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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第八章:魔法少女戦争(仮)が始まるの?
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イリスフィリアの願い


 ちょっと来てくれ。

 返事をする間もなく、手を引かれて不思議なドアをくぐった先は。


「何者だ、貴様は!」

「どこから入ってきた!?」

「ふざけた格好しやがって」

「捕らえろ! 逃がすなよ」


 帝国本陣のど真ん中だった。

 呆気に取られる間もなく包囲され、イリスフィリアは戦闘態勢に入るも、シヴァ――ハルトは意に介した様子もなく、


「あれ? この辺りじゃなかったか」

「ちょ、キミは何を――きゃっ!?」


 イリスフィリアを抱き抱えると、すぅーっと上空へ。下での騒ぎには目もくれない。


「お、あっちのでかいテントが密集してるとこっぽいな」


「どういうことだ? キミはここで何をしようとしているんだ」


「ちょっとした嫌がらせとアルバイトだよ。ちなお前は見えないようにしてるから安心しろ。てかなんで学院指定の運動着で来るかなあ? 王国は誰も関与してません、って(てい)にするって言ったろ?」


「ご、ごめん。動きやすい服はこれしか持っていなくて……。というか、アルバイト?」


 空中を移動しつつ話すうち、目的らしきテント群の上空に来た。


「話は後だ。お前だけ連れてきた理由も後で話す。んじゃ、さっそく始めるかね」


 ハルトが仮面の下でニンマリ笑った、ような気がした。

 急降下してテントのひとつに突入すると、


「はっはっはぁ! いただいていくぜぇ!」


 虚空に円形の魔法陣を生み出すや、そこかしこにあった大袋をそこへ投げこみ始めた。大袋は魔法陣の中に消えていく。


「も、もしかして……」


 いや、もしかしなくても、


「略奪するのか!? 糧食を!」


「けっこう量あるな。おいイリス、お前も手伝え。ぜんぶ持ってくんだからな」


「待て。それでは餓死者が出かねないぞ」


「大丈夫だ、問題ない。こいつらさっき飯食ったばかりだし、最寄りの街までは徒歩でもそんなかかんないのは確認済みだ。最悪の場合はちょっとずつこれ返してやるし」


「いやしかし、これはさすがに今回の作戦の趣旨に逸脱しているような……」


「敵を追っ払うには戦えなくするのが一番だ。むしろ俺の本当の目的はこれだからな。しばらく俺らは食うのにも困らんくなるし、あ、そうだ!」


 本音がダダ漏れなハルトはまたも妙案を思いついたのか、せっせと大袋を彼が言うところの『謎時空』に放りこみつつ言う。


「武器とか馬とかも掻っ攫うか。となると飯をぜんぶ持ってく倍以上の時間かかるな」


 手を止めずにあれこれ考えていたハルトは、「あ、こうすりゃいいのか」と――。


 二人は再び空中にいた。

 またも彼の腕の中に納まってしまったが、気恥ずかしさより驚きの方が勝っている。

 真下で行われている光景がそうさせていた。


「……ひとつだけ聞かせてほしい。その『謎時空』とやらの容量はどれくらいあるのかな?」


 円形魔法陣がぐいーんと広がり、テントごと押し付けるようにして謎時空へ収めていく。まるで巨大な魔法陣がテントを丸呑みしているようだ。


「さあな。俺もよくわからん。でも取り出すのはそう難しくないんだよな。これ欲しい、って思うだけで、ほら」


 すぐ横に小さな円形魔法陣を出現させ、手を突っこむ。大袋をひとつ取り出した。

 イリスフィリアに見せびらかしたらすぐに戻すと、満足げに眼下を見やる。


「よしよし、この方法だとあっという間だな」


 あまりのマイペースっぷりに思わず吹き出した。


「なにわろてんねん」


「いや、すまない。ところで、ボクに話があるというのは?」


「ああ、そうだった。てか前の続きだよ。邪魔が入らないタイミングを狙ってたんだ」


 シヴァの仮面が消え、ハルトはのほほんと言う。


「お前も魔法少女にならないか」


 なんとなくそんな気がしていた。

 自分の考えは変わらない。誰かを傷つけてまで叶えたい願いなんて、ありはしなかった。


(でも、ボクは知った。実際にこの目で見た。人と魔物が仲良く暮らす、パンデモニウム(あのばしょ)を)


 ハルトが掲げる理想――『人魔が仲良く暮らす世界』は、自分のものとまったく同じ。

 たとえその過程が違うとしても、目指す場所に違いはないと確信している。


(その過程の違いだって、ハルトなら暴力に訴える強引なやり方ではないはずだ)


 なにせ彼には、〝正義〟を貫く理由が存在する。


(きっとハルトはシャルを勝たせるために動くだろう。ボクを誘ったのはただの人数合わせ。いや、シャルが勝利するためのサポート役の意味合いが強いと思う)


 そう理解してなお、イリスフィリアは思う。


(シャルの願いはハルトの願い。その逆も然り。なら、ボクがやるべきは、ひとつだ)


 数合わせでも構わない。

 シャルのサポート役も厭わない。

 この身はもはや、ハルトの道具として差し出そう。


 もし万が一、シャルが脱落したなら自分がその理想(ゆめ)を継げばいい。

 そうして、自分は――


(キミといっしょに、ずっと先の未来を、見てみたい)


 そう、強く願った、直後。


「なっ――!?」

「うお、まぶしっ!」


 虚空を彩る青い光。

 同色の宝石が嵌めこまれたブレスレットが、イリスフィリアの片腕に吸い寄せられた。


 再びの、青光の乱舞。

 レオタード調で腰の後ろにだけ広がるシースルーの長いスカート。体のラインを強調し、きわどさが際立った魔法少女衣装にイリスフィリアは身を包んでいた。

 そして、


「いやちょっと待て。なんで俺に?」


 黒い戦士シヴァの姿はなく。

 その首に青いチョーカーが着けられた、クマのぬいぐるみが浮いていた――




【現在の儀式参加者】※()内は宝石の色

 [魔法少女]       |[サポーター]

 ・シャルロッテ(ピンク) | ??

 ・メル(黒)       | ティアリエッタ

 ・ユリヤ(金)      | ウラニス

 ・テレジア(紫)     | アレクセイ

 ・ライアス(緑)     | マリアンヌ

 ・イリスフィリア(青)  | ハルト


 残り1枠――


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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

― 新着の感想 ―
自分の意思よりルール優先してるからそうなるw
笑笑笑笑
ハルトの魔法凄いな F●T●の聖杯もビックリ仰天だ そして最強のサ...サポーター誕生
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