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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第二章:子ども時代のすったもんだ
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骨骨軍団、襲来


 街道近くの森の中。雲間に覗く月の下、ちょっと開けた場所で召喚魔法陣を取り囲み、呪文を口ずさむローブをまとった方々。


 めちゃくちゃ怪しい!

 

 父さんが安全確保のために何か命じたのかと考えたけど、城では見たことない人たちだし、なにせ禍々しすぎる。

 草葉の陰から様子を窺っていた俺は、思いきって声をかけることにした。

 

「すみません。何をしてるのですか?」


 突如現れた全身黒ずくめの不審者に、当然のごとくビクッとする皆さん。声で正体がバレないように、電子音声っぽくしてるしね。


「な、何者だ!?」


「あ、俺は通りすがりの者で、怪しくないです。あとでゴルド・ゼンフィス辺境伯に確認してもらえれば――」


 謎の正義のヒーローをやっていると、領内を守る兵士さんたちと出くわすこともある。当初こそ警戒されまくりだったが、今では協力プレイをしたりと友好的だ。

 領民からも『黒戦士』として親しまれている。

 父さんも黒戦士の正体は知らないけど、黙認してくれていた。

 

 けど――。

 

「貴様、辺境伯の手の者か!」


 こいつらは、黒戦士おれを知らないらしい。しかも、

 

 バンッ、とすぐ横で音がした。

 

 見れば、ローブ姿の一人が俺に片手を向けている。魔法を、撃ったのか。

 

「な、なんだ? 今どうやって私の魔法を防いだ?」


 いちおう防御用の結界が俺を覆っている。突然魔物に襲われたりしたら怖いからね。

 

「何をしている! 早く始末しろ! 絶対に逃がすな!」


 リーダーらしき男が叫んだ。みんな同じ格好してるから区別がつかん。

 

 でも、そうか。有無を言わさず『始末』ですか。

 

 魔法陣を囲んでいたのが一斉に俺へ手を向けた。さっきまでとは違う呪文を口ずさむ。

 

「ぎゃ!」「ぐわ!」「ごっ!?」「ぐげっ」などなど。


 魔法を放つ前に吹っ飛ばされる皆さん。遅いよ。先に透明ブロック結界をぶつけちゃったよ。

 

「き、貴様がやったのか!? くそ、こうなったら……」


 リーダーらしきローブおじさんは、地面に手を付けた。ぶつぶつ何事かつぶやくと、魔法陣がぴかーっと輝きを増す。

 

「いでよ、ナイト・スケルトン!」


 魔法陣がさらに光る。

 そして光の中からガチャンガチャンとたくさんの、極端に色白で痩せている方々が現れた。

 

 訂正――骨だ。

 骨だから白いし、肉がないからひょろひょろですよね。骨格標本みたいなのが、鎧を着て剣やら盾やら槍やら弓を持っていた。

 その数、五十を超える。

 

「奴を殺せ!」


 ローブおじさんが叫ぶと、側にいた骸骨兵がカチカチ歯を鳴らし、剣を振り上げて、

 

 ズバッ。「うぎゃーっ!」

 

 おじさんを斬ってしまったぞ?

 

「な、何をしている!? 私ではない。あいつだ、あいつを殺せ!」


 しかし骸骨君は歯をカチカチ鳴らし、怒ったようにおじさんに斬りかかる。もはやコントである。

 

 おじさんは目の前に小さな魔法陣を作って防ぐ。別の誰かが寄ってきて、彼の傷に治癒魔法をかけた。


 とたん、色めき立つ骨骨軍団。ローブ姿の男たちにみんなして襲いかかった。

 

「やめろ、やめんか! く……、なぜだ? どうして命令に従わない? 召喚に、失敗したのか?」


 あー、うん。たぶん、俺のせいだ。

 

 魔法陣が光ったとき、杭みたいな結界をいくつか打ちこんでおいた。ちょっと邪魔をしようとしただけなんだけど、まさかこういう結果になろうとは。


 乱戦の様相を呈してくる。

 しかし骸骨兵たち、強いな。小チームを組み、弓と槍で牽制しつつ、剣士が側面を襲う。相手の攻撃魔法を盾持ちが防ぐ。

 小チーム同士の連携も見事で、ぶっちゃけ一方的な展開だ。

 

 この状況で、俺は何をすべきだろうか?

