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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第八章:魔法少女戦争(仮)が始まるの?
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いざ尋常に騙し討ち


 帝国軍先遣隊三万は、領内最後の峠を越えた。

 ここから先は開けた盆地になっていて、さらに進めば険しい山地に行き当たり、そこがちょうど王国との国境に当たる。


 天然の要害に加え、相手は守りに長けた『地鳴りの戦鎚』ゴルド・ゼンフィス辺境伯だ。

 真っ向勝負で突破するのは至難の業。


「全隊、止まれーっ!」


 先遣隊を指揮する細身の司令官が号令すると、部隊は盆地の中程で停止した。

 斥候が戻ってきて報告する。


「敵はいまだ陣を敷いておらず、敵兵は影もかたちも見当たりません。山道沿いの検問所も通常と変わらぬ様子でした」


 先遣隊の司令官は馬上で顎鬚を撫でながら応じる。


「ふうむ、ならば情報は漏れておらんな。よし! 予定通り山道を一気に駆け上がって検問所を突破する。誰一人として逃すな。山を越えたらふもとの村を制圧して陣を敷くぞ」


 彼に油断はなかった。伏兵を隠せぬ開けた場所からぐるりと見回し、望遠鏡で自ら山の中腹をじっくり観察する。

 大胆な行軍をしつつも、これまでけっして警戒は緩めなかった。

 兵士たちも彼に倣い、緊張感を保ち続けている。


「進めぇっ!!」


 司令官は自ら先陣を切って吠えた。

 複数の属性を持ち、攻防に優れた魔法を操る彼は当然、腕に覚えがある。ただ武力でのし上がっても慢心はなかった。


 皇帝ヴァジム・ズメイの信頼を勝ち取り、さらなる上を目指す。


(そのためにもゼンフィス辺境伯の首を必ず我が手「にびぃぇっ!?」


 ばっちーん、と。

 透明な何かにぶち当たった。


「ぶべっ!」「ぐわっ!」「な、なんだ!?」「どうなってる!」


 あちこちでも怒号や悲鳴が上がる。

 不思議なことに、みな落馬して透明な壁に阻まれているのに、馬はそれをすり抜けて(・・・・・)先へと走っていた。


「くそっ! なんだこれは!?」


 司令官はあちこちに魔法を放つも、すべてが透明な壁に弾かれていた。


(バカな……、かなりの高さまであるぞ。それに、左右も……)


 兵士たちに命じて試した限り、魔法が届く範囲に見えない壁はそびえているらしい。

 しかし壁の向こうでは、軍馬がのん気に草を喰んでいた。

 ここで時間を食っては王国の国境警備に気取られてしまう。こちらが時間をかければかけるほど、相手に守りを固める時間を与えかねないのだ。悠長にはしていられない。


 焦りが浮かぶも、ともかく一度態勢を整えようと、後ろから走ってくる歩兵がすぐそばまで迫っているのを見て、そう考えた矢先だった。


「ふはははははっ! 奇遇だな、帝国の諸君。我らは君たちを歓迎する!」


 耳障りな声は上空から。

 しかし見上げても曇天が広がるのみだ。


「ふははははっ! どこを見ている!」


 今度は後ろから。

 振り向くも、歩兵がいまだ迫っているだけ――「て待て、止まれぇ!!」


 叫ぶもなぜか、声は届いていない。いや、むしろこれは!


『進め進めぇっ!! すすすすめ、メェすす進めぇっえ、ええ、え、えぇっ!』


 歩兵部隊は前進せよとの命令を聞かされていた。

 間違いなく司令官の声であるため、独自の判断では止まれない。それでも異常を感じて先頭は足を止めかける。

 だが、時すでに遅し。


「ぐわーっ!」


 歩兵の先頭は止まりかけたものの、後方から押し出される。

 そうして馬を失った騎馬隊三千は、自軍の歩兵の波に飲まれていった――。



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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

― 新着の感想 ―
うわぁ・・・これはエグい・・・人圧で亡くなった事故とか実際にあるからな・・・
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