第三十六話 囚われのジーナちゃん
さて、私が思うに人生にはポジティブさが大事です。
私もエルフとして人間社会で生きていく中で、悲観にくれたことは多々あります。ですが、その都度、持ち前の明るさと元気で前を向きながら必死で生きてきました。
その経験から言うと、人生なにがあっても明るく元気に行動していればなんとでもなります。人生に必要なのは冷静さとか落ち着きではなくて元気に前を向く、これに尽きます。
というわけで私はどんな状況でも明るさを忘れないように頑張るつもりです、ええどんな状況でもです。
「ジーナさん、こちらの準備が終わりました」
ロビンさんが私にそう語りかけてきました。そのロビンさんが準備していたモノについて色々言いたいことがあるのですが、その前に今の私の状況から説明しましょう。
私は現在、薄暗い地下室で椅子に縛り付けられた状態で座っています。両手両足を鉄製の輪っかで縛られている状態で両手両足が全く動きません。ふんぬと頑張って藻掻きますが、これまた全くびくともしない。魔法の一つでも使えば抜け出せるかと思ったのですが、アンチマジック的な仕様があるのか、私の使った魔法は形になる前に全て霧散してしまいます。
さて、完全無欠に捕まってしまっている私として目下最大の問題は、ロビンさんが準備していた様々な刃系統の器具です。
鉄でできた棘やら刃物やら大変痛そうな道具の数々。それらをロビンさん達が部屋に備え付けてある机の上にずらりと並べていたと言うわけですね。さて、何の為に準備していたんでしょうか、恐怖で口の中が乾いてきやがったぜ。
「ロビンさんちょっといいでしょうか」
「なんですかジーナさん」
「何の準備が終わったんですか」
「拷問の準備です」
拷問かー、なんと言うか予想していたとおりですね。いやだって、どう考えても人を痛めつける系の道具ですものねあれ。特に机の右端に置いてある道具ときたら、日常生活ではまず使わないぞっていうような刃の形してますものね、なんであんなに尖った形してやがるんだろう、人生に不満でもあるんすかね。
「ところで、あの机の右端にある道具はどういう拷問のために使うのでしょうか。使われる側としては、ちょっと覚悟決めるために聞いておきたいのですが」
「いやですねジーナさん、女性にそんな事を言えるわけないでしょ。女性にそれを詳しく言ったらセクハラですよ」
レディーに対する配慮はさすが紳士と言ったところでしょうか、受けてきた教育の良さが感じられます。ただ問題なのは言葉に対する配慮は出来ていますが、その道具で私に拷問を行おうというのがいけません。言葉の配慮は出来ていますが、行動の方に少々の欠陥が見られます。
「道具の使い方を教える事は出来ないのに、道具を使う事そのものには躊躇いがないのですか? それはレディーに対する配慮が足りないとは思いませんか?」
「仕事ですからすみません、私にも立場があるので」
仕事人間とは見下げ果てた男です。こういう男が女を不幸にするのです。レディーを助けるためなら仕事の規律の一つや二つとっとと破るくらいの男でないと女性は惚れません。
私の部下だったアルフレッドなんて好みの女を見つけると、仕事を放り投げて全力で性的行動を起こしてました。男はそれくらいの精悍さがないと雄とは呼べません。
「それに実行するのは私ではなくて彼等ですので、そこはお間違えなく」
ロビンさんがそう言って指し示したのは、先ほどからロビンさんの両脇で佇んでいる覆面の大男二人組。筋骨隆々で上半身裸のこの男達は、目つきが覆面越しからでも分かるくらいイッちゃっている人達です。フーッフーッとなにか興奮しながら私を睨みつけてもいます。
「指……爪……目……目!!」
不思議な単語を呟いた後に大男二人組が私の目をじっくり見つめてきました。
