表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
262/285

皆でお出かけ(予定)。

「ねえ角っ子ちゃん、今度一緒にお出かけしない?」


ある日の夕方、携帯端末を手にした彼女がそんな事を言い出した。

少女はコテンと首を傾げながら話の続きを聞くと、何やら動物園が新しく出来たらしい。

結構大きい様なので今度一緒に行ってみないかという話だった。


「色々いるよ~? た~のし~いよ~」


彼女はまるで少女に催眠でもかけるかの様に手をミヨンミヨンと動かす。

それにかかった訳では無いだろうが、少女はペカーっと笑みを見せて応えた。

了承を得た彼女はそのまま少女と手を繋ぎ、女に許可を貰いに向かう。

少女の立場上本人だけの納得では動けない。


「せーんぱーい、今良いですかー?」


何かのデータを端末に打ち込んでいるらしい女に声をかけると、女は手を止めて顔を上げる。

体ごと首を傾げながら並ぶ彼女と少女の姿を見て眉間に皺が寄っていた。

いや、視線は主に少女に向かっており、呼びかけた本人に向かっていない。


「何か用か」


ポテポテと近づいて来る少女の頭を撫でつつ、そのまま頬もプニプニとしながら問いかける女。

少女はえへーっとだらしない笑みでされるがままで、女の眉間の皺は更に深くなっている。

問いかけた自分の事を忘れ去られていそうだが、何時もの事かと思った彼女は説明をした。


その間も女はずっと少女を愛でており、説明を聞いているのか若干不安な彼女。

とは言ってもその説明も「動物園へ行きたいんです」という物なのですぐに終わったが。


「成程・・・まあ良いだろう。二人で行くのか?」

「都合が付けば何人か居た方が安全かなーとは。虎ちゃんは誘うつもりです」

「ふむ、ならば行きたい人間が決まれば私に報告すると良い。何なら全員でも構わん」

「え、良いんですか?」


流石に使用人全員で行って来ていい、という言葉に彼女は少し驚く。

だがよく考えたら海水浴の時にほぼ全員で行った事に気が付いた。

勿論その為の日程合わせは有ったけども、合わせられるならその方が良いかもと思い至る彼女

それにきっと、男が行けるなら一緒の方が少女も楽しいかもしれないと。


「その場合費用は?」

「全部旦那様にツケる」

「乗った! んじゃ皆に確認してきます!」


移動食事会場費用を男持ちと聞き、彼女はガッツポーズをしながら応えた。凄まじく現金だ。

少女は余り話をよく聞いていなかった様で、彼女の声にビクッと驚いていた。

えっえっと良く解らずに顔を動かす少女の手を引き、彼女はその場を離れる。

女は名残惜しそうに手を伸ばしていたが、つまらなそうに打ち込み作業に戻るのであった。


「んじゃ角っ子ちゃんは虎ちゃんと少年誘って来て。あたしは他の皆誘ってくるから」


彼女の指示にはーいと手を挙げて応え、パタパタと二人を探しに行く少女。

何処かな何処かなーと探していると、途中で犬に出会う。

わふっと鳴いた犬の頭の上には猫もおり、ぶな~とご機嫌な声で鳴いていた。

少女はわーいと駆け寄ると二匹を撫で、犬と猫も少女の手にすり寄り気持ち良さそうだ。


「ふふっ、君達は本当に仲が良いね」


そこに最近聞き慣れた声が耳に入り、ニパッとその声の持ち主に笑顔を向ける少女。

視線の先に居たのは虎少年で、その隣に少年も立っている。

探していた二人を同時に見つけた少女は嬉しくなり、わーいと二人に向かって抱きついた。


「おっと、どうしたの、何か有った?」


虎少年はもう慣れた物と笑顔で応えるが、少年は相変わらず少し戸惑い気味だ。

背中に回された手の暖かさを変に意識してしまっている。

だが当の少女にそんな事は関係無く、ニコニコしながら動物園行きの話を二人に告げた。


「僕は良いよ。いつでも。そもそも僕は殆ど何もしない毎日だしね」

「僕も、旦那様が許可を出すのであれば」


二人の了承を得られた事で、猫を抱えてわーいと喜ぶ少女。

少女が嬉しそうなのを感じた犬も、隣でわっふわっふと可愛く吠えながら踊っている。

猫は少女に抱えられたのでそれだけでご機嫌でぶなーっと高らかに鳴いていた。


その後彼女と合流して結果を聞くと、どうやら他の使用人達もOKだったようだ。

彼女と少女はもう既に皆で行く事が決定した気分で、キャッキャと手を繋いで躍っていた。








「という訳で旦那様、都合をつけて下さい」

「・・・いや、別に良いけどさ。つけられますかって聞くだろ普通」


男が帰ってきたらその事を早速話す女。

ただ出来るかどうかではなく「やるんだ」という決定事項になっている。

当然男は不満顔で返すが、女ははっと鼻で笑って続けた。


「つけられますよね。つけなさい」

「お前本当に使用人の自覚有るか!?」

「何を失礼な、私ほど優秀な使用人は滅多に居ないと思いますが。むしろ旦那様が失脚しても運営を続ける自信が有ります。むしろ失脚した方が自信が有ります」

「お、なんだ、喧嘩売ってんのか。それならそうと言ってくれれば良いのに」


何時も通りの冷たい顔で告げる女の言葉に、男はにっこりと笑顔で答える。

しばしの静寂の後、合図も無く交差する拳。

そして盛大な音を立てた一撃は男の頬に突き刺さり、男は力なく崩れ落ちた。


「では私はそのつもりで予定をくみ上げておきますので」


女は崩れ落ちた男に一瞥もくれずに去って行き、男は冷たい床の上で放置された。

只今は暖かいというよりも暑い時期なので風邪は引かないだろう。

どうなったかなーと気になって訪ねて来た少女が、暫く起き上がるのを諦めていた男を慌てて抱き起すという事態もあったが、概ね何時も通りの屋敷である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