 

 考えていると、弓を持った骸骨兵と目が合った。いや、あちらさんに目はないんだけど。

 身構えるも、骸骨君はカチカチ歯を鳴らし、遠くで魔法を撃とうとしたローブの男に矢を放った。


 あれ? 俺を襲ってこないぞ? ぼけーっと突っ立ってるから敵認定されてないのかな? もしくは命令を逆に遂行する的な不具合とか?

 

「だ、ダメです隊長。我らでは、あの数のナイト・スケルトンに対抗できません」


 事実、半数が倒れて全滅は時間の問題だ。

 でもそれは困る。

 ローブたちが何者で、目的は何か、話を聞かなくてはならない。

 

「できれば殺さないでほしいんだけど……」


 ぴたり。

 骨骨軍団の動きが止まった。

 

 カチカチカチカチッ!

 

 一斉に歯が鳴る。やかましいったらない。

 

 そしてまたローブたちに襲いかかったのだけど……殺して、ないな。剣で斬りつけるのではなく、叩いていた。槍もひっくり返して刃のないほうで突きまくる。弓は明確に足を狙っていた。


 これって、もしかして……。

 

「勝ち鬨だ、歯を鳴らせ!」


 カチカチカチカチカチカチカチカチッ!


 やらせといて申し訳ないが、めっちゃやかましいな!

 

 てか、やっぱりだ。間違いない。骨骨軍団は、俺の命令に従う模様。

 

 でも俺、ローブたちを襲えとは命じてないよ? 俺を殺そうとしたから怒ったのかな? で、そのおじさんと同じ格好をしてる奴らを敵認定したのか。

 理屈は通る。

 

 でもなんで俺の命令に従うんだ?

 召喚用の魔法陣に俺の結界を打ちこんだからか。

 うん、理屈がまったくわからん。

 

「おのれぇ!」

「た、隊長!? どちらへ行かれるのですか!」


 隊長と呼ばれたおじさん(最初に斬られた人)が、すたこらと逃げ出した。ものすごいスピードで森の中へ消える。

 彼に続けとばかりに残りも逃げ出したのだが、

 

「ぶげっ!?」

「なんだ、透明な壁が?」

「こ、こっちもダメだ!」


 悪いけど、君たちは(・・・・)逃がさないよ。上にも地面にも透明結界で閉じこめた。


「んじゃ、その人たちは捕まえておいてね」


 カチカチとよいお返事で、骨骨軍団はいっそう張りきってローブ男たちを追いかけ始めた――。

 

 

 

 俺はその場を離れ、街道に出てきた。

 眼前には半透明の画面みたいなのが浮いていて、付近の地図を映している。地図上には、赤いマークがぴこぴこ動いていた。

 

「街道を走るんじゃなくて、街道を越えて森の奥へ向かってるのか」


 真っ先に逃げた隊長には、追跡用の結界をこっそり貼り付けていた。

 

 魔法陣のあったあの場所には、食事をした形跡も寝るためのテントもなかった。つまり連中の拠点は別にある、と俺は考えたわけだ。

 

 ので、隊長はわざと逃がし、案内してもらおうと目論んだ俺。


 赤いマークが停止した。

 森の中にある、これまた開けた場所っぽい。


 地図を消し、新たな結界を作る。おじさんに張り付けた追跡用結界とを〝結〟んだ、矢印型の結界だ。

 矢印がぶるぶる震えてピシッと俺の右手方向を指し示した。この先に、逃げたおじさんがいる。

 

 

 ――で。

 

 

 結果的には、その場所は拠点ではなかった。

 そこでも召喚魔法陣があって、石の巨人が待ち構えていたのだ。でも魔法陣に結界を打ちこんだらやっぱり俺の命令に従うようになった。そう意図したわけじゃないんだけど、命令権を奪えるらしいな。不思議。

 ま、おかげで捕縛がはかどったよ。

 

 というわけで、さっそく尋問を始めるとしよう――。


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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

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