して様子を見にやってきたウラニスだが、ブラックの目に留まったのは偶然にすぎなかった。


 その偶然――幸運をもたらしたのは、テレジアが発動中の特殊能力『俺が主人公だぜぇ』の主人公補正に他ならない。


 けれどこんな幸運がいつまでも続くとは思えなかった。

 ここで他陣営が参戦して混乱し、それに乗じてまたブラックが、あるいは参戦した別の魔法少女が危険に晒されてはたまらない。


 であれば、ここは――。


「ごめんなさい、ブラックさん」


 奪われる前に終わらせる。自身に幸運が宿っている今しか、その機会はないだろう。


 素早く矢を放つ。

 狙いは違わず、易々と黒い宝石を撃ち抜いた。


 パリン。乾いた音とともに黒い宝石が霧散する。


「お? おおお?」


 ブラックの身体が小さくなる。ぱっと衣装が弾けて消えた。

 元の姿に戻ったメルを見て、なるほど彼女だったか、と笑みをたたえて受け止める。

 触れて気づいた。


(記憶が一部戻って……いえ、創造主(ルシファイラ)の残滓から取りこんだのですね)


 この儀式はルシファイラが準備していたものを流用したとアレクセイから伝え聞いている。どこかしらで彼女の残り香を嗅いでしまい、その願いに影響されたようだ。


(もともとメルキュメーネスは彼女の〝器〟でもありましたから、知らず取りこんでしまったのでしょう)


 そっと額に手のひらをかざす。

 ぽわっと薄い光が浮かび、消えると同時に魔神の残滓もまた消え去った。



『〝黒〟の宝石が破壊されました。〝黒〟の魔法少女とそのパートナーは本儀式から脱落したと認定します』



 全魔法少女とそのサポーターに向けてアナウンスが流れた。

 メルは数瞬惚けたのち、声を漏らす。


「うー、もう終わり?」


「ええ、楽しかったですか?」


 そっと地面に降ろされたメルは目をぱちくりさせてから、


「うん、楽しかった♪」


 満面の笑みで笑うのだった――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このお話はいかがでしたか?
上にある『☆☆☆☆☆』を
押して評価を入れてください。


アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