光明が見えても慌ててはいけない
眠気に耐えながら質問してみる。
「でも、シャルは万能タイプか中・長距離型ですよね? 俺は?」
「キミもシャル君も万能型だと判断されているよ。魔法体術と射撃の両方で活躍しちゃっているし、堅牢な防御壁を生み出すような支援までできるときた。なにより学業成績がとんでもなく良いから、間違いなくリーダーの枠に放りこまれてしまうね」
断言されてしまった。
まあシャルは治癒系以外なんでもできるし、それも俺が魔法具作れば解決だしなあ。
「じゃあ、二人とも同じリーダー枠に振り分けられた時点で、どんな不正をしようが絶対に同じチームにはなれないってことっすね。はぁ……」
やだ、ため息出ちゃった。
でもマジでこれ詰んでるよな。
ランダムっても、どうせクジ引きとかだろうから不正しまくれると思ったんだけどな。
不正は絶対に見逃さないウーマンに対しても、俺は今まで何度も小賢しく立ち回れていたのに。
「とまあ、こんな感じの話を学院長としていたら、キミはものの見事にがっくり肩を落として諦めていた、というワケだ。今のようにね」
その物言い、カチンと来たけど逆に希望の光が灯るのも感じた。
「まだ手はあると?」
「簡単だよ」
ここでまたもお茶をすすり始めたティア教授はきっと、俺に考える時間を与えたのだろう。
ちょっと考えてみた。
わりと簡単だった。
「俺は中・長距離特化型。接近戦を挑まれたら仕方なく慣れない体術で対応します。単独行動が好きな狼タイプなのでチーム戦の指揮なんてとてもとても……」
「いやあ、感心するねえ。キミってば心臓の鼓動みたいに自然と嘘を吐き出せるよね」
呼吸どころか自律神経レベルの嘘つきだと認定されてしまった。嬉しくないが喜ばしい。
「んじゃ、さっそく学院長に俺のタイプをアピールして――」
「待ちたまえよ」
なんで止めるのん?
「学生のキミが直接言ったところで、学院長の考えは覆らない。そういった話をたった今していたんだけどなあ」
そうだったっけ? そうだった気がする。
「それじゃあ――」
「ワタシでもダメだよ」
そっか。嫌われてるもんね。
「相性が悪いだけだよ」
もしかしてホントに心読めてる?
「んじゃ誰に言ってもらうんっすか?」
じとーっと俺を見やるティア教授。
まあ、話してるうちに気づいてはいたんだよ。でもさ、
「シヴァだと俺との関係を疑われませんかね?」
むしろ今まさに疑われている真っ最中な気がしてならない。
その状況でシヴァがのこのこ出ていって、唐突に『ハルトはリーダーに向いていない!』などと主張したらますます疑惑を深めてしまうのでは?
「そこはやりようさ」
ティア教授はローテーブルに乗り上げて身を寄せてきた。ボケるのもアレなので耳を向けると、ごにょごにょごにょ……。
「なるほど。それなら自然と言えば自然、なのかな?」
「ま、多少強引な部分はあるけど、シヴァ君はこれまでこちら側に何度となく関わっているからね。学院長がシヴァに身構えている状態なら、キミはいつものように押し通せばなんとかなるなる!」
えー? ホントにござるかぁ?
「ま、要は君がリーダー向きではないと判断されればいいんだ。そこら辺の交渉はワタシに任せてほしい」
「さっき相性が悪いと言ってませんでした?」
「それは学院長が相手をワタシだと認識した場合だよ。一目置く相手になら、ワタシは彼女の弱点を突ける」
あんたは一目置かれていないんだね、とは言わないでおいたけどたぶんわかってそう。
まあ、やるとしたらこれしかなさそうだし、いっちょやってやるか!
そんなわけで。
俺は全身真っ黒な出で立ちで部屋を飛び出した――。