魔法少女戦争(仮)が開始されました(棒)
俺はソファーに座ったまま偽シヴァを操作する。セリフももちろん遠隔でしゃべらせているのだ。
「実はここ最近、回収したルシフェル・カードから異常を検知した。具体的には魔力が活性化していたのだ」
もう使える物はなんでも使うぞ。
「そして魔神が憑依したギーゼロッテ王妃の周辺を探っていて、これを見つけた」
俺は謎時空からシャルたちに提供していたのとは別の金属製のカードを七枚、(シヴァが)取り出した(ように見せかける)。
ルシファイラ側から回収したのは六枚だし血まみれだったので、きれいにして一枚を新たに加えました。
横目で見ると、ウラニスは相変わらず我関せずとぼけっとしている。何かしらツッコむ気はないらしいな。
んじゃ続けよう。
「どうやらルシファイラはカードを君たちに奪われるたび、カードを複製していたようだ。なにせ元は自分たちがこしらえたものだからな。実物が出現したところで再度解析し、精巧なコピーを作っていたと考えられる」
「なるほど。だからカードをわたくしたちに奪われても取り返しにこなかったのですね」
あ、やっぱり変だと思われてたか。ふう、流れで誤魔化せてよかったぜ。
「ああ、そしてその過程でこの古文書を見つけ、あわよくば究極の……願望機? を手中に収めて世界を支配せんとしたのだ!」
おおーっとおめめをキラキラ輝かせるシャルちゃん。このために生きてます。
「なるほどそうなりますと、大儀式を開始する前に魔神さんが完全に封じられたことによって複製カードの魔力が行き場を失い、計らずもオリジナルのルシフェル・カードと同調してそちらに魔力が流入したため大儀式が起動してしまった、ということですね!」
え? ああ、うん、そんな感じ……なのかな?
「でしたら無理に大儀式を停止させようとすれば、超大量の魔力が暴走する危険が……」
くっ、と沈痛な面持ちもまた新鮮で可愛い。
「もはや逃れられない運命……ならば!」
はい、覚悟完了いただきました。
シャルがやる気になったなら、止める理由なんてないよなあ!
「む? これは……っ!?」
偽シヴァにオーバーアクションさせつつ、謎時空からルシフェル・カード(真)を飛び出させた。ついでに複製カードもシヴァの手から離して勢いよく天井付近まで舞い上がらせる。
十四枚のカードが真偽で対を成し、虚空で円を描く。そして――。
「あっ! カードが!」
ぺかーっと光らせると、ルシフェル・カードがブレスレットに成り代わった。七個それぞれには違った色の宝石が嵌められている。
続けて複製カードが、ブレスレットの宝石と同じ色のおしゃれなチョーカーに変化した。さすがにペット用の首輪はね、アニメ準拠にしてもね。
直後、六対の魔法具が窓を突き破って外へ飛んで行く。
残った一対のブレスレットとチョーカーが、厳かにシャルの眼前に降りてきた。嵌めこまれた宝石の色はピンク。チョーカーも同色。当然である。
ちなみにチョーカーの元となったカードは新しく追加したやつね。きれいにしたとはいえ元が血でべっとりのをシャルちゃんに触れさせるわけにはいかないのだ。
「どうやら、お前は選ばれたようだな」
「わたくし、が……?」
「そうだ。聖なる器はそれを切に望む者の前に現れる。その候補者は必然、器が選ぶのだ。ゆえに! 候補者には自動的にブレスレットとチョーカーがもたらされるのだよ」
きりりと可愛いシャルに告げる。
「実際に戦いが始まるのは候補者がすべてそろってからだ。俺はその間に大儀式のシステムを解析し、どうにか殺し合いにならないようシステムへの介入を試みる。だがさすがに神代の遺物となれば困難を極めるだろう。俺はそちらに集中せざるを得ない。あとは、任せたぞ」
「あに――じゃなかった、シヴァ! ありがとうございます!」
「ブレスレットを嵌めろ、シャルロッテ。そしてお前にふさわしい者を見つけ、チョーカーを渡すのだ」
「はい! 新たなる魔神さんの脅威から、世界を救うためにがんばります!」
そういやシャルの中では新魔神が出てくるんだったな。それはそれとしてみんなの天使ちゃんは今日も可愛い。
「こうしてはいられません!」
てかどこ行くの? ブレスレットとチョーカーを抱えて部屋を飛び出して行きましたが?
……まあ、あれだ。
そんなこんなで。
ここに、魔法少女戦争が開始されたのだ――。
さあ、これから忙しくなるぞ!
【現在の儀式参加者】 ※()内は宝石の色
[魔法少女] |[サポーター]
・シャルロッテ(ピンク) | ??
残り6枠――