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お膝の上に。

虎少年が屋敷に来てから数日、少女は毎日キャッキャとはしゃいでいる。

優しいお兄ちゃんが構ってくれている感覚で、虎少年を全力で振り回していた。

虎少年も虎少年で律儀に付き合おうとするので、余計にテンションが上がる少女。


何故か良く彼女も混ざってい遊んでいる事が多い気がするが、少女は特に気にしていないし楽しそうなので問題無いだろう。

あんまり酷いと複眼が「仕事に戻れ」と引きずって行くので。

因みに引きずられる頻度は羊角が一番多い。理由は言わずもがなである。


単眼が引きずられる様な事はほぼ無い、という説明は特に要らないだろうか。

そもそもあの巨体を引きずるのは大変なので、誰もやりたくは無い。


ただ時々虎少年は少女に付いて行けず、ギブアップを宣言する時も有ったりする。

流石に少女の体力には、それなりに体格も良く体力に自信のあった虎少年も敵わない。

なので今はついさっきまではしゃいで遊んでいた庭でのんびりと休憩中である。

ポーッとした様子で空を眺め、はふーっと息を吐く虎少年。


そして少女は胡坐をかく虎少年の足の間にすっぽり収まっていた。

いつも彼女や単眼の足の上に座る調子で、虎少年の腕を抱きながら寄りかかっている。

えへへーと終始楽し気で、毛皮を撫でたり肉球をプニプニして物凄くご満悦だ。


寒い時期ではあるが少女の暖かさと自身の毛皮により庭でも何ともないらしい。

そして少女は運動して温まっているのもあるが、虎少年の毛皮と体温であったかい様だ。

お互いにお互いの暖かさにぽへっとしている。


因みに最近猫が何やら対抗心を燃やしているのか、ぶなっ!と前足を差し出す時が有る。

その様子がいじらしくて、キューっと抱き締めて撫でたおす少女。

猫は何故か勝ち誇った様子で虎少年に向け、ぶなぁ~と自慢気に鳴いて満足していた。

犬は特に対抗心は無いようである。


「前より受け入れられている、と思えば良いのかな」


胸に寄りかかる少女の暖かさのせいか、何だかぼんやりした様子で呟く虎少年。

頭の上での何気ない呟きに少女は首を傾げながら、みぅ?と声を漏らして覗き込む。

またその仕草が、最早わざとやっているのかと思う程可愛らしい。

これが無意識っていうのは怖いなぁ、などと虎少年は感じながら続きを語る。


「前に来た時より皆が砕けているというか・・・距離感が近いというか・・・ね」


虎少年の呟きに、少女は少し心配気な顔を見せる。もしかして嫌だったのだろうかと。

少女にとっては屋敷の住人達の距離感は慣れたものだし、皆の事は大好きだ。

そもそも少女自身が距離感の近い人間なので、皆の気安さは過ごし易い要素である。


もしそれで疲れているなら、自分も疲れさせてしまったのではと。

そう思いみゅーんと少し悲し気にしている少女を見て、虎少年はくすっと笑って頭を撫でた。


「嫌な訳じゃないんよ。何て言うか、良いなぁって。良い所だなって。あはは、語彙が無いね。でも、うん。それが素直な言葉かな。ここは良いね、本当に。君も居るしね」


虎少年が笑顔でそう言ったので、少女もすぐにニパーっと笑顔を見せる。

ただ少しして、ん?と首を傾げ、最後の一言に気が付いた少女。

すると虎少年の両手を取って、肉球を頬に抑える様にしてにへーと照れる様子を見せた。


ただそれは自分の事も好いてくれている事が素直に嬉しかったという事であり、それ以上の感情

は特にない。

虎少年もそれは解っているので、優しく少女に笑みを見せている。


彼女達の距離感が近い事は前回の訪問でも解っていた。

少女が楽しそうな事も、皆が仲が良い事も、皆が気の良い人達だという事も。

ただそんな中でも自分はお客様だった。当たり前ではあるけども、その気配が強かった。


前回も楽しくは有ったが、少しその輪の中から外れている様な気がしていたのだ。

勿論自分はここの住人じゃないないので、そんな事は当然の事だと思っている。

だから我が儘だと思っていたそれが、今回は左程感じない。それが虎少年には嬉しかった。


「前もそうだったけど、本当に、帰りたくなくなるなぁ・・・」


別に元の生活が嫌だった訳ではない。だけどここの生活が心地良すぎる。

そう思う虎少年は、楽しいのだけど早くも寂しい想いを抱えているのであった。






そしてそんな様子を、少し羨ましそうに見つめる者が居る。


「良いなぁ、私もしたいなぁ」

「頼めばいいじゃん」


少女を抱き抱える虎少年を見て、単眼も同じ事をしたくなっている様だ。

彼女は気にする必要は無いだろうと言うが、それでも単眼は尻込みしている。

だが単眼は良く少女を膝に乗せているし、むしろ見慣れた光景である。

ではなぜこんな風になっているのか。


「うーん、だって男の子だし、嫌じゃないかなぁって」

「嫌って事は無いでしょ。男の子ならそれこそ。美人のお姉さん相手なんだから」

「び、美人かどうかは自身無いけど、そ、そうかなぁ・・・」


単眼が膝に乗せたいのは実は虎少年の事なのだ。

そして出来れば心の赴くままにわしゃわしゃと撫でまわしたいと思っている。

ただ流石に相手は年頃の男の子なので、ぐっと堪えていたのであった。


既にそこそこわしゃわしゃと撫でてはいるのだが、それでも堪えないといけないのだ。

なにせ露出している頭や腕以外の所も触りたいなぁ、という気持ちだった為に。


「頼んでみようかなぁ・・・」


ただ堪え切れるかどうかは怪しそうだ

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