そんなに見つめるようなものがそこにあるのでしょうか、あるとしたら私の目玉くらいですが、そこに興奮しますか。ここまでの変態さんだとアラン師匠とタメを張るレベルじゃないですかね。
「二人共ジーナさんの美しい目に夢中みたいです」
「そっすか」
この部屋の中だけで人類社会の闇が大変な密度で濃縮されています。おかしい、ほんの数日前まで私は黄金の光の中で人生を謳歌していたはず、ここ数日で人生の機運が垂直に落ちていますぞ。
「ロビンさん、そろそろ私がなぜこんな目に合うのか説明してくださりませんか。心当たりが全く無いと言えば嘘になりますが、だからと言ってこんな変態三人組に囲まれなきゃいけない理由がわからないんですよ。私が美しすぎて変態の欲望中枢刺激しちゃったとかそんな感じですか?」
「実際それもあります」
げに恐ろしきは美しさ。神から才能と美貌と金運と健康と歯並びと体毛の薄さとカリスマ性を持たされた私には人を引きつける運命の力があるということですね。過酷な運命に翻弄されるのも美人の運命というやつですか、そう考えれば、この状況にも納得できるかもしれません。
「よくわかりました、つまり私は変態三人組に囚われた美しいお姫様ってことですね。たしかに私の美しさは宇宙レベルの罪かもしれませんが、これはあまりにも酷い、何の落ち度もない私はただただ理不尽に変態達の手で殺されてしまうと……なんという悲劇なのでしょうか」
「え、いや違いますよ。私達がここにいるのはジーナさんが罪人だからです」
今なんて言った?
「わたしが罪人?」
「はい、完全無欠に罪人です。大体、私達は重犯罪人の調査や対象者に刑罰を与える職の人間でして、先程も言いましたよね仕事だって。私達はジーナさんが行った罪の分だけ罰を与えた上で、色々な情報を吐いて貰う為にここにいるわけです。つまり、私達は公僕というわけですね」
公僕? 公務員? この三人が? 上半身裸の変態とネクロフィリアの変態三人組が公務員ですと?
「それはどこの国の公僕でしょうか。お空の上には変態さん達が集まるユートピアがあって、そこの国で公僕として働いてるとかそんな感じでしょうか? あのーここはまっとうな知的生命体が存在している大地に根付いた大陸なので、自分達お空の人間の常識で語るのは止めてくれませんかね」
「フォアアアアアアアアアアアアアアアア」
私の言葉を聞いていた大男の一人が突然声を上げると、机の上にあった拷問器具を掴んでこちらに突進してきました。
「ステイ、ジョン」
ロビンさんがそう言うと大男の下半身が氷で覆われました。おそらくロビンさんが魔法を使ったのでしょうが、一瞬すぎてよくわかりませんでした。この人、私よりも魔法使いとしての腕が格段に上ですね。
「私が今ジーナさんと話しているのでちょっと待ちなさい。わかりましたねジョン?」
「ワカンナイ!!」
次の瞬間、もう一人いた大男がジョンの眉間辺りをぶん殴りました。殴られたジョンは衝撃で下半身を覆っていた氷が砕け散りながら地面へと仰向けに倒れ込みます。そして、倒れ込んだジョンに大男が馬乗りになると、そのまま無言で殴り始めました。
「すいませんジーナさん、では貴女がこの国の中でどういう立場なのかの説明を始めましょうか」
「あ、はい」
ゴッゴッとジョンが殴られる音が部屋のBGMとなって血なまぐさい音楽が提供され始めました。そんな中、ついに私の立場についての説明が始まるみたいです。
ちなみに先ほど人生はいつでもポジティブでいるべきとか言いましたが、ぶっちゃけそんなポジティブな気持ちはもうありません。こんな状況でそんな気持ちを持てるわけもなく、ジョンがこっちに突進してきた辺りで心はネガティブ方面に振り切れています。
「まあはっきり言うとジーナさん、貴女はやりすぎたんですよ。いや多少のオイタならいいんですけど、流石にここまでやられると私達も無視できないと言いますか」
