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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第七章:対魔神戦線
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運命の出会いはそれほど劇的でなかったりするかもしれない


 不可解な事件が起こるとき、魔神復活を可能とする秘密カードが姿を現す。


 あるときは深い森にある山荘で。

 またあるときは王都の近くを流れる川で。

 さらにあるときは外界から閉ざされた修道院で。


 初回の某貴族所有の邸内、夜霧に出没する露出魔に続き、シャルロッテたちは不思議な事件の情報をつかむたび、あちこちに出向いて騒ぎを起こ――難事件を解決してきた。


(ええ、とくに川面を疾走する幽霊船とのカーチェイスならぬシップチェイス? は緊迫感にあふれていました)


 鼻歌交じりに、跳ねるように、学内の廊下をシャルロッテは歩いていく。


 日々が充実している彼女はいつも気分がいい。けれどいつも以上に気分がいいのは、目下の最優先課題が順調に消化できているからだ。


(一昨日、イリスさんが育った修道院でゲットした右腕のカードで五枚目。残るは左腕と頭部の二枚ですね)


 魔神復活を阻止するために必要な七枚の不思議なカード――仮称『ルシフェル・カード』。


 今のところすべて自陣営が入手している。

 あまりに順調。

 順調であるがゆえに、不安もあった。


(魔神さんたちがこの状況を放置するはずがありません。起死回生、一発大逆転を狙ってなにか仕掛けてくるかもしれませんね。いえ、きっと仕掛けてくるはずです!)


 身が引き締まる思いと共に、形容しがたい高揚が湧き起こってきた。

 しかしながらもうひとつ、寂寞にも似た思いもまた、裡に燻るのを自覚していた。


(魔法少女には、互いに切磋琢磨して高め合える存在が必ずいます。でもわたくしには……)


 仲間はいる。

 イリスフィリアやマリアンヌ、フレイやリザ。なにより兄ハルトの存在は極めて心強くある。


 けれど対等な――仲間でありながらライバルでもある、そんな関係の誰かは今のところいなかった。

 要するに、魔法少女仲間が欲しいのだ。


 とはいえ、そう簡単に見つかるものでもない。以前、リザにお願いしたことがあった。断られはしなかったものの、リザはとても恥ずかしそうにしていたのを思い出す。


(やっぱりみなさん、魔法少女スタイルは好みでないのでしょうか?)


 歩みが緩んだところで、シャルロッテを呼び止める声がした。


「シャル、いいところで会ったよ」


 長い銀髪を後ろでひとつに結び、馬の尻尾のように揺らして駆けてくる女子生徒――イリスフィリアだ。


「イリスさん、わたくしに何かご用ですか?」


「正確に言えば君にではなくハルトに、なのだけれどね。さっきベルカム教諭に声をかけられて、『ハルト・ゼンフィスに至急学院長室に来るよう伝えてほしい』と頼まれたんだ」


「兄上さま、ですか」


「うん。でもボクはこれから配達のアルバイトがあって急いでいてね。申し訳ないけれどハルトを見つけたら伝えてもらえないかな」


 ハルトはおそらくティア教授の研究棟――から転移した先にある湖畔のログハウスにいるだろう。

イリスフィリアも研究棟へ向かっていた様子だが、そこまでも距離はある。急ぎの用事がある彼女は困っていたに違いなかった。


「わかりました。ちょうどわたくしもティア教授の研究棟に向かうところですので、兄上さまに伝えておきますね」


 本来なら通信魔法で伝えるべきだろうが、ハルトに会いたい衝動が勝った。仮に不在ならそのとき通信魔法で伝えればいい。


「ありがとう、助かるよ」


 では、と互いに会釈して、シャルロッテは踵を返して駆け出した、そのときだ。



「危ない! シャル避けて!」

「わわわっ!」



 シャルロッテは曲がり角から現れた人影にぶつかりそうになった。とっさにふわりと浮き上がり、身を捩ってひらりと避ける。

 すちゃっと着地。


「ふぅ、危なかったです……」


 イリスフィリアが注意してくれなければぶつかっていただろう。安堵したものの、きっと相手も驚かせてしまったに違いない。

 振り向き、謝罪すべく声を出そうとしたところで。



「すごいわ!」

「はへ?」



 きゃっきゃとはしゃぐ声音が鈴の音のような、天真爛漫な美少女がいた。


「今あなた、飛んだわよね? 跳ねたのではなくて、飛んだ、飛んだわ!」


 ぱっと見は自分と同じくらいの年齢だろうか、とシャルロッテは考える。

 長い銀髪が一部後ろで結ばれたハーフアップ。金色の瞳をらんらんと輝かせてまっすぐにこちらを見つめていた。学院の制服を着ているがその容姿に見覚えはない。


 ところで、ぴょんぴょん跳ねるたびにぼよんぼよんと揺れる胸元のそれは、もしかしてフレイと同じくらいではないだろうか?


 同い年、くらい……?

 シャルロッテは自らの胸元に手を当てて訝った――。



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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

― 新着の感想 ―
[一言] 盟友が誕生か? もしかして、お兄さんがアレこれと!?しちゃた
[良い点] ろりきょ… 二人目のプリ○ュア参戦、と
[一言] シャルちゃん、そのままの君が最高さ!
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