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火鉢。

彼女に貰った鉄瓶。

その管理と使い方を教えて貰った少女は、倉庫である物を探していた。

確か以前掃除した時に有ったはずと、薄い記憶を頼りに端から調べている様だ。


そうして探す事暫く、あったーと掲げた物はバーベキュー用の炭。

は、目的の物ではなく、ついでに見つけるつもり物であった。

台所にも炭は有るので、取り敢えず解る所に避けて捜索を再開。


次に見つけたのはバーベキュー用の網。

これも目的の物とは違うのだが、これはこれで使えそうだと炭と一緒に置いておく少女。

すぐ傍にあったバーベキューのコンロも、目的の物が見つからなかった時の為に確保。


そうしてまた捜索を再開する事暫く、やっと少女は目的の物を見つけてわーいと掲げる。

それは火鉢であった。何かを焼く事を主目的としたものではなく、暖を取る為の火鉢。


何故これを探していたかと言うと、複眼に説明された事が理由となる。

鉄瓶はガスコンロの火に当てると変色していくというのだ。

それはまだ良い。色が変わるのは使う上では仕方ないと思える。

だけどガスコンロの火には水分があるらしく、鉄瓶の底を錆びさせてしまう。


折角お土産で彼女が嬉しそうに渡して来た物。

出来る限り長く使いたいし、ちゃんと使ってあげたい。

という訳で問題無く使う為には炭火が良いと聞き、火鉢の存在を思い出していたのだ。


これなら鉄瓶を乗せて問題無いし、持ち運び出来るし、寒い日は暖房にもなる。

当然換気が要る物ではあるが、その辺りは他の使用人達がしっかりと言い含めるだろう。


火鉢の中に五徳と灰、すぐ傍に火鉢用の炭も在ったので、纏めて火鉢に入れておく。

そしてみつけたーと喜びを表現する様に、頭の上に掲げてパタパタと台所へ戻って行く少女。

途中少年が見かけてぎょっとしていたが、少女は気が付かなかった様である。


「あ、おかえりー、おチビちゃん」

「火鉢はみつか・・・何してんのアンタ」


にっこにこで台所に戻って来た少女を迎える単眼であったが、複眼はその後ろの人物の方が気になった。

少女はふえっ?っと声を漏らしながら振り向くと、羊角がいつの間にかついて来ていた様だ。

当然カメラを片手に少女の見上げる様をしっかりと撮影している。


「勿論天使ちゃんが可愛かったから」

「・・・まあ、今更か」

「あはは、でも今日は気持ち解るかな。今のおチビちゃん、何だかアニメかゲームのちっちゃいキャラみたいだもの」


複眼の言葉に突っ込むのも面倒という様子の複眼だが、どうやら単眼は共感したらしい。

というのも、今の少女は普通ならそんな風には持てない物を掲げている。

下手をすれば少女よりも重いのではないか、と思えるサイズを。

その様子は何処かシュールな物が在り、SDキャラが動いている様に見える。


「そんなに大きな物じゃなくて、小さいのが確か有ったと思ったんだけど、無かった?」


複眼の問に少女は目をぱちくりし、んー?っと首を傾げる。

だがその際火鉢も傾いたので単眼が慌てて支えに行き、羊角もびっくりして支えていた。

とはいえ大半は単眼が支えていて、羊角は余り役に立っていないのだが。

因みに複眼は出遅れ、腰が中途半端に浮いている。


「お、おチビちゃん、取り敢えずこれ、置こうね?」


軽々抱えているとしても、重い物な事は間違いない。

落とせば大変な事になるし、そうなれば少女は絶対に落ち込むだろう。

そう思い提案すると、少女は少し申し訳なさそうな様子で火鉢を下ろした。

どうやら失敗した、という事には気が付いているらしい。


「まあ、別に良いか。大きい物でも小さい物でもやる事は変わらないし・・・おっも。何これ陶器じゃなくて石じゃない。外側が綺麗に塗られてるから解らなかった。ふっ!」


複眼は火鉢を邪魔にならない所に動かそうとしていたが、予想外の重さに少し手間取っていた。

とはいえ大きな猪すら持ち上げようとすれば持ち上げられる複眼である。

火鉢程度の重みなど大したことは無いと、移動の邪魔にならない位置に火鉢を動かした。


「灰は袋に入った新品で、五徳は・・・使った様子が無い。炭は結構良い木炭ね。火鉢の中は軽く掃除して使うとして、これならすぐに使えそうね。ちみっこ濡れ布巾用意して」


複眼の指示にハーイと元気良く応え、すぐさま濡れ布巾を持って行く少女。

そして嬉しそうに掃除をし、コンロでお湯を沸騰させる鉄瓶に笑顔を送っている。

今から君のお家を用意するからねー、という気分らしい。


「一酸化炭素に反応する警報器ってついてたっけ、この屋敷」

「いや、火災報知は有るけど、一酸化炭素はどうだったかな・・・ガスには反応した筈だけど」


火鉢は炭で暖を取る物。そして炭火という事は、一酸化炭素が室内に発生する。

換気をすれば問題は無いが、万が一という事も有るだろう。

という訳で話し合いの結果、念の為買っておいた方が良いかもしれない、という結論になった。


「じゃあ天使ちゃんの為に私が買う! 私が買っておくからね! 天使ちゃんの為に!」


ここぞとばかりに羊角が自己主張をしたが、複眼も単眼も特に異論は口にしなかった。

むしろこの勢いの羊角の邪魔をする方が面倒である。

少女が良いの?と言う様に首を傾げると、羊角はとても優しい笑みを向けた。


「良いのよ、私がそうしたいんだから。天使ちゃんはあの鉄瓶ちゃんをしっかり育ててね?」


頭を撫でて優しく告げる羊角に、少女は感謝の気持ちを込めて腰にキューっと抱きついた。

それだけで羊角にとってはもう満足であり、むしろ意識がどこかに飛んで行きそうである。


そんなこんなで火鉢と鉄瓶が台所に常に鎮座する事になった。

ただしもう暖かくどころか暑くなる頃合いで、流石に室温が高くなりすぎる可能性がある。

という訳で鉄瓶さんの沸騰の為以上に熱が入らないよう、小さな炭でのんびり火にかける形になるだろう。


つまりは鉄瓶で入れたお茶の披露は、ある意味贅沢品という事になりそうだ。

ただ何だか特別感がある気がして、少女は嬉しい様だが。







因みに倉庫で避けていたバーベキューの道具だが、実は元に戻さすそのままである。

何となく気になった少年が倉庫に向かって気が付き、文句も言わずに人知れず片付けていた。

そして当然の顔で通常業務に戻り、何の事は無いといった様子で業務の時間調整をし始める。


こういう所が使える人間なのだが、こういう所なせいで気が付かれ難い少年。

とはいえ彼女がその様子を見ていたので、誰にも気が付かれていないという訳では無かった。


「あの子は本当に自己主張が無いというか、タイミングが悪いというか、不憫な子だねぇ」


くすっと笑いながら、彼女はとある方向に歩を向ける。

当然向かう先は少女の所であり、語る事は少年の事。

この件を伝えられた少女は大慌てで少年に謝り、ありがとー!っとぎゅーっと抱き締めるのであった。

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