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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第七章:対魔神戦線
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窮地の魔神


 宣戦布告の一撃は、シヴァが用意した戦場を粉々に打ち砕いた。


 にたりと(わら)ったルシファイラの美貌、その頬に亀裂が生まれた。あまりに強大な魔力行使は人の身には耐えられない。


「次は貴方の体を粉砕してあげる」


 しかしお構いなしで、無数の魔法陣を虚空に展開すると、数多の魔法弾を撃ち放った。

 四方八方、上空にいるシヴァに対してはあらゆる方向から襲いかかる。ひとつひとつが王都城壁に穴を穿つ威力であり、互いに衝突すればさらに爆発力を増す。


(さすがのシヴァでも、山をひとつ消し去るだけの攻撃を受ければ)


 肉片ひとつ残らないはずだ。

 やっただろうか? 爆音が止み、風が煙を流していく。


「う、そ……」


 信じられないものを見た。

 シヴァなら転移魔法が使える。その隙を与えまいと速攻を仕掛けたものの、無事で済むのは避けた場合だけ、と高を括っていた、のに。


「あれを受けて、無傷ですって……?」


 シヴァは動いていなかった。

 先ほどと同じ姿勢で、傷どころか汚れてすらなく佇んでいる。


 シヴァは転移魔法を応用した特殊な防御魔法を操る。別の時空へとつながる『穴』を開け、そこに攻撃魔法を吸いこむものだ。


(使っては、いたわ。でもそれで防げたのは一部だけ。ほとんどの魔法弾は、別の防御魔法で弾かれていた)


 爆発の最中に垣間見た、いくつかの防御魔法。

 そのすべてが、初級クラスの防御魔法に思えたのは勘違いだろうか?


(そんなはず、あるわけがないわ!)


 そう、あり得ない。入門的な防御魔法は理論上、たしかにいくらでも硬くできる。しかし硬度を上げれば上げるほど、必要となる魔力は飛躍的に増大していくのだ。

 そんなもの、三主神でも到底無理な話だった。


 何かしら特殊な防御魔法を操るらしい。となれば防御に徹した彼の守りを突破するのは容易くないだろう。


「ならば!」


 愕然としている余裕などない。ひとつがダメなら次だ。


 ルシファイラは剣を握って突進した。

 どのような防御、どのような絡繰りがあったとしても、


(それが『魔法』であるのなら、この剣で断ち切ってあげるわ!)


 今できる最高速度で肉薄し、これ以上ないほどの力で聖剣を振り下ろす。


 ヒュン……。


 手応えはない。しかし目の前のシヴァの姿は、脳天から真っ二つに分かたれていた。


(今度こそ、やったわ)


 終わってみれば呆気ない。確かにシヴァは強かったが、その出で立ちや言動の異常性で過剰に評価していたに過ぎなかったのだ。


 全力で――いや全盛期の八割程度の力であったとしても、正面から力押しで戦えばこの結末は当然だった。

 けっきょくこの男は虚構の――


「――待って。手応えが、ない?」


 それは、おかしい。

 魔法術式を切り裂くのに手応えがないのはわかる。

 けれど確かにシヴァは真っ二つになっているのに、その肉体を両断した感触がまるでなかったのはおかしいのだ。


「はははははははははっ!」


 二つに分かれたシヴァの向こう、耳障りな哄笑に視線を移すと、そこには同じくシヴァの姿が――。


「残像だ!」


 真っ二つになった方のシヴァがふっと消える。


「なるほどなー。『魔法術式切断』ってよくわかんなかったけど、首輪の効果や謎時空への扉も切れちゃうんだな。さすがに驚いたぞ。念のため避けといて正解だったな」


「な、ぜ……それを……?」


「そりゃ戦う前の情報収集って大事だろ。魔神なんてのを相手にするんなら特に、な」


 事前に王妃の部屋に忍びこんで聖剣の情報を解析したとシヴァは続ける。


「聖剣を入れ替えたり細工したりだとバレちゃうかもだからな。でもま、この『残像だ!』ってやつ、一回やってみたかったからちょうどよかったよ」


 シヴァが前傾姿勢を取る。


「んじゃ、今度はこっちからやらせてもらうぞ」


「ひっ……」


 身構える、というよりは咄嗟に顔を守るように両手を持ち上げる。

 ぴしり、ぷしゅっ、と。

 皮膚が破れ、鮮血が飛んだ。


(マ、ズい……)


 これ以上はもう、肉体がもたない。どんな攻撃であろうと、今の自分では防ぎきれない。相手がシヴァならなおさらだ。

 絶望的な状況の中、しかしルシファイラは――


「ん? なに笑ってるんだ、お前」


 勝利を確信していた――。



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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

― 新着の感想 ―
[一言] シヴァ「魔神さん、ざぁーこ♡」
[良い点] 確かに、残像だ、というヤツはカッコ良いですよねw 事前調査済みというのも案外にしっかり準備してきたね、ハルトさん。 でも魔神は未だ余裕がありそう、やっぱり油断出来ない相手かも。
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