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カイロ。

「もう大分寒いねー、角っ子ちゃん」


彼女が白い息を吐きながら声をかけると、彼女以上に白い息を吐きながら首を傾げる少女。

それもそのはずで少女は犬と駆け回り、大分体が温まっている。

上はモコモコ上着でインナーも裏起毛と、完全防備も良い所なので余計にだろう。

スカートではあるが足もしっかりとタイツを穿いている。


「暑そうだね・・・」


彼女の言葉に満面の笑みでコクコクと頷く少女。

隣では一緒に駆け回っていた犬も暑そうにハッハッと舌を出している。

運動したのが原因ではあるが、犬と少女には冬の寒さも何のそのという感じだ。

ただ猫は寒いのが嫌だった様で、単眼に面倒を見られながら屋敷でぬくぬく丸まっている。


「角っ子ちゃん、何でこんなに寒さに強いんだろ・・・」


犬は分厚い毛皮が有るから解るが、少女の脂肪の少ない肌で何故寒くないのか。

彼女的には「この時期だけは散歩を大目に代わろうかな」と思う時も有るほど寒いのにと首を傾げているが、そんな事は本人にも解らない。

ただ別に少女も全く寒くない訳では無いので、だからこそモコモコ上着を着ているのだが。


だがそこでふと、彼女は良い事を思いついたという風な顔を見せる。

そしてそーっと少女に近づき、ズボッと少女の背中に手を突っ込んでしまった

少女は当然驚き、ピキュ! と妙な声をあげて固まってしまう。

寒さに強いとは言っても、冷たいのが平気という訳では無いのだ。


背中で不意打ちだったせいで驚きも大きく、プルプルと震えてしまっている。

ぴっ、きっ、と声にならない声を漏らしながら、ゆっくりと首を回して彼女を見る少女


「角っ子ちゃん、暖かーい。触り心地も良いし、カイロよりあったかく感じる」


彼女は思った以上に暖かい少女の背中でご満悦である。

その様子を見た少女は驚きから回復すると、ぷくーっと頬を膨らませた。


「あはは、ごめんごめん」


と彼女は謝るが、今だ手は突っ込まれたまである。よっぽど暖かいらしい。

段々彼女の手が暖かくなって来たので平気になって来た少女は、少ししてむーと膨らませた頬を萎ませてニマッと彼女の様に笑う。


そして仕返しだーという様に、スカートの下から彼女の太腿を掴みに行った。

彼女はニーハイを穿いており、その少し上の部分をきゅと。

背中は首元に手が届かないので諦めたようだ。


「きゃっ・・・えっと、うん、あったかい」


急に太腿を握られた事には驚いたものの、少女の手が暖かかった為に全くダメージが無い。

むしろスカートで冷えた太ももが暖められて良いとすら思っている。


彼女の反応にガーンと効果音がなりそうな様子の少女。

ついさっきまで走り回っていたせいで血行も良く、先端まで温まっていたらしい。

背中に負けず劣らずのホカホカお手々を見つめながら、むーっとまた頬を膨らませる。


「あはは、お姉さん寒いのあんまり得意じゃないからさぁ。ごめんね。帰ったら久々にあたしがおやつを作ってしんぜましょう」


彼女はそういうと背中から手を抜き、少女と手を繋いで屋敷に足を向けた。

少女はつーんとそっぽを向いているが、素直に握り返してポテポテとついていっている。

本心はそこまで怒っていないのだが、怒ってるんだからね、っというポーズらしい。

基本的に彼女にしか見せない態度なので、彼女的にはじゃれついて遊んでいる延長の様な物だ。


「じゃあ今日は、フルーツも一杯乗せちゃおう。この間良いの買ったんだ。美味しいよ~?」


頬をツンツンしながらニマニマと語る彼女に、つられないもーんと、つんとした態度の少女。

だけど口元が少しにやけているので、彼女は堪え切れずにクスクスと笑っている。

そんな感じでのんびりじゃれながら屋敷に帰り、着いた頃には少女は怒っていた事など忘れていた。


「おっやつ、おっやつ♪」


屋敷に着くと「おっやつ、おっやつ♪」と歌う彼女と一緒に、ご機嫌に台所に向かっているぐらいだ。

因みに繋いだ手は温めていた手と逆の手であり、帰り道もカイロ代わりにされていた事には最後まで気が付いていない少女であった。

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