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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第八章:魔法少女戦争(仮)が始まるの?
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滝行、再び?


 帝国領内にある、自然豊かな山の奥。


 ドドドドド……。


 豪快な音が鳴り止まぬここは、滝行に打ってつけの場所だった。

 シャルロッテはブレスレットの効果で魔法少女の姿になり、滝を背にしてにっこにこ。

 ユリヤは周囲をぐるりと眺め見て――その実は青空に霞んだ星の位置を測りながら、現在の位置を推定した。


「ふぅん、家の領内に来たことがあったのね」


「えっ、ここはユリヤのお家の近くなのですか?」


「わりと近いわよ。シャルなら飛んで十分もかからないかな」


 ふおぉぉ……、とシャルロッテは目を輝かせながらも、続く言葉を飲みこんだらしい。


「今度招待するわね♪」と微笑みを投げると、「ぜひ!」と花のような笑顔が返ってきた。


「ではさっそく、ブレスレットの力を試してみましょう!」


 息まくシャルロッテにほっこりするも、ユリヤはやんわりと尋ねる。


「具体的になにを試すか決めているの?」


「実はこのブレスレットなのですけど、魔力を高める以外に特殊な能力をひとつ、授けてくれるのです」


「あのアニメではそうだったわね。魔法とは趣が異なる不思議な力、だったかしら」


 事実、この大魔法儀式においても魔法少女たちは、その願望や資質などが強く反映された特殊な能力が付与される。

 ユリヤはブレスレットを手にした際、儀式のルールを把握していた。ご丁寧にも半透明ウィンドウが現れて、そこに事細かに記されていたのだ。

 ハルトが取り入れた仕組みのひとつだろう。


「でもあれってパートナーのマスコットキャラが教えてくれるのよね?」


 今回の儀式に当て嵌めれば、チョーカーを装着するサポート役が魔法少女のステータスを確認でき、それ以外は魔法少女本人にも知り得ない。

 そうルールにも明記されていた。


「では先にそちらを、サポーターを見つけないとでしょうか」


 そうなるとユリヤには不都合が生じる。

 せっかく儀式のシステムにこっそり介入したのに、シャルが持つチョーカーが運用を始めるとその『裏道』が閉ざされてしまうのだ。


(そのルートでシャルの特殊能力を確認できるのだけど……)


 さすがにアンフェアだ。

 不正な手段はあくまで儀式を楽しむためのスパイス程度でなくてはならず、自身を有利に進めるために使うのは本意ではなかった。


「そもそも他の参加者には秘密にするものでしょう? わたし、選ばれるつもりなのだけど」


 むしろもう選ばれているので、ここで特殊能力を見せてしまえばシャルロッテにとって不利な要素になり得るのだ。


「はっ! そういえばそうでしたね。ただわたくし、ユリヤになら知られてもいいですよ?」


「ダメよ。馴れ合いはよくないわ。実際に始まって同盟を組んだりしたときに、必要なら明かし合いましょう」


 なるほどたしかに、とシャルロッテは納得する。


「でもそうしますと、滝行をやる意味がなくなりますね」


「勉強不足でごめんなさい、その滝行ってなんなのかしら?」


 尋ねると、シャルロッテは待ってましたとばかりに前のめりで説明した。

 そこで驚愕の事実を知る。


「……魔法レベルが、上がったの?」


「はい! そのときに参加したみなさんは軒並み」


 にわかには信じられなかった。

 ただ滝の水に打たれるだけで、どうして?


「ユリヤもやってみますか? この際、魔法少女は横に置きまして、やってみて損はありませんよ。ちょっとだけ……ぁ、うん、前よりすこし肌寒いのでけっこう辛いかもですけど……」


 やるだけ無駄、との確信がある。

 体を痛めつけることと魔法レベルが上がることにはなんら相関がないのだから。


(そう、滝に打たれたから魔法レベルが上がったのではないわ)


 必然性を見出すならば、それは――。


「ねえシャル、その場にはシヴァもいたのよね?」


「はい、いましたよ」


 にっこにこで答えたシャルロッテを愛らしく思いながら、ユリヤは確信する。


(シヴァ……いえ、ハルトは他者の魔法レベルをも扱えるのね)


 またひとつ、ハルトの底知れぬ実力が明らかとなった。実際にどうやっているのか、それを知りたくはあるが焦りは禁物。

 ひとまず滝に打たれたところで魔法レベルが上がるわけでなし。


「滝行に興味はあるけれど、別の機会に準備をしてから挑みたいわね。今日のところは他に何かして遊びましょうよ」


 シャルロッテは腕を組んで考える。


「そうですね、近くに悪者でもいて悪さをしていれば力試しができそうですけど、こんな山奥ではそもそも人の気配はありませんし」


 この子はときどき物騒なことを言うな、とユリヤは意識を集中する。


(……へえ、ちょうど近くにいいのがあるわね)


 マルティエナ家の領内には、いくつか監視網を敷いている。そのうちのひとつで面白いことが進行中だった。


「ねえシャル、あっちに小さな村があるの。素朴だけれど穏やかで美しい村よ。ちょっと行ってみない?」


「はい! 行ってみたいです!」


「じゃ、わたしも魔法少女になってみるわね」


 儀式で使うブレスレットではなく、シャルからもらった(ハルト制作の)短めのステッキを振り回す。黄金の光が帯を成し、ユリヤの小躯に貼りついた。最終的にはポンッと金の光は弾けて消えて、代わりに金色の魔法少女が姿を現す。


「こっちよ、付いてきて」


 ユリヤは空へ舞い上がると、東の方角へ飛び出した――。


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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

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