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出会い。

その出会いはきっと必然だったのだろう。

同じ土地に住み、同じ土地で生きる以上避けようのない出会い。

出会ってしまった事にお互い驚きを隠せず、お互いに何だこいつはと見つめている。


緊迫した空気が流れる中、どちらともなく口を開き、声を上げた。

そして「ぶな~?」と「わふぅ?」という、お互いに不思議そうな鳴き声が響く。

見つめ合っている者達は猫と犬であり、お互の存在に首を傾げているのであった。


「あはは、困惑してる」


そんな犬の様子を単眼がクスクスと笑いながら成り行きを見つめる。

因みに猫は少女の太腿の上に乗っており、犬は少女の膝に顎を乗せている。

お互いにかなりの至近距離なのだが、何を警戒しているのか触れる様子が無い。


少女としては犬とは仲の良いお友達なので、猫とも仲良くしてほしいなーと思っての事だった。

だがお互いに首を傾げながらぶな~?わふぅ?と鳴くだけで進展する様子が無い。

いや、良く見ると最初と少し違いが出て来た。


猫は相変わらずぶな~?という疑問符のついた鳴き声だが、犬がわふわふと小声で返事をしている様な様子を見せている。

まさか会話が出来ている、という訳では無いだろうが、先程とは様子が違っていた。


暫くすると猫もぶなっという返事をする様な鳴き声に変り、犬に近づいて行く。

ただ少女の膝の上の出来事なのですぐに犬に接触し、挨拶をする様にペロペロと舐めだした。

犬もそれに応える様にペロンと舐めたのだが、猫は力負けしてコロンと転がってしまう。

少女は慌てて落ちないように手を添えたので無事だったのだが、犬はそんなに力を入れたつもりは、と言うかのように尻尾を丸めて上目遣いで少女を見ている。


そんな犬に少女は解っているよと頭を撫で、猫も大丈夫だよという様にぶな~と鳴いた。

安心したのか犬は尻尾を振って少女にすり寄り、猫にも先程よりゆっくりと舐める。

今度は猫も転ぶ事無く、ご機嫌に鳴き声を上げていた。


「どうやら仲良くなれたみたいね。良かったね、おちびちゃん」


ニコッと笑いながらそう言ってくれる単眼に、少女もニコーっと笑顔で返す。

そして何となく単眼に指をキュッと握り、頬に当てる少女。

単眼もえへへと笑いながら持たれている手とは反対の手で少女を撫で、二人でにへーっとしながら楽し気にしている。


「それにしてもこの子、この調子じゃ移動が大変そうね。おチビちゃんが何時も抱える訳にもいかないだろうし・・・」


少女も屋敷でいつも遊んでいる訳では無い。

使用人達と一緒に仕事をしている以上、何時もで猫に構っては上げられない。

とくに畑仕事は一緒に持って歩く様な事は出来ないだろう。

単眼に言われて初めてその事に気が付いた少女は、見るからに気が付いていなかったという驚いた顔を単眼に向けていた。


「あ、あはは、考えてなかったかー。んー、お仕事中はお部屋で大人しくして貰ったらどうかな。そもそもこの子外に出したら危なさそうだし」


単眼は少し焦った様子で提案をしてくれたが、それは何だかかわいそうな気がした。

少女は一日ずっと仕事をする日も無い訳では無い。

その間ずっと部屋で待っている、というのは申し訳ないとも思ってしまう。

どうしたものかと悩んでいると、不意に犬がわふっと吠えた。


「ひゃわ!?」


珍しく大きな鳴き声だったので、単眼が少し驚いて変な声を上げてしまった。

そして恥ずかしそうにしながらキョロキョロと見まわし、誰にも聞かれていない事を確認してほっと息を吐く。

少女は単眼の声に驚いてビクッとしていたので、謝りつつも「内緒にしてね?」と可愛く首を傾げながら頼んでいた。


「どうしたの、珍しく大きな声で」


単眼は先程の事を誤魔化す様に犬に問うと、犬は猫を頭の上に乗せるような動きをしはじめた。

それにピーンと来た少女は猫を犬の背中に乗せる。

すると犬はわふっとご機嫌に吠え、猫もぶな~っと満足そうに鳴き声を上げた。

どうやら二匹とも満足な様だ。少女もつられてムフーと鼻息が荒い。


「あはは、成程。散歩の時以外は良いかもね」


流石に散歩時の犬の背中は危ないので、日常であればこれでも良いかもしれない。

という訳で今度は犬が伏せて猫が自力で上り下りできるかを確かめ、10回トライして一回ぐらいは登れるようになった。


その最中単眼と少女の頑張れーという応援もあり、犬の背中に登った猫はまるで山を登り切ったかのように満足気に高らかにぶな~っと鳴いていた。

恐らく一番大変なのはその間微動だにせずにじっと伏せている犬ではないだろうか。


これで全部解決した、という訳では無いが、これからはそこそこに犬が猫を構う事だろう。

新しい住人は犬も含めて歓迎されたようで、少女は一安心だとにっこり笑うのだった。








尚、内緒にした単眼の悲鳴だが、ばっちり彼女が聞いていた。

彼女が声真似をして単眼を揶揄い、追いかけっこをする姿が見られたとか見られていないとか。

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