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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第七章:対魔神戦線
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不思議ちゃんのさらなる不思議


 金色の目をした少女はリザの変化をまるで気にした様子がない。


「まさか人の社会でふつうに魔族が暮らしているなんて……って、違うわね。ふつうに暮らせないから隠しているのか」


 リザの警戒が最大まで跳ね上がった。


「ストップ! ストップですよ、リザ。まずはお話を聞きましょう。ど、どうしてリザが魔族だとわかったのですか?」


 どうにか抑えるも、周囲の気温はいっそう下がる。


「頭に二つ短めの何か、背中側の腰のあたりからも長く伸びた何かがひとつ。角と尻尾ね」


「見えるのですか?」


「いいえ。実物が見えるわけではないの。でもあなたの髪飾りと同じような術式――結界が張られているのは見えるわ」


 銀髪の少女は興味深そうに続ける。


「光の屈折を操作して背景に溶けこませているのね。ふふ、面白いわ。よくそんな術式が思いつくわね」


「はい、兄上さまはとてもとてもとーーーっても、すごいのです!」


 きゃっきゃとはしゃぐシャルロッテに気が緩みかけるも、リザは少女を睨みつけた。疑問は解消されていないのだ。


「そう怖い顔をするものではないわ。せっかく可愛いのに台無しよ?」


「ならまずはその殺気(・・・・)を消して」


 首を傾げたのはシャルロッテ。

 銀髪の少女はにっこり応じる。


「やっぱり魔族(あなた)はそう感じてしまうのね。でも違うのよ? これは殺気じゃなくて、ただの好奇心。高揚しているだけなの」


「高揚……?」


「そう。わたしに殺意や害意はないわ。だって殺したり傷つけたりって楽しくないもの。ただ興味の対象に抱くこの感情を、魔族や魔物はどうしてだか殺気と捉えてしまうのよね」


 困ったわー、と続ける少女に困った様子は微塵もなく、相変わらずニコニコと真意がつかめない。


「まあ、原因があるとすればわたし自身よね。そもそもわたし――」


 どう対応すべきか判断できないリザの耳に、思いもよらぬ言葉が飛びこんできた。



「たぶん〝普通の人間〟ではないもの」



「「「え?」」」


 謎の少女以外が声を合わせる。


「素体はわたし、ユリヤ・マルティエナという一人の人間ではあるのだけど、人の身に限界を感じてあれこれ弄くっていたら、いつの間にか人から外れちゃった気がするのよね。さっきの自己防衛魔法ね、術式は服やアクセサリーではなく、わたし自身の内側に刻んでいるの。それ以外にもたくさんね」


 ユリヤと名乗った少女は、歌うように続ける。


「要するにわたし、魔法具でもあるのよ。わたし専用の、ね」


 しれっと激重なことを言われ、シャルロッテは硬直した。

 リザとイリスも別の意味でどう対応すべきかわからなくなり、言葉が出ない。


 そんな三人の様子に気づいているのかいないのか、ユリヤは「あっ」と何かに思い至ったようだ。


「そういえば自己紹介していなかったわね。今ついでに名乗ってしまったけれど、わたしはユリヤ・マルティエナ。今日からこの学院に転入してきた留学生、になるかしら」


 あなたは? と笑みを投げられ、シャルロッテは背筋を伸ばす。


「わたくしはシャルロッテ・ゼンフィスです。わたくしもついこの間、編入してきました一年生です」


「まあ、そうだったのね。わたしも一年生よ。いろいろお話したいのだけど、わたし、これから人と会わなくてはならないの」


 残念だわーと、またしてもあまり残念そうでない笑顔のまま。


「授業で会ったらよろしくね、シャルロッテ」


「はい! よろしくです! あ、それと、こちらはリザ。兄上さまの従者として、この学院に通っています」


「よろしくね、リザ」


「…………よろしく」


 屈託のない笑みを向けられても、やはりいろいろ納得がいかない。


「そしてこちらはイリスさん、わたくしと同じ一年生です」


 ユリヤはにっこり微笑んで、


「そう、あなたもなのね」


「? ボクも、とは?」


「ううん、ただリザと同じなんだなあって。頭では理解していても、本能が邪魔をしてしまうのね。こればかりは慣れてもらうしかないわ」


「言っている意味が、わからないのだが……」


 いや、実のところわかっている。彼女はきっと――。


「これ以上はやめておくわ。あなたとも仲良くしていきたいもの。それじゃ、わたしは失礼するわね」


 ユリヤは三人の横を通り過ぎ――



「「「――ぇ?」」」



 みな、思わず漏れ出たのはそれだけだった。

 シャルロッテもリザもイリスフィリアも、ただ二人(・・)が通り過ぎるのを見送ることしかできない。


 そう。二人だ。


 彼女に続いて、〝男子生徒〟が歩いていく。

 たった今、偶然歩いてきたのではない。きっと今の今まで、ずっとユリヤの背後に控えていたはずなのだ。

 そう確信したのは、


「ねえウラニス、こっちで合っていて?」


 ユリヤが振り向かずに話しかけたのを聞くまでもなかった。


 彼女と同色である銀の長い髪が襟元でひとつに結ばれている。顔立ちも、金色の瞳も同じなら、「ああ」と応じた声までユリヤとそっくりそのままだった。

 男子用の制服を着たユリヤと言われれば誰もが納得する容姿。唯一、男女差を明確に示す胸の厚みだけが異なっていた。


 もうひとつ、あえて挙げるとすれば。


 ウラニスは三人に一瞥すらなく、冷たい視線をユリヤの背に突き刺していた――。



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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

― 新着の感想 ―
[一言] 天界からの?ハルトの調査に来たのか 魔道具とか、術式は多少アレンジは違うけど 元は、同じとかですか?
[良い点] 魔導具であり人間であり、ちょっとカッコ良い設定かもw 研究者気質、ティア先生とキャラ被った、でもリザさんより強そうなので、強化版ティア先生みたいな人物でしょうねw
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