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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第九章:魔法少女戦争(仮)が始まったよ
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また(いろんな意味で)ヤバそうなのが出てきたんだが?


 グリーンを見つけるのは簡単だ。

 なにせ奴は『魔法少女戦争(仮)』が始まってもお構いなしで、せっせと正義の味方をやり続けているからね。


 俺がサポーターの能力で変身中のグリーンを探り当て、駆けつけたのは王都の中央広場。

 穏やかな昼下がり、のんびりお昼休みを過ごしていた市民の皆さまの注目を一身に集める緑の不審者。


「悪! 即! 滅殺ぅ!」


 物騒な掛け声とともに、チンピラじみた男三人をぶちのめした。

 果たして彼らは衆人環視の中、一方的に『悪』と断じられて恥を晒すほどのことをしたのだろうか? 明らかにヒャッハー系なんだけど、見た目で判断してはいないだろうか? てかなんで君ら市民の憩いの場(こんなとこ)にいんの? 場違いすぎない? それも偏見だけどさ。


「よう、やっぱりお前が真っ先にかけつけて来たか、ブルー」


 気絶したチンピラ風情を放り投げ、グリーンはイリスに正対する。

 市民の皆さん、グリーンの風体にドン引きしつつ、イリスの凛々しい姿に心奪われている。

 今から何が始まるのかを察したのか、


「青い魔法少女さん、がんばって!」

「ムサい緑の野郎をやっちまえ!」

「いやホント、その緑なんとかして」


 哀れに思えるほど一方的な声援と怒号が飛び交っている。

 まあ、正義ってのは孤独なものさ。俺もそうだからな。わかってくれる人(我が天使シャルちゃん)にわかってもらえればそれでいいのさ。

 当然グリーンもわかったうえで活動してるはず。


「くっ……、どうしてだ? 僕はたった今ゴロツキどもを成敗したのに……」


 めっちゃショック受けてますやん。


『よし、イリス。今がチャンスだ、やっておしまい!』


 俺は脳内ボイスをイリスに飛ばす。

 この機を逃してなるものか、とイリスも理解しているようだ。ちょっと申し訳なさそうな表情ながら、やんやと騒ぐ市民の皆さんの後押しを受け、


「来い! 『破滅に誘う破城杭(パイル・カタストロフ)』!」


 片手を天に掲げて叫ぶや、青い光が彼女を包み、やがて無骨な武器が青い魔法少女に装着された。グリーンには遠慮無用。今度こそ退場させてやるぜ。


「上等。こっちも最初から全力で行くぜ!」


 虚空からにょきっと剣の柄が現れた。つかんで引き抜くと、白刃の聖剣が姿を現す。

 グリーンは構えもそこそこに地面を蹴った。ずぎゅんとすごいスピードで迫ってくる。

 どうやら特殊能力は発動済みらしい。


 グリーンの特殊能力は自身の力を大幅にアップさせるもの。それだけではなく、奇妙な幸運(こちら的には不運)で相手を邪魔してくる。


 主人公補正がどうのこうの言ってたがまさしく意味不明。

 かなり強力ではあるのだけど、俺たちだってなんの対策もしてこなかったわけじゃない。

 奴の特殊能力は時間制限がある。おおよそを推測するに三分ほどだ。


「よし、周囲に警戒すべきは何もない。イリス、安心してやっちまえ!」


 広い場所に現れたのが運の尽きよ。

 俺は戦闘範囲を多角的モニターで監視する。バナナの皮もなければ暴れ牛とか馬とか竜とかもいない。広場の石畳が急に崩落する要素も調べた限りはないし、イリスも少しだけ体を浮かせて躓きなど足場の不安を打ち消している。


 さあ、不幸とやらよ、どっからでもかかってこい!



「あーそーぼーっ♪」



 あちゃー。そーきたかー。

 またも姿を消して近寄ったのか、いつの間にかうっきうきで魔法少女ブラックことメルちゃんが現れた。すらりとした体躯に無邪気な笑み。反して黒い衣装と禍々しい大鎌とのギャップに大歓声が巻き起こる。


 二対一でも分が悪いというのに、一方は姿を完全に消し去れるのだ。

 グリーンの特殊能力の効果時間内を持ちこたえられるだろうか?

 というか、それどころじゃなくなったよ?


「なっ!?」


 イリスが驚くのも無理はない。

 なにせメルちゃんのみならず、グリーンまで姿を(・・・・・・・・)消してしまった(・・・・・・・)からだ。


 ガキィィーン!「くっ!」


 殻に閉じこもるように防御魔法壁を展開したものの、瞬時に砕かれて吹っ飛ばされた。もっとも防御魔法壁で威力が減らされたからその程度で済んだとも言える。

 これどうしようもねえなあ。仕方がない。


『イリス、アレを使うぞ』


 脳内に語りかけると、イリスはきゅっと唇を引き結びながらもこくりとうなずいた。


 カッ!

