やっと本当のお手伝い。
「ふむ・・・問題ない。計算ミスも無いな」
端末のモニターを見ながら、女は少女に向かってそう告げる。
すると少女はニパーッと笑顔を見せ、褒めて褒めてと尻尾が振られる幻覚が見えた。
女は真顔のまま少女の頭を優しく撫で、少女は当然のようにその手に擦り寄る。
今の女の頭の中は『可愛い』しか考えられなくなっている様だ。
段々少し馬鹿になったのではと女は思う時が有るが、可愛いのだから仕方ないと結論づけるた。
完全に親バカのそれである。勿論自覚をした上なので甘やかしすぎはしないのだが。
今褒めている内容も、少女がきちんと作業をこなせたからであり、正当な評価をしただけだ。
と、言い訳じみた事を考える辺りは、まだまだ開き直り切れてない様だが。
「もう、事務の手伝いをさせても、良いかもしれないな・・・」
一通り少女を褒めて満足した後、女は少女から手を放してそう呟いた。
今回少女がやっていた事は、普段女がやっている書類作りの一部だ。
辞書片手では有るが、外国語も含んだ内容の書類をきっちりと作っている。
元々賢い子ではあると思っていたし、吸収力も高いと思っていた。
だからやらせても問題は無いだろうとは思っていたけれど、その速度が予想外だったのだ。
辞書片手だったのでそれなりに時間はかかるだろうと思っていたのに、想定時間の半分で終わらせ、確認するも問題の在りそうな所も無い。
勉強も見ている身としては、うっかりミスの多い子だという認識が強かったので驚いた。
ただそれは望ましい事のはずなのに、女には少し、寂しく感じてしまってる。
急激に成長している様な、そんな感覚を、今の少女から感じてしまって。
そのせいか先の呟きも余りに小さく、聞かせる気のない様な呟きだった。
ただその小さな呟きはしっかりと少女の耳に入っており、パァーっと笑顔を見せる。
ワクワクした顔で女の言葉を待っており、その様子に思わずクスリと笑みが漏れた。
ただそれはいつも通りの少女が可愛いからだけではなく、やはり寂しさが有ったゆえだろう。
「そんなに急いで働かなくても良いんだがな。お前は、もう少し子供でも良いんだぞ」
勿論それは少女が大人っぽいという訳では無い。
見た目はどう見ても子供だし、行動も子供っぽい。
今も女の言葉を今か今かと待つ姿がまさしくご褒美を待つ子の様に見える。
ただ少女のそれは、自分が何時までも子供ではいない為に、役に立つ為にという想いだ。
だから少女はフルフルと首を横に振り、ニコッと笑顔を見せる。
少女は解っている。自分がまだまだ子供で未熟だと。だから頑張りたいんだと。
大好きな人の為に働けるのは、ある意味甘えているのと同じだと思いながら。
ただ少女はその言葉を口にはせず、自分が頑張りたいという意志だけを見せる。
伝わっていても伝わっていなくても良い。自分がこの人達の為に頑張りたいだけなのだから。
「・・・そうか」
女は少女の気持ちを何となく感じとりながら、だけど言及はせずに優しく頭を撫でた。
ただやはり、もう少し子供らしい甘え方で良いのに、とは思ってしまったが。
因みにその事に少し困った人物が居た。男である。
「・・・あの子が本格的に手伝いだしたら、仕事、溜められないな」
女相手だといきなり仕事を放り投げる時がある男だが、少女相手にはそうはいかない様だ。
どうやら男的には、普段は兎も角仕事は出来る男、という変な矜持を守りたいらしい。
奇しくもいつか少女が夢見た状況に近づいたのは、正夢だったのか偶然か。




