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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第七章:対魔神戦線
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知らない間の退場者


 アレクセイがヴァリを見送ると、


「お疲れ~」


 のんびりした口調で全身真っ黒な男が現れた。


「シヴァ、これで残るカードはあと一枚。エンディングはきちんと考えているのだろうね?」


「ん? まあな。つっても状況次第ではあるんだけど、ね」


 このところ、シヴァは砕けた口調で応じることがある。こちらを信頼してくれている、のではなく、おそらく緊張が解れたときに〝素〟が現れるのだろう。


(そう、〝素〟の彼はこちらなのだろうな)


 ふだんがあまりに仰々しくわざとらしかったから、演技しているのは明らかだった。

 その意図が正体を隠すためならば、あまりにお粗末。

 しかし本人は無自覚な様子ながら〝素〟を見せておいてなお、取り繕わないのが不可解だ。しかも――。


「そうだよなぁ、状況によってはあいつと直接やんなきゃなんだよな。不確定要素は全体的に排除しとかないとな。うん、アレとかコレとかちゃんと調べとくか。面倒だけど」


 一人で納得した風のシヴァはやはり、


(あからさまに〝彼〟を想起させるほど似ている)


 実力が未知数――限界が測れないとの点でも共通していた。


 多くの状況証拠が『二人は同一人物』と示しているものの、


(二人が同時に存在するという矛盾が、決定的な否定要素となっている)


 しかし、それもまた『実力の上限が測れない』ゆえに反証できるかもしれないのだ。

 少しカマをかけてみるか。


「そういえば先日、ゴルド・ゼンフィス辺境伯が私の屋敷を訪ねて来たよ」


「……ほう?」


 空気が、あからさまに変わった。


「グーベルク家の立場を明らかにしたい、とね。どうやら、本格的に王妃を糾弾する腹積もりのようだ」


「……お前はどう答えた?」


「もちろん王妃の横暴は許しがたい。しかし魔神ルシファイラが彼女の中で力を増している現状、表立って協力すればこちらの命に関わるのでね。明確な回答は避けさせてもらった」


 今さら命は惜しくない。

 だからこの場のやりとりさえ、今の自分は楽しんでいる。


「とはいえ、君がなにかしら動いているのなら話は別だ。もしゼンフィス辺境伯と示し合わせているのなら、協力は惜しまないつもりだよ」


「……」


「図星か。どうやら君は辺境伯と強いつながりがあるようだが――」


「そこまでにしておけ」


 静かな声音はしかし、押しつぶされるほどの〝圧〟があった。


「俺に興味を持つのは構わないが、ゼンフィス家に深く関わろうとするなら――」


 続く言葉は予想できた。

 だから聞くまでもない。


「ああ、肝に銘じておこう」


 今さら命は惜しくない。

 けれど強烈なまでの〝生〟を実感できる今を、手放したくはなかった。けれど――。




「――っ!」


 シヴァを見送ってのち、頭の奥深くでずきりと痛みが生まれた。


「これは、まさか……」


 くぐもった声がする。何を言っているのか判然としないが、


「もう、これほどまでに……」


 何をされるかは、理解してしまった。


(私はここで退場か。しかしせめて、見物くらいさせてくれてもいいのではないかな?)


 もはや声を出すのもままならず、儚い希望を思い描いてみる。


(そう、か……。感謝、す……る…………)


 意識が霧に包まれる。やがて彼の奥底で、ぷつり、と音が鳴った――。



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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

― 新着の感想 ―
[良い点] 確かに、シヴァさんは時々に演技が凄く雑ですよねw しかしシリアスするべきの時には中々頭が冴えるです!
[一言] ぬぬぬ?
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