そう言うと、ロビンさんが机の引き出しから書類の束を出してきました。
「まず、違法なギルドの設立。ギルドと言うか普通にこれはマフィアですね」
そこから来ましたか。
「確かに一見すると違法な冒険者ギルドに見えるかもしれませんが、あれはただ同じ志を持った冒険者同士が集まったクランみたいなものです。違法でもなんでもなく、ただのクラン。それを違法だと言われるなんて失礼しちゃいます」
「そうですか」
全くなんてことでしょうか、ただ冒険者達が集まって活動していただけなのに違法だとかマフィアだとか言われるなんて、こんな非合理なことがあっていいのでしょうか。
「では次に貴女の部下達が行った事ですが、近隣の村に対する脅迫、障害、婦女暴行、強盗、詐欺、あと放火や殺人もありましたね」
「それは部下達が起こした事であって私は知りません。捕まえるのなら彼等を捕まえて下さい、少なくとも私はそれらを指示した事はありません」
これも酷い濡れ衣です。確かにアルフレッドやその部下達は好き勝手していましたが、それは彼等が勝手にやっていた事です、私は何もしていません。確かに彼等とは仲間でしたが、それはあくまでもビジネスライクの関係です。仕事仲間が行った罪が他の人間にまで類が及ぶだなんて合理性が欠けていますね。
「彼等の仲間だったということで白い目を見られるならまだしも、それを私がやったなんて言われる筋合いはありません。彼等の罪は彼等の罪です」
「……貴女の仲間が起こしていた蛮行を正規の冒険者達が阻害したことについて、貴女は冒険者ギルド宛に非難の文書を出しているみたいですが。その文書の現物もありますよ」
「全く記憶にございません」
そんな誰が書いたのか分からない、いくらでも偽造できる物を証拠として出してくるなんて、ちょっと理不尽すぎて怒りが湧いててきました。
「これはエルフ差別ですよロビンさん、エルフだからといって適当に扱っていいと思っているんですか。差別に対して私は断固として戦う所存です。人とエルフに同等の権利を私は望む物です」
「そうですか、まあその他にも小さいことから大きなことまであなた達が犯してきた罪はあるのですが、国が私達に動けと命じて来る事になった決定的な出来事はこれですよ、ジーナさんよく聞いて下さい」
「何を聞くというのですか、こんな魔女裁判じみた取り調べで何が分かるのか知りたいですね。今のところ冤罪100%で私がまっとうなエルフだと言うことしかわかりません」
「貴女、税金を払わせにやってきた貴族を叩きのめして重症を負わせましたね」
やれやれ、これもまた良く分からない事を言いますね。
「税金などという意味不明な単語で煙に巻くのは止めていただきたい」
その時です、ジョンを殴り続けていた大男の動きが止まってこちらを振り向きました。それどころか、殴られていたジョンもムクリと起き上がると、二人揃ってこちらへと歩いてきます。
歩いてきたその二人がじーっと私の顔を覗き込んだ後、二人とも奇声を上げながら拷問器具の並べられてある机に向かって全力ダッシュしました。ガチャガチャと、器具同士がぶつかり合う音がなる勢いで道具の選定に入っております。
「はて、どうしたのでしょうか、ロビンさんこれはどういうことです。税金とは一体」
「税金というのはですね、国が運営するための資金の元です。それら税金を国民一人一人から支払ってもらって国を運営するための財源としているわけですね。そしてジーナさんはそれを踏み倒しちゃったわけです。それも多額の税金を、それも税金を要求しに来た貴族に重症まで負わせて踏み潰しちゃってます」
「それは美少女エルフジーナちゃんに踏まれた貴族さんも幸せですね。税金とやら諸共、踏み潰してあげちゃったみたいですが」
「まあ、とにかく問題なのは特権階級である貴族すら踏み潰す攻撃性の高さと巨額の脱税――とタイミングです」
タイミング?
