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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第八章:魔法少女戦争(仮)が始まるの?
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ルシフェル・カードの行方(裏)


 ウラニスは王都を離れ、丘の上に聳える王城へと向かう。

 堅牢さで言えば王都城壁以上ではある。ただし戦時に利用が想定されているためここ百年ばかり、別荘の用途以外には運用されていなかった。


 しかし現状でも、外からの侵入を防ぐのと同等に、中からの脱出も困難だ。

 ゆえにその特性上、高位の魔法使いを監禁するのにも使われる。


 王城の地下深く。

 広々とした独房には幾重もの結界が張られていた。

 唯一の囚人は特殊な鎖でつながれている。魔力錬成を妨げる魔法効果が施されたものだ。


 ぺたりと腰を落とし、苔むした石の床をぼんやりと眺める覇気のない女。かつて艶やかだった黒髪はくすみ、瑞々しかった肌は枯れ、黒瞳から正気は抜けている。


 魔王を倒した英雄にして閃光姫の異名を持つ元王妃、ギーゼロッテだ。


「ひと晩でこの変わりようとは。魔神の依り代に選ばれたにしては脆いな」


 突然話しかけられたのに、ギーゼロッテは驚きもしなければ顔を起こしもない。


「殺すなら、早く殺してちょうだい……」


「ふん、諦めも早いときたか。残念だが、殺生は禁止されていてね」


「なら、何をしに来たのよ……。もう、話すこともないわ。ぜんぶ、話したもの。ええ、すべてよ。誰も信じないけれど、シヴァは……あの男はわたくしの……、殺したはずの、息子、で……、ぅ、く、ぐぅぅ……」


「興味を引かれる話ではあるが、あいにく今は時間が惜しい」


「だったら何をしに来たって言うのよ! 貴方は一体――ぐぼぁっ!?」


 ウラニスの片手がギーゼロッテの胸を突き刺す。


「実のところ傷をつけるのも許可されていないが、ま、後で治しておけば問題ないな。そう怯えなくても、なに、少し痛いだけだ」


 彼女の心臓を鷲掴む。


「なるほど、隠すなら自身の内側がもっとも理に叶っている。魔神(じぶん)が滅すればどうせ必要のなくなるモノなのだからな」


「ぐげ、ぁ、やめっづぁああぁあぁあああっ!」


 苦痛の悲鳴もお構いなしで、ウラニスは心臓の内側をまさぐり、そして。


 ズボッと。


 ギーゼロッテの体から腕を引き抜く。

 その手には、血に塗れた金属製のカードが握られていた。


(……ルシファイラめ、やはりこれを使って儀式を始めようと画策していたか)


 シヴァが回収した七枚のカードと同質ながら、その上層に変化がみられる。カードになにかしらの処置を施したのだろう。

 そして集めたカードをすべて合成し、超大規模な魔力供給源として使用する。

 かの魔神の特性と、このカードがそろって初めて実現する方策だ。


 ウラニスは自身が震えているのに気づいた。


 ルシファイラの策におののいた、のではない。

 このカードそのものを手にしてようやく知り得た、その真なる姿に戦慄したのだ。


(なんの〝色〟もない神代の魔法。無属性魔法の使い手だとは知っていたが……)


 レベルが違う。まさしく『桁』が、だ。

 このカードに内在する魔力はとうてい計り知れるものではなかった。


(これが、ただの『結界』魔法だというのか。いや、しかし……)


 ノイズが多く、これ以上は解析ができそうにない。

 それもこれも――ウラニスは、石の床で悶えるギーゼロッテを見やった。


「ぎ、はっ、ひ……ぁ、れ……? 生ぎ、てぅ……?」


「言ったろう? 殺すのは禁止されているとな。死なない程度に回復しながらカードは回収させてもらおう」


「…………は?」


「ルシファイラに憑依されているときの記憶もあるのだろう? 奴が集めたカードは六枚。残りの五枚も確認させてもらうぞ」


「ぃ、ゃ……め、て……」


 ウラニスは表情を変えず、今度はギーゼロッテの左太ももに手刀を刺す。

 以降、断末魔の叫びにも似た絶叫を聞き流し、残る両腕と両脚、それと腹から、ついに六枚すべてのカードを抜き取った。

 足元に転がるギーゼロッテはヒューヒューと、か細く呼吸するだけだ。


(ちっ、これもダメか。けっきょくすべてルシファイラの手が入っている)


 だからカードそのものを解析するにはノイズが邪魔して正しく行えない。一方、彼女の加工した術式を見るに、


(純粋に魔力源としてこのカードを扱っていたのか)


 それだけの魅力があるのは理解できる。が、やはりもったいないと感じてしまう。


(ここが限界か。だがシヴァ(やつ)の魔法の正体はいずれ必ず――)


 カードを睨みつけるようにして決意を抱いたそのとき。


「なにをやっている?」


 驚きを悟られないようゆっくり顔を上げると。


 黒い仮面に黒い装束。とてつもない魔力をまとった男、シヴァが立っていた――。



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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

― 新着の感想 ―
[一言] う、右手が疼く
[一言] アニメ二期はまだか・・・
[良い点] シヴァの魔法の正体も何も神様のうっかりなんですが・・・。何も重要な事実の無い事にこのシリアスで怪しいキャラが関わるとこんなに面白いんですね。
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