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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第六章:学院引きこもりライフ
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やっちゃダメ、と言われてなければ無問題


 アレクセイは勝利を確信していた。

 シャルロッテたちとは階層ひとつ分の差が開き、目的の宝の在り処までは残り二階層。しかもこの階層は少し先にある広間で終わる。そこには下への階段があるのだ。


 同じくフロアボス的な巨大な魔物が待ち構えているが、そう時間はかからないだろう。


 もうすこしだけペースを上げ、宝を得たら彼女らに遭遇しないよう帰るだけ。

 さすがにシャルロッテたちが猛スピードで追い上げても、アレクセイの頭の中では振り切れるとの算段がついていた。


 しかし――。


 ドドォン、と。

 地下を揺らす轟音が響いた。


「な、なに? この先で、爆発みたいなのが起きたようだけど……」


 ナンバー『12』が怪訝そうにつぶやく。


「急ごう」


 アレクセイは不確かな悪寒を感じつつ、走る速度を上げた。


 そうして、下へ進む階段のある大広間にたどり着いてみれば。


「直接対決で相手を倒せば、あとはのんびりお宝探しができますよね!」


 ピンクのひらひら衣装を身に着けたシャルロッテが、ふわふわ浮きながらずびしっとステッキを突きつけてきた。


(バカな……)


 アレクセイはぎりと奥歯を噛む。

 一階層分の差が埋まったどころか、先回りされているなど本来はあり得ない。


 だがその絡繰りは一目瞭然だった。


 広間の床にはがれきが散乱していた。巨大な岩が積み上がるその直上は、ぽっかりと大穴が開いている。

 どうやらフロアボスは岩の下敷きになったらしい。


(上階から床をぶち抜くとは、非常識にもほどがある)


 この遺跡は不思議な力で守られていて、壁や床、天井を破壊するのは至難の業だ。高い攻撃力を誇る〝至高の七聖武具〟を、これまた高い魔力を持った者でようやくできるかどうか。

 特に床――下から見れば天井は、階層間の距離が十数メートルはあるので突き破るのは不可能に近かった。


 しかし広間は地下洞窟の道中に比べ天井が遥かに高い。

 つまり階層間が比較的『薄い』部分である。


(あの、女魔族か……)


 白い布の塊が、精も根も尽き果てたようにぐったりと横たわっていた。

 彼女が全魔力を解放した最大魔法なら、この異常事態にもうなずける。


「まったく、無茶をしたものだ。しかし最大戦力を失って、私たちに勝てるのかな?」


 アレクセイは冷静さを取り戻す。


 ナンバーズは『7』のシャルロッテと『9』のザーラを欠いても総勢十名。みな学内でも実力の確かなエリートたちだ。


 対するシャルロッテチームはフレイを失い四人となった。

 フレイ一人でアレクセイ以外のナンバーズ全員を相手にする力があるものの、今は戦える状態ではない。


「ふっ、たしかに私の魔力はカツカツだが、すぐに回復してみせよう。五分……十分? まあ大負けに負けて二十分……いや三十分にしておくか。だいたいそのくらいで貴様らを蹂躙するに足る魔力をな!」


「フレイ――じゃなかった。交換留学生のフレッチ・ゼンポスさん、とりあえず今は休んでいてください」


「ぐぬぬ……絶対に負けるなよ!」


「はい! あなたの犠牲を無駄にはしません!」


「いやまだ死んでないぞ?」


 脱力するようなやり取りで逆に怒り心頭になったのか、


「ごちゃごちゃうるさいぞ、貴様ら!」


 巨漢のナンバー『4』が突進してきた。


「ふっ!」

「ぬっ!?」


 しかしイリスフィリアが彼の側面から襲いかかる。

 強烈な蹴りを、太い両腕で受け止めた。


「ほう? なかなかに重い。だがこの程度で俺を倒せるとわっ!? ぬ、この、どわっ!」


 イリスフィリアの猛ラッシュ。巧みな体捌きで相手を翻弄する。

 その様子をシャルロッテは満足げに見やった。


(さすがはイリスさん。スピードでは圧倒していますね。マッチアップ成功です!)


 とはいえすぐに勝負がつくとは思えない。接近戦の(かなめ)を欠き、人数的不利が加速した。


「君たちの負けだよ。たった三人で、私を含めて九人の相手ができるとでも?」


 アレクセイの余裕の笑みに、シャルロッテはにっこりと応じた。


「数のお話ならご心配なく。取って置きを出させてもらいます!」


 腰のポーチをごそごそまさぐり、取り出したのは折り畳まれた小さな布。


「そぉれ!」


 虚空に布を放り投げると、みるみる大きく広がって。


 ガシャンガシャンガシャンガシャンガシャン――。


「なっ!? ナイト・スケルトンだと!?」


 その数五十ほど。数で言えばナンバーズの五倍以上になった。


「ジョニ……じゃなかった。召喚獣のみなさんは『1』、『4』、『12』の方以外の相手をお願いします。これで実質は四対四。では、正々堂々と戦いましょう」


「どの口が言うのよ!」


 ナンバー『12』の叫びはしかし、


 カチカチカチカチカチカチカチカチカチッ!


 骸骨部隊の歯を鳴らす音に掻き消された――。


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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

― 新着の感想 ―
相変わらずシャル様は不敵で素敵です♡
[一言] 骸骨でも召喚獣 やってダメとは誰も言ってないので合法です 幼女王万歳!
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! シャルさん達の凄さは通常運転の感じでしょうw 寧ろ、普通に彼女達に付いて行けるアレクセイとナンバーズは想像よりずっと相当優勝だと思います!?まさかあんな残念…
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