「今はエルフと戦争をしてますよね、それもジーナさんが目立ち始めたのと同じタイミングでいざこざが始まりました。こっちからしてみるとエルフと戦争を始めたら、同時期に国内を経済的にも暴力的な意味でも荒らす変なエルフがいるって話なわけです、それも貴族すら叩きのめすような巨大な無法者が。そら普通に私にも調査の声がかけられますよ、どう考えてもエルフ側からの破壊工作員じゃないですかジーナさんは」
いやいや破壊工作員っていやいや。
「いやいや違いますよ、私はただ人間社会で裕福な生活を体験したかっただけでして、工作員とかそんなものじゃないですよ」
「では聞きますがジーナさん、貴女の戸籍が登録された場所をお伺いしてもいいですか?」
戸籍?
「戸籍はないですね」
「この国に正規でやってきた全ての亜人には戸籍の登録が義務付けられています。これがない人間は他国からの間者か犯罪者かです」
そんな事言われてもこれは困ります。
「私は奴隷として拐われてきたので、戸籍はないんですよ正規ではありませんが他に裏はありませんよ」
「……奴隷でやってきたエルフがなんでエルフの奴隷商をしていたんですか?」
「それはなかなか説明に困るといいますか」
優雅な奴隷生活をしていたら人の姿をしたドラゴンみたいな災害が現れてすべてぶち壊してくれたから。その後は生死のかかった師匠とのサバイバルコミュニケーションの末にやさぐれたからと言うのを正確に伝えるのはなかなか説明が困難です。
「先ほど、地下室で見たと思いますが、貴女との取引で手に入れた死体以外にもエルフの死体がありましたよね、それは見ましたか?」
「はい」
「あれ全部、戦争の前後にエルフ側からこっちに送りこまれてきたスパイや破壊工作員です」
あれが全部? かなりの数があった気がしますが。
「しかもジーナさん、貴女が目立っていたせいで何人かはこれでも取りこぼしているんですよ。つまりジーナさんが陽動で、本命は別のところで動いていく、そういうやり方なのかと思っていましたし、私達からはそう見えています」
「そんな事ありませんよ、誤解です!!」
「ええ、私もそう思います、完全な誤解ですね」
え?
「実際、貴女と接触してみてわかりましたが、貴女はただの馬鹿です。裏なんて特にない、本当に表の立場のそれだけで、工作員などでは絶対ありません。暴れていたのもただ普通に金が儲けたかっただけで、税金についても本当にその存在を知らなかったのでしょうね。私自身はそう判断しましたよ。拷問なんてやっても無駄でしょう、何一つとして情報は得られません」
その時です、先ほどまで拷問器具の選定に夢中になっていたジョンともう一人が大声を上げました。人にぶっ刺したらなにかすっげえ痛そうな器具を両手に持って、二人共はしゃいでいます。
「ジョン達も準備が終わったみたいです、では後はジョン達に任せましょう」
「いやいやちょっと待って下さい、誤解って判ってるんですよね、なんで拷問をやる必要があるんですか」
「それは私にも立場があるからです」
ロビンさんが悲しそうな顔で、そうつぶやきました。
「私の意思はともかく、周りはそれで納得してくれません。貴女はエルフ側からの破壊工作員ですし、陽動部隊の隊長です。貴女から情報を引き出して、国内に潜伏している他のエルフ側からの間者などを知る必要があります。そのためにジョンとタロウの二人を私に与えたのですから」
ジョンとタロウ。ジョンはあっちだとすると、タロウはもう一人の覆面男ですね。あんな変態マッチョ二人の名前が完全に判明したところで特に嬉しくもありません。
「それにしても優しさの一つくらい掛けてもいいじゃないですか、エルフだからですか、誤解だとわかっても拷問をすると判断したのは私がエルフだからですか、もしそうだと言うのならジーナちゃんは絶対許しませんよ!!」
「……優しさなら一度だけ掛けました、ジーナさん貴女を捕まえる時に掛けたあの氷の魔法は本来なら掛けられた相手は死んでいる魔法なのです」
なんだと?
