〝ピンク〟のちから
新年あけましておめでとうございます
我が天使シャルロッテちゃん――おっとここでは魔法少女ピンクだったか。
いやもうほぼほぼ他の陣営にはバレてるだろうがともかく、ピンクちゃんの登場により窮地に陥っていた俺の相棒、魔法少女ブルーことイリスが初戦での退場をなんとか免れた。
これで二対二。
人数的には互角になった。それどころかこの儀式で『最強』と俺の中で名高い魔法少女ピンクと、このところ急成長中の魔法少女ブルーがタッグを組んだのだ。
これもう勝ち確っすな。がははっ!
などと余裕ぶっこいていた時期が俺にもありました。
ガキンガキンガキガキガキガキィィ! って、うるさ!
激しい金属の衝突音が鳴り響く。
「ふひゃぁ!?」
ピンクちゃんは地面に降り立ち、前後左右にさらに上と、防御魔法陣を展開してまさしく殻に閉じこもることしかできない。
すこしでも隙間を作れば、見えない大鎌の切っ先がこじ開けにくるからだ。
てかメルちゃんの『姿を完全に隠す特殊能力』って永続なのか? ちょっとチートすぎね?
一方、すぐさまグリーンを処置して助けに行くべきイリスもなんだか苦戦している。
グリーンが変な特殊能力を再び発動させたからだ。
「くっ! どうして暴れ馬がこんなところに!?」
ヒヒーンッ! と甲高い嘶きとともに乱入してきたお馬さんの突進を躱したところに建物のベランダから鉢植えが落下して脳天を直撃しましたね。コントかな?
イリスの運が悪すぎる原因がグリーンの特殊能力だろうことは状況的に明らか。マジ意味わからん。いちおう時間制限はあるらしいけどいつまでかわからんし、メルちゃんはたぶんシャルと全力で遊んでるのが楽しいんだろうな、お子さまの無邪気さゆえか容赦ない。
しかし、である。
我が天使がピンチな状況をいつまでも放置してられないのが兄なのだ。
てなわけで、俺は光学迷彩で姿を隠したまま、建物の陰からこっそりピンクちゃんの衣装に魔力を注入。衣装を通して防御結界をピンクちゃんの周囲に構築した。
なんとなくパワーアップしたみたいに衣装からうっすら光りを放つ。
これで俺が手助けしたとはバレへんやろ。
「はっ!? なんだか力が漲って?」
すくなくともシャルにはバレてない。ならば問題はナッシングだ。
防御が分厚くなったのを不審に思ったのか、メルちゃんの攻撃がぴたりと止む。ガキンガキンとめちゃくちゃうるさかった音が完全に消え去った。
「このチャンス、逃してはなりませんね」
聡明な子だ。すぐさま勝機と捉えたのか、魔法防御は展開したまま両手を前に突き出した。ぐるんと少躯を捻るや、
「まずはあなたと!」
片手の人差し指をぴんと伸ばし、グリーンを差す。
「もうおひと方は見えませんので仕方なく、こちらで!」
他方の手は離れた壁を、指差した。
「『仲良く』どうぞ!」
元気よく声を張り上げると、おや?
「ぐおっ!?」ずぎゅーん。びったーん!
グリーンは勢いよく飛ばされて、ピンクちゃんが指差した壁にぶち当たった。
「な、なんだこりゃ……ぐ、離れねえ!」
しかも壁面にべったりくっついて落ちてこない。
「これぞわたくしの特殊能力! 『仲良くくっつけてやるぜぇ』! です!」
ドヤ顔のピンクちゃん可愛い。でもそういうのは言わないほうがいいよ? 自分の能力がバレちゃうからね。まあシャルの場合はうっかりというより、それが『作法』だと思ってる節があるからな。仕方ないね。
「今ですブルーさん! わたくしが動けない間にグリーンさんを!」
ピンクちゃんはグリーンと壁を指差したまま叫ぶ。
どうやら特殊能力発動中は別のことができないらしい。事前に展開した魔法陣はそのままだから、単純に新しく魔法発動するのが無理っぽいのか。
そういう弱点っぽいのは黙ってたほうがよかったかなー? まあ可愛いからいっかー。
唐突な展開に口をあんぐり開けていたイリスはハッと我に返った。
シャルの護りが壊される前に、と壁面に固定されたグリーンへ飛びかかる寸前。
ギィィィンッ!
俺の目の前で火花が散った――。
ことよろ〜♪




