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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第九章:魔法少女戦争(仮)が始まったよ
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自身の存在をしめすモノ


 王都中央広場から西に位置する共同墓地。

 魔法少女グリーンことライアスは、ホワイトに連れられるままやってきた。


 魔族との戦いで亡くなった兵士たちの慰霊碑の陰で、ホワイトが正対する。


「ここならすこしは落ち着けそうですね。改めまして、自分は〝白〟の魔法少女、ホワイトと呼んでください」


「僕はグリーンだ。こっちこそ改めて礼を言わせてくれ。マジで助かったよ、ありがとう」


「いえ、貴方はあんなところで倒れてはいけない人だ。当然のことをしたまでです」


「けど、いちおう僕らは敵同士だろ? 最終的には一人になるまで戦うんだから」


「ええ、哀しいことですが、そうですね。しかしならばこそ、自分は貴方とともに勝ち残り、正々堂々と勝負がしたい」


 まっすぐな金の瞳に魅入られそうになる。


「貴方の正義は本物だ。自分の理想なのです。だからお願いします。最後に自分たち二人が残るまで、ともに手を取り合って戦いませんか?」


 差し出された小さな手を見て、ライアスは感極まる。

 これまで正義を張り続けてきたのは間違いではなかったのだ。


「ああ、よろしく頼むぜ」


 がっちりと握手して、ここに〝緑〟と〝白〟の同盟が締結された。


「では早速ですがグリーン、まだ余力は残っていますか?」


「ん? ああ、特殊能力はもうちょい時間が必要だけど、疲れちゃいねえぜ」


「さすがは正義の体現者。しかし特殊能力が使えないとなれば、二人がかりでも少々厄介かもしれませんね」


 なんの話だ? と首をかしげると、ホワイトは上空を指差した。

 見る。蒼天をぐるぐると、一羽の鳥が旋回していた。


「来ます」

「ぬおっ!?」

 ヒュヒュンッ!


 腕をつかまれ引っ張られた。

 さっきまでいたところに矢が突き刺さるや、爆発音とともに地面に大穴が開く。


「パープルか、しつこいヤロウだぜ!」


 ライアスは聖剣を異空間から抜き取って構えた。

 パープルは大弓を手にしたまま突っこんでくる。

 直視するには露出が多すぎて視線を逸らしそうになるも、根性で敵を見据えた。


「くそっ、破廉恥な格好しやがって……」


「私だって好きでこんな格好はしていません!」


 激しい衝突音。

 大弓の上部分は刃となっていて、聖剣と重なっても折れないほど頑丈だ。


「ぐ、ぬおっ!」


 弾かれた。特殊能力を発動していないとはいえ、魔法力の大部分を身体強化に回してなお押し負けるほどとは。


「強えな」


 パープルが追ってくる。崩れた体勢では追撃を防ぎきれない。


「援護します」


 白い魔法弾の雨がパープルの行く手を阻んだ。

 しかし大弓を器用に振るい、ひとつひとつを確実に叩き落す。


(なんだ……? ホワイトの魔法弾って白いのに、これ、闇属性か?)


 ライアスは訝りながらも態勢を整え、パープルに斬りかかった。

 ぞわり。総毛立つ怖気に、足が止まりそうになる。


「うおおおっ!」


 それを根性で振り払い、聖剣を振り上げた。


「その勇気、賞賛に値します。けれど――」


 ふざけた仮面越しに、パープルの瞳が金に弾ける。


「ここまでです」


 消えた、とライアスは錯覚した。それほど一瞬で間合いを詰められ、聖剣を振り下ろす動作を始めたその瞬間には懐に入られていた。


「かはっ……」


 みぞおちに肘。

 パープルは倒れてくるライアスを軽く受け止めてから、するりと彼の背後に回り、〝白〟の魔法少女へ狙いを切り替えた。


(武器を使う必要もないってか……)


 力の差は歴然。薄れゆく意識の中で、流れてきたのはかつての屈辱。幼少期にプライドをずたずたにされた、辺境での一戦だ。


(ああ、なんだ……)


 パープルは強い。こちらが特殊能力を発動しても届かない域だと感じた。けれど――。


あいつ(・・・)に比べりゃ、ぜんっぜん大したことねえ!)


 怒りで意識を引き戻す。落ちかけた聖剣をぐっと握り直し、




「僕は、ハルト以外に負けたくねえんだよ!」




 振り向きざまに振り抜いた。


「ッ!?」


 ガキィィン、と大弓で受け止め、さらに力をこめて聖剣を弾き返す。


 すでにインターバルタイムは経過した。今は特殊能力を発動している。ステータスが軒並み上昇しているのだ。

 だが、まだ足りない。


 体をもっていかれそうになるのを、鍛え上げた筋肉に全魔力を注ぎこんで踏ん張る。さらに魔力をかき集めようとして、背中に熱を感じた。


(そうだ、まだ僕にはこれがある)


 自身の存在を証明(しめ)すモノ。しかしこれからの自分には不要と切り捨てた、魔法術式。


 胸の中で常に渦巻く葛藤により、これまでは無意識に使うことを躊躇っていたらしい。

 ここに至りようやく、完全に吹っ切れた。


 背の王紋に魔力を通すと、それより多くの魔力が逆に還ってきた。

 すべてを身体強化に注ぎこみ、全身の力を聖剣に押しつける。


「そんな……、今の私が純粋な力で押し負けるなんて」


 驚きつつもどこか嬉しそうなのはなぜなのか? 不思議に思うも今は些末と切り捨てる。

 パープルが大弓をわずかに引いた。相手の力を利用して態勢を崩そうと――。


「うおおおおおおおっ!」


 それを強引に軌道修正し、


「きゃっ!?」


 聖剣を横に振り抜き吹っ飛ばした。


「くっ、なんて力……」


 パープルは空中で半回転。大木を蹴って上空へと逃れる。


「……わかっています。今の私では、続けてアレ(・・)は使えません」


 苦々しく吐き出すと、〝白〟の魔法少女を一瞥してから彼方へ飛び去った――。


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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

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