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第十三話 騎士団

 パチッパチパチッ


 焚き火の爆ぜる音を聞きながら俺は夕飯の準備を終えた。

 先ほどまで火で温めていた飯盒の中には炊きたての米。それと焼いた魚に塩をまぶすと早めの昼食にありつく。

 そのまま食べ続けていると無効から人影がやってくるのが見えた。


「師匠ー頼まれていたものリリーさんからもらってきましたよー」


 ジーナが剣を抱えてこちらに走ってくる。これからのことを考えて俺の装備品の一つを家から持ってきてもらっていたのだ。


 現在、俺はリリーの逆鱗に触れてしまったので家を追い出されてしまっていた。どうせお前が余計なことしようとして犯人に仕立て上げられたんだろうと根も葉もないも言いがかりをつけられたからである。

 そこで余計なことではない、正義の行いだと言い返しては見たがなぜかリリーの怒りが激増。問答無用で町の郊外でキャンプ生活を行うことになった。


「師匠、なんで武器を持ってこさせたんですか。師匠なら大抵の生物を拳だけで消去させられますよね」

「タイマンならそれでも良いが、これからのことを考えると対複数も考えて武器が必要になるかもしれないからだ」

「師匠でも武器が必要になる戦いですか……」


 ジーナの奴いつもよりおとなしい気がするな。何かあったのか。

「どうした元気がないな」

「別に元気が無いわけではないんですけど昨日の師匠と鬼の戦いが衝撃的だったと言うか」


 あれでショック受けたのか。なるほどな。


「確かに、今までぬるま湯の鍛錬法で満足していたお前には刺激的だっただろう。世の中にはあのレベルの敵もいるんだ」

「いや、本当に師匠をどうしようもできないんだと悟ったことがショックだったんです。私は本当に師匠のそばから離れられないんだなと……」


 よくわかんねえがジーナは精神的に追い詰められているみたいだ。逆境はときに人を強くすることがある、今の精神状態はジーナにとってプラスになるかもしれない。


「そう言えばジーナは弓を武器に使っていたな」

「そうですけど何か?」

「暫くの間、弓は禁止して魔法でも何でも良いから近接で戦うんだ。ちょうど騎士団もこの街に来るから対複数の戦いも想定しておけ」

「えっと、すいません、ちゃんと説明してくださいませんか。まず騎士団が来ると私自身が対複数の戦いに巻き込まれる事態に発展するのでしょうか」


 おっとそうだ。ジーナは人間社会に疎いんだった。これは少しずつ説明していく必要があるな。


「この国の騎士団ってのは亜人関連の重犯罪には敏感だが、人間同士の犯罪や争いには動きが鈍いんだ。だからそのかわり冒険者や自警団がある程度いざこざを解決している、他にもその土地の領主の私兵とかがな。ここまでは良いか?」


「なるほど自警団に任せてばかりで騎士団とかは何をやってるんだとか思っていましたがそういうことだったんですね。ただの無駄飯ぐらいめと思ってました」


 騎士団が無駄飯ぐらいか、まあ確かにそれはそれで正しい気はするな。


「でだ、今回は鬼が冒険者ギルドや自警団を壊滅させている。ここまでの出来事が起きれば騎士団が必ずやってくるはずだ。多分、鬼族が殺人を犯していたと言う情報も上がっているだろうからすぐにでも来るだろう」

「はあそうですか、それがどうかしたんですか?」

「ここに騎士団がやってくると同時にこの街の亜人達は全員、鬼族と同罪ということで懲罰の対象になる。当然だがジーナもその対象に入っているから戦いの一つくらいは覚悟しておくべきだ」


 俺の説明を聞いたジーナの顔から表情が消えた。目が点状態になっている。


「なんでですか、暴れたのはあのパンツ一丁の変態どもですよね。わが麗しいエルフ族とパンツ一丁変態鬼族が同じに見える病気にでも騎士団の方々はかかっているんですか?」


「ジーナ、この国の人間たちが最も関わりたくないと思っている人種は社会的落伍者の冒険者達でもなければ犯罪者の巣窟であるマフィアでもない、王都の騎士団なんだ。だからできるだけ、どの街でもどこの領地でも王都の騎士団が介入する隙は見せたくないと思っている」


「それなら事件そのものをなかったことにしましょうよ、鬼族は来てませんよー、街で起きた殺人事件は別の人が犯人ですよーって。ちょうど師匠もいるし、師匠が犯人ってことでいいじゃないですか」


 ははは、なかなか言うようになったなジーナも。そんな逞しくなったジーナには俺からプレゼントしてやらないとな。


 鞘に入っている短剣を懐から出すとジーナに手渡した。

「鬼とタイマンで戦った褒美だ。その短剣をくれてやる」

「これですか?」


 ジーナが短剣を手に取ると、それを鞘から抜き放つ。無骨な飾り付けの短剣ではあるが、その刀身を見れば一発で業物だと解るはずだ。白い色をしたその刀身は鉄さえも軽く切り裂くほどの切れ味を見せてくれる。


「す、すごい、これ本当にもらって良いんですか?」

「良いぞ、考えてみればお前にはまだ何も装備をあげてなかったからな。格上と戦って生き延びた褒美だ」


 ジーナも喜んでくれたみたいでよかった。これで近接戦も多少はやれるだろう。


「騎士団が来るまで一週間か二週間はかかるはずだ。それまで最低限、騎士団と戦える力は身につけておけ」

「あー、それは変わらないんですか……」


 先ほどとは一変してジーナが肩を落とした。厳しいとは思うがこれも試練である、仕方のないことなのだ。

 そんな事を思いながらリリーの機嫌が収まるまでのサバイバル生活に俺は思いをはせていた。

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