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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第六章:学院引きこもりライフ
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最終より五つくらい手前の秘密兵器


 ティア教授の研究棟の一室で、マリアンヌお姉ちゃんとライアスが神妙な顔つきで座っていた。


「というわけで、アレクセイ先輩が秘密組織への参加を二人に呼びかけています」


 二人の正面に座る俺は淡々と告げた。


「待て待て待て。いきなり呼びつけて何を言ってんだお前は」


「ハルト君、『というわけで』の説明部分を端折らないでください」


 ですよねー。


「ごめんなさい。面倒だったので結論が先に口から出てしまいました」


「さっきからお前、姉貴にばかり話しかけてるよな? 僕は無視か?」


 そういうわけではないのだが、ここは年長者に語りかけるべきだと思う。


「えっとまあ、つまり――」


 俺は面倒がらずに、それでいて簡潔に〝ナンバーズ〟なる組織やその理念、そして主な活動が覆面を被っての会合だと説明する。


「なんで覆面を……」

「それはちょっと嫌すぎますね……」


 まずそこ気になっちゃうかー。わかるとも。


「しかし〝ナンバーズ〟ですか。シャルロッテちゃんから聞いてはいましたが、貴族派の子息たちがそのような組織を学内で立ち上げていたとは、残念でなりません」


 そういやシャルが話してたな。俺説明しなくてよかったじゃんよ。


「貴族派ってのは国王ちちうえを引きずり下ろし、王妃ははうえを追放して国を牛耳りたい連中だぞ」


「その多くがルシファイラ教団に入信しているか、すくなくともなんらかの関わりがあると噂されています」


「母上を騙して金を巻き上げてる奴らだ。ま、母上も利用してるんだろうけどな。で、その学内組織のトップが、僕たちを招いてるだって? はん、冗談だろ」


「何かしら企んでいるのは明白ですね。『平和的な解決を目指す』との言葉を、真に受けるわけにはいきません」


 なんか二人だけで話がさくさく進んでいる。楽でいいな。


「ただ、拒否するのも上策とは言えないでしょう。シャルロッテちゃん一人に内偵をお願いするのは心苦しいですし」


「あのちんちくりんだと逆に引きこまれちまうかもしれないからな」


 おおん? うちの可愛い妹がなんだって?


「な、何にらんでんだよ?」


「言葉遣いに気を付けなさい、とハルト君は言いたいのですよ」


 そんな生易しいものではないのだが、お姉ちゃんが窘めたのに免じて許してやろう。


「さて、私はこの誘いに乗り、中から彼らの危険思想を論破すべしと考えますが、ライアスはどうですか?」


「賛成だ。けど、僕は姉貴みたいに口が回るわけじゃない。下手すりゃ話がこじれて……って、今度はなんだよ? にやにやしやがって」


 へえ、わかってるじゃぁん、って顔だと思う。


「僕はあんま口出しせず、にらみを利かせるくらいにしとくか。てかお前は入らないのかよ?」


「俺は誘われていない」


 嘘だけどね。まあ断ったから結果的には入らないの確定ですもの。


「ま、ハルトを警戒してんだろうな。妹を先に引きこもうって魂胆か」


「ハルト君がいてくれれば、安心できるのですけれど……」


 ちらちらとこちらを見やるお姉ちゃん。

 大丈夫。シャルはあれでしっかり者だからね。マリアンヌ王女のサポートもあればこっちも安心だ。


 しかし万が一、ということもあり得る。

 監視体制は万全にし、シャルが傷つくことなどけっして許しはしない俺ですが、アニメに夢中になったりと油断なく過ごすのはたぶん無理。


「んじゃ、二人とも参加ってことで。直接アレクセイ先輩に言っといてください。それから――」


 俺はパチンと指を鳴らし、とっておきの秘密兵器を呼んだ。


「ハルト様に呼ばれてまかりこし! フレイです!」


 バーンとドアが開かれて、学院の制服に身を包んだ赤髪の女が現れた。


「こいつも一緒に潜りこませる。二人からお願いすれば、アレクセイ先輩も首を縦に振らざるを得ないだろう」


「いやいやいや! こいつ魔族だったよな!?」


「いちおう耳と尻尾は消えていますけれど……」


「てかこの女、学生じゃねえだろ?」


「教師のほうがいいかな? でもそれだと入れてくれないんじゃ?」


「問題はそこじゃない! 明らかに部外者だろうが!」


「いちおうシャルの従者扱いで学院はフリーパスだぞ?」


「だから学生じゃないだろって!」


「そこはうまいこと誤魔化してくれよ。短期留学生とかさ」


 そんな制度があるかしらんが。


「おい貴様ら。さっきから文句ばかりだな。学生ならば頭を働かせ、前向きかつ建設的な意見を出さんか」


「いや、僕らわりと常識的なこと言ってるぞ?」


 すまんがフレイに常識は通用しないのだよ。


「ともかく! 私はあるじの命を受け、斯様な動きにくい服を許容しているのだ。ふふふ、待っていろよナンバーズとやら。私が手ずから燃やし尽くしてくれよう」


 哄笑を上げてノリノリのフレイである。

 ライアスが身を乗り出し、テーブル越しに小声で言ってきた。


「おい、せめて青髪の子にしろよ」


 リザね。うん、俺も彼女のほうが絶対にいいとは思っているよ。

 ただあいつ、理屈のわからない俺の結界魔法にいまだ拒否反応があるのよね。


 場合によっては通信魔法をガンガン使うし、保険としてそこらに『どこまでもドア』を設置して縦横無尽な展開力を保持するつもりだ。

 これもまあ、万が一ではあるのだけど、そのときにリザが右往左往しちゃうと困るでしょ。


 その点フレイは、何事も疑問を持たず受け入れる広い度量があるのだ。


「大丈夫だ、問題ない。フレイはやればできる子なので」


「ハルト様! ありがたき幸せ。このフレイ、必ずや奴らを粉微塵にしてくれましょう」


 燃やすんじゃなかったの?

 まあ、こいつが暴れるのは許容範囲だ。なにせいかがわしい組織の連中だし、アレクセイ先輩は魔人っぽい何かだし。


「んじゃ、三人ともがんばってね」


 ひとまずこれでアレクセイ先輩がどう出るか? 拝見させてもらいましょうか――。



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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

― 新着の感想 ―
[一言] ナンバーズというよりKKKでしたっけ?怪しさしかない白人至上主義の秘密結社擬きの貴族至上主義団体って奴なのか?w これでモノリス越しで会話してるようならゼーレだなw
[一言] 幼女王総進撃マーチを伊福部氏に発注しなければ
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! アホ臭いですけど、確かにアニメに夢中に成って油断するかもw しかし私も同意見ですね、せめてリザさんにすべきだと思う、フレイさんは強いけど脳筋ですので、潜入と…
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