 眩いばかりの光がイリスから放たれる。ただの目くらましだが、ほんのすこしでも――謎時空からソレ(・・)を取り出す時間が稼げればよかった。


 光の中、イリスは聖武具もどきを装備したまま、とあるアイテムを手にしていた。


 メガネだ。


 知的な印象を与える、やや細めでつり上がった感じは俺の好みである。

 イリスがメガネを装着する。


 途端、グリーンとメルちゃんの姿が露わになった。

 ふははははっ! どうだ! グリーンの特殊能力への対策はもちろん、こんなこともあろうかとメルちゃんの特殊能力対策もしていたのさ。


 メガネとは何か?

 それは『よく見えるようにするための道具』だ。

 そしてイリスの特殊能力は『道具の意味を拡張してやるぜぇ』だ。

 今回は『よく見える』を拡張して姿を隠したメルちゃんたちを視認できるようにしたもの。


 ふっふっふ、あまりにチートな特殊能力が逆に仇となったな、メルちゃん。

 この手の概念バトルでは、チート級能力を一点突破型の一見ショボい能力が打ち破るのが常なのでね。まあ、イリスの特殊能力は一度にひとつの道具にしか効果ないから、聖武具の『触れた相手の動きを封じる』効果はなくなっちゃうんだけど。


 ちなみに不思議なことに、俺も二人の姿が見えている。サポーターにも魔法少女の特殊能力の恩恵がちょっとあるみたい。これは検証済みだが原理は不明だ。


 イリスが自分たちを目で追っていることに、メルちゃんとグリーンは驚いている。なんか口を動かしてるけど声は聞こえないな。あくまで『見える』ようにしただけらしい。


 ま、それで十分だけどな。

 イリスが片腕を突き上げる。背にした『杭』のひとつが台座部分に取りつけられた。


準備完了(Bereit)


 機械的な音声にうなずき、中腰になって腕を引き絞る。


「穿て!」


 そして声高らかに拳を突き出すと、『杭』が勢いよく射出された。

 狙いはグリーン、ではなく。


「悪いけど、一番厄介なキミを先に退場させるよ」


 黒い魔法少女ことメルちゃんに向かって『杭』は突き進む。

 メルちゃんは慌てて大鎌で防ぐ態勢に移る。と、ここで子ども形態に縮んでしまった。


「わ、わわわ」


 声も聞こえるし姿が幼くなったところから、サポーターが特殊能力を解除して『避けろ』と指示したのだろう。身を捻って躱そうとする。


 でも、それは悪手と言えた。

 これで姿を消した相手を見えるようにしたメガネの効果は必要なくなったから、聖武具の効果に切り替えられるのだ。当たれば相手の動きを封じ、特殊能力をも使えなくするものにね。


 ギィィンッ、と。


 躱しきれずに大鎌の柄で受け止めたメルちゃんは、苦悶の表情を作り上げる。ふらふらと落下して、広場の地面に突っ伏した。


「ち、ちから、入ら、ない……」


 弱弱しい声音に心が痛むも、勝負は勝負だ。

 イリスも険しい表情をしながら追撃態勢に入る。


「ちっ、やらせるかよ!」


 もちろんグリーンが助けに入ろうとするのも想定済みだ。第二撃がグリーンに向かって放たれる。


「うおっ!?」


 グリーンはなんとか避けるも、大きく後退を余儀なくされた。

 その間にもイリスは三つ目の『杭』を台座にセットする。見事に使いこなしてるなあ。


 イリスは努めて冷淡に、慎重に、いっさいの油断なく、メルちゃんに『決定打』を撃ちこもうとして。




 ――ヒュン!




 風を切る音。

 イリスはよく反応した。身体を投げ出すようにしてそれ(・・)を躱したのだ。


 ガキッ! とさっきまでイリスがいたところに刺さったのは、一本の矢だ。


『イリス! また来るぞ!』


 俺の脳内ボイスに、イリスはゴロゴロと地面を転がる。

 彼女を追い回すように幾本もの矢の雨が中央広場に降り注いだ。


 どこだ? 俺は監視用結界を周囲に展開。

 近場に限らずイリスを狙える場所を手当たり次第で確認する。


 だが、いない。

 まったく見当たらない。まさか……と思うも、常識の埒外なのが魔法少女というものだ。


 索敵範囲を一気に広げると、

 いた!

 中央広場どころか王都をも離れた丘の上。

 王城にそびえる尖塔のひとつのてっぺんに、〝紫〟を基調とした誰かが大弓を構えていた。


 よくよく見ればその姿は、



「えっっっっっろ!」



 ボンキュッボンで露出過多(サンバスタイル)な、むちゃくちゃえっちなお姉さんだった。しかも蝶みたいな仮面(パピヨンマスク)を被ってますがなぜに? 俺は訝った――。



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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

― 新着の感想 ―
その格好は敵側の幹部では!?
パープルレイン〜
はよ二期を!
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