日曜の朝によく見る癒し
癒やしが必要だ。
疲弊し、乾いた心を潤す癒やしが。
ただそれを求めて、俺は裏方仕事をこなしていた。
そして! ついに!
わーっと、これまでにない大きな歓声がこだまする中、偽シヴァの合図でとあるチームが入場してきた。
まず登場したのはなんかすごいカワイイ女の子だ。やだシャルちゃんマジ天使。
並んでユリヤも現れた。シャルと談笑しつつ、実にリラックスした雰囲気だ。
その後ろから無表情のウラニスが、さらにイリスも続く。
四人とも運動着ではなく学生服に身を包み、闘技場の中央に進み出た。
で、対戦相手はよー知らん四人組。
紹介もそこそこに、両チームが距離を取って相対した。
対戦相手は畏縮しっぱなしだ。まあ実力差がありすぎるもんな。
一方、シャルとユリヤは目を爛々と輝かせている。でもウラニスはどんよりしているな。そしてイリスは決意に満ちた表情で異彩を放っていた。
「あの、イリスさん。本当に無理しなくてもいいですからね?」
「無理はしていないよ。ただボクは自身のイメージを払拭したいだけなんだ。『空気の読めない女』という悪しきイメージをね」
くわっと目を見開いて決めゼリフっぽいこと言うイリス。驚いたな。わりと気にしていたのか。
「さあ! いくよ、みんな!」
何かを吹っ切ったようでいて、照れが頬をほんのり赤くするも、イリスは片手を突き上げて再び叫ぶ。
「フレンドパワー! エクスプロージョン!」
高々と誇示する手首につけたブレスレット。中央に嵌められた宝石っぽい何かが輝いた。
青を基調としたまばゆいばかりの光が、手首から体のラインを浮き彫りにさせながら広がっていく。首から下をぴっちり包み、全身タイツを着てるみたいになった。
実現してみて思ったんだが、これリアルにやるとめっちゃセンシティブじゃありません?
とくにイリスは出るとこが出まくっている体型なので、一部からお叱りを受けやしないだろうか? 具体的には『不正とか反道徳を絶対許さないウーマン』こと学院長とかに。
というわけで。
「なんだよ、光が強くて見えねえぞ」
「イリス様……ふつくしい……」
女性限定での公開にしました。
さておき、青っぽい光が弾けると、
「友愛の戦士イリス! ば、爆誕!」
青系統の魔法少女が決めポーズで現れた。顔真っ赤やん。まだ照れがありますねえ。
というかこっちまで恥ずかしくなってきた。これが共感性羞恥ってやつか。
パブリックビューイングの会場が地鳴りのような歓声に包まれた。男女問わず興奮しまくっております。こいつわりと人気者なんだよなあ。友達いないとか言うくせに。
「ほらウラニス、次はあなたよ」
「……」
渋々というか苦々しいといった表情のウラニス君も変身を始めたわけだが、正直興味ないので結果だけ。
黒系統の魔法少女姿に大変身。いちおう男ってことなので短いスカートの下は太腿ギリギリの短パンにしてみた。ショタみがある。
ウラニスはやっちゃったら吹っ切れたのか、いつもの無表情に戻っていた。一部から熱狂的な声援が飛んでおりますねえ。
さてさて。
「じゃあ、次はわたしね」
ノリノリで前に進み出たのはユリヤさん。シャルと同じ短めのステッキを高々と掲げると、
「ピュリティーパワー! エクスプロージョン!」
口上とともに飛び上がった。跳ぶのではなく飛ぶ。天高く舞い上がるや、ステッキに嵌めこまれた宝石っぽい何かが黄金の光を撒き散らす。
放射状に広がった金の帯が、手首とか胸元とか腰回りとか足首辺りにまとわりついて、これまた体のラインにぴっちり貼りついていった。
背丈や顔つきは年相応のお子様なんだけど、胸部の主張が年不相応にすぎるので、やっぱりとてもセンシティブ。これ放送していいんですかぁ?
最終的には光がポンと弾けて消えて、金色の魔法少女が爆誕しました。
こちらも地響きがすごい。てか変身をあっさり受け入れてる生徒諸君は適応力ありすぎませんかね?
そしていよいよカワイイの時間だ!
「イモータルパワー! エクスプロージョン!」
浮き上がって魔法のステッキを振るうと、ピンクを基調としたカラフルな粒子が振り撒かれた。謎の後光も放射状に現れて、明らかに他のメンバーに比べて演出が過多であるが仕方ないね可愛いもんね。
目を閉じ、手足を自然に広げるシャルロッテちゃんの身体が今度は暗転。星々が煌めき、銀河が回っている映像がプロジェクションマッピングみたいに少躯を彩った。
幻想的な姿にピンクの粒子が集まってくる。星々を覆い隠すと愛らしく弾け、ふりふりの衣装に生まれ変わった。
「イモータル☆シャルちゃん、爆誕です!」
きゅぴーん♪ って音も付けましたが何か?
正義の魔法少女イモータル☆シャルちゃんはユリヤの隣にシュタッと着地。二人が背中合わせになると、イリスとウラニスは二人の外側に駆け寄った。
「死の運命をぶちのめします♪」
「穢れた心を浄化するわ♪」
どどーんっ! と背中で大爆発が起こったように見える演出。
わーっと歓声がいっそう大きくなった。
大興奮の生徒たちに対し、外からいらっしゃったお偉いさんたちは唖然としている。学院長も「これになんの意味が……?」と困惑気味だ。様式美と理解してほしい。
そんな感じで準備は完了したので。
「それでは両チーム、試合! 開始ィ!」
偽シヴァが試合の開始を宣言すると、さっそくシャルたちのチームが動いた――。