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髪型。

最近の少女は一度に着る服の量が少し増えている。

少女達が住む国には季節が有り、最近寒くなってきたので女が強制的に着させているのだ。

モコモコになった少女はまた違う可愛らしさを発揮しており、女は毎日焼き付ける様に目を見開いて見つめている。そして羊角は物理的にデータとして残している。


ただ暖かい時よりフリルやレースが増えていて、少女は動き辛くなっている様だ。

服がごてごてしていて動き辛いというだけではなく、高そうな服だと思って動き辛いらしい。

汚してはいけない、破ってはいけないと思いながら動くせいか、両手両足が一緒に動いている時もある。


とは言っても普段着ている服も今着ている服も、そこまで高い服という訳ではない。

世の中の技術とは凄いもので、それなりの物であれば大量生産出来てしまう。

オーダーメイドでもなく、特殊な生地を使っている訳でもない、ちょっとお高い程度の服だ。

勿論それなりの値段ではあるが、目が飛び出るような値段の物は着せていない。


勿論女や羊角が着せたくて服を買ってくる可能性はゼロでは無いが。

いや、おそらく買って来るであろう。少なくとも貯金を確認している羊角は確実である。

羊角は撮影機材も一新しており、一体何処へ向かうのだろうか。


「角っこちゃん、気にし過ぎだって。汚しても洗えばいいんだから気にしないで良いんだよ」


そんな少女を見てクスクスと笑いながら彼女は声をかける。

少女はその言葉に少しほっと息を吐くが、それでもやはり緊張は解け切らない様だ。

仕事で使用人服なら汚れる前提なので気にしないのだが、どうにも気になってしまうらしい。


勿論今まで来ていた服が安っぽいという訳では無いのだが、着る服が増えた事で何だが普段よりしっかりした物を着ている気分になってしまっているのだ。

なので使用人服に着替えたくは有るのだが、今日は勉強の日だったので女が却下した。

使用人服だと何か仕事をし始めかねないからという理由だったのだが、女の本心は「どうせなら可愛い服着ている方が良い」というものである。


「しかし角っこちゃんは何着ても可愛いねえ」


彼女は困った様子の少女もまた可愛いと思いながら少女の頭を撫でる。

少女は目を細めながらそれを受け入れ、にへーっと笑顔になった。


「あーもう可愛いなぁ!」


またそれが可愛らしく、彼女は少女を抱きしめて頭をくしゃくしゃにしてしまう。

少女はちょっとくすぐったいと思いながらも、されるがままになっていた。


「あーあー、怒られるよー? おチビちゃんの髪は先輩がいつも綺麗にしてるんだから」

「えー、楽しんでる時に固い事言わないでよー」

「ほら、おチビちゃんおいで、髪直してあげるから」


彼女は唇を突き出して文句を言いながらも少女を放し、少女はトテトテと単眼の下へ向かう。

単眼はその大きな手でひょいと少女を抱え、椅子にトスンと座らせた。


実は少女は単眼の大きさから来る一連の行動が結構好きだったりする。

なにせ単眼が少女を抱えると、視界が全く違うのだ。

一番高い位置の全然違う世界を見た瞬間、ワクワクした気持ちでいっぱいになっている。

そのままご機嫌な心で椅子に大人しく座る少女だが、足だけパタパタと楽しそうに動いていた。


ご機嫌を隠しきれない少女に、単眼は思わずクスクスと笑いながら少女の髪を梳いていく。

彼女も意識せず笑顔でその様子を眺めていた。

羊角と女が居ないと微笑ましくゆったりした空間になるなと、偶々通りかかった複眼がそんな事を考えていたが、望遠で羊角が撮影している事には誰も気が付いていない。


「はい、出来た。ちょっと髪型変えてみたけどどうかな?」


単眼は少女の髪を梳き終わると、少女に手鏡で今の姿を見せる。

少女は手鏡の中にハーフアップになっている自分を確認し、少しテンションが上がった様だ。

少女の笑顔が手鏡と単眼の顔を行ったり来たりしている。


「角っこちゃんは普段は素直な髪型だから、結構印象変わるね」

「おチビちゃんはおでこ思いっきり出しても可愛いと思うのよね」

「アンタ図体でかいのに相変わらず可愛い事するよねー」

「よーしそこになおれ、投げ飛ばしてやる」

「やなこった」

「あ、こら、逃げるなー!」


彼女はバタバタと単眼から逃げ出し、単眼も彼女を追っていった。

少女は二人が去って行くのを追いかけようかと思ったが、それよりも女にこの姿を見せに行こうと決め、パタパタと女の下へ向かうのだった。






女は少女の姿を勿論褒めたのだが、どうやら少女の想定以上ツボにはまったらしい。

少女がご機嫌で去って行った後、男に「何ですかあれ、もっと早めにやればよかった。可愛い」と言い、抑えられない感情をぶつける様に男の背中をごすごす殴り始める。

男は「俺殴られてる意味解んねぇ」と思いながら、面倒臭いので好きにさせるのであった。

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