「痛みも苦しみもなく相手を眠るように凍らせて死亡させる、あれはそういう魔法なのです。一度だけの優しさだと思ってそれを使ったのです、ですが……貴女は生き返ってしまった!! それならもうジョンとタロウに任せて貴女から情報を引き出す以外にないじゃないですか!!」
「別に何度だってその魔法をかけりゃいいでしょ!! なんでそこであの覆面変態拷問マニアに任せるんだよ、意味がわかんないですよ!!」
「だって生き返ったんですよ、貴女は生きてるんですよ!!」
「生きてちゃ悪いのか!!」
生きてたら悪いってなんだこいつは、どこまで私の存在否定してんだこの変態紳士は。
「誤解だって判ってんでしょ、情報引き出そうとしてもこっちからは何も出てきやしませんよ、せいぜい美味しい洋菓子店の場所と、この街に住んでいる衛兵や商人達の弱みくらいです、それを拷問してまで知りたいと言うんですか!!」
「弱みについては普通に知りたいところですね、ジョン、タロウそこらへんも頼みました」
ロビンさんの言葉を受けて変態マスク二人組みにやる気がみなぎります。筋肉に血管まで浮き上がって健全な肉体には邪悪な魂が宿るっていう所を完全に気合で表しております。
「しかし不思議です、なぜ私の魔法が解けたのでしょうか。あの竜人の女性ですら自力では脱出不可能だったというのに――いや、これはまさか」
ロビンさんがなにかに気がついたように私の腰辺りを触り始めました。セクハラか、この後に及んで、こいつセクハラまでするのか!!
「なるほど、これが原因でしたか」
そう言いながらロビンさんが手に持っていたのは、師匠から貰ったあの短刀でした。
「なるほど、よく見ればかなりの魔力が込められている短刀ですね、業物だと見ました。これが発する魔力で私の掛けた魔法を解除したわけですか」
「その短刀が、ですか?」
「はい、間違いありません。これがなければおそらく貴女は、あのまま氷漬けにされて美しく眠るように死んでいたことでしょう」
それがなければ私は死んでいた、つまり師匠がくれた短刀が私を助けてくれた? いや待て、眠るように美しく死んでいただと。
「つまり、それがなければ私はあのまま美しく死ねたと?」
「はいその通りです」
「言い換えればその短刀のせいで私は安らかに死ねたところが、拷問の果てに苦しみぬいて死ぬことになったと?」
「そうとも言えるかもしれません」
クソ師匠があああああああああああああああああああああああああああああああああ。
甘く見ていた、やつを甘く見ていた!! そらそうだ、奴からもらったものだぞ、運命レベルで私に厄を与えるに決まってんだろうがあああああ
「があああああああああ、師匠うううううううてめえええええええええええええええ」
許さん、奴だけは許さん。こいつらも許せないがやはり奴が一番許せない。
「師匠、そうですか、確かアランと言いましたか、その師匠に助けを求めると。やはり強がってはいてもまだ少女ですからね、ここで錯乱するのも無理はないでしょう……ん、アランですか、そういえばどこかで聞いた覚えがありますね」
なにかロビンさんが言ってますが、そんなことは知りません。とにかく師匠に対する呪詛の気持ちが収まらんのだ。
「絶対に許さんぞアラン、百度生まれ変わっても必ずや呪い殺してくれるからな、覚悟しろや貴様!!」
ここにはいない師匠に向かって私は渾身の呪いの言葉を吐きます。実際にここにいるかどうかではない、この世界のどこかにいる奴に向かって私はいまあらゆる感情を吐き出すのだ――と、その時です。
「アランだと!!」
部屋の扉の向こうから女性の声が聞こえました。
「そこにいるのかアラン!!」
という叫びと共にドアが蹴破られて、赤い髪をした女性が飛び蹴りの格好で入ってきました。その女性はすごい勢いで入ってくると私の前にいるロビンさんと変態マスク二人組――のを間をすり抜けて私に向かって真っ直ぐ飛んできます。
「おや?」
と、私が気の抜けた言葉を言った直後に私のみぞおち周辺にその飛び蹴りがぶっ刺さりました。




