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第6話 まずは単語から始めます

 一月も体力作りとバランスの微調整を繰り返していると、不格好ながら立ち上がる事が出来るようになった。


 まだ、頭が重いのでぷるぷると震えながらだが、大地に立っている。まだまだ歩くには掴まるのが必要だが、少しずつ成長しているのが分かるのは素晴らしい。


 そして、立ち上がる事が出来ると言う事は両手が自由になると言う事なので、両親が見えない隙に箱の蓋を開けてみたが、成果は無かった。


 中に入っているのは布地や糸ばかりだった。色々探った後に収穫が無いと判断した日は、流石にやさぐれて、ころころと寝返りだけを打っていた。



 体作りと並行して、発声の練習もしていたが、この頃になると声帯が発達してくるのかある程度抑揚の付いた言葉を発せられるようになった。


 疲れて立てない時は、ぺたりと胡坐(あぐら)状態になって、あーいーうーえーおーみたいに発生していたが、実際はあーあーぅーえぁーぉーみたいな発音だったに違いない。


 それでも面白がって色々と練習していると、母がちょこんと目前に座る。


「ペーチャ、ペーチャ」


 自分を指さして、繰り返し発音する単語。子育ての経験から考えると、ママに類似する言葉だと判断し、後に沿って発音してみる。


「ぅえーた」


「ペーチャ」


「えーら」


 そんなやり取りを二日ほど繰り返し、やっとペーチャと発音出来た瞬間、母がぶわっと泣き出した。流石に面食らった瞬間、体が勝手に反応し、私も泣き始める。二人でえんえんと泣いていると、様子を見に来た父がひょいと持ち上げあやしてくれる。


「ベレレテーイアンユ、ティン?」


「ディーリー、レ、グッティンペーチャ」


 何事かやり取りをした後に、父が期待度マックスでこちらを覗き込みながら母を指さすので、ペーチャと答えると、もう天井に着かんかとばかりに高い高いをされてびっくりする。泣く暇も無く、ただただ固まっていると、何度も何度も繰り返されるので、ふて寝しようかと思った瞬間に、自分自身を指す。


 父を何というのかは知らないなと小首を傾げると、寂しそうに部屋を出ていったので、ちょっとだけ傷つけたかもしれない。ごめんなさい、お父さん。



 この日から母の教育心に火が付いたのか、待望の書類のような何かを持ち込んでくれたのでひゃっはいと喜ぶ。


 と同時に、はてなマークが大量に頭から飛び出す事態に陥った。


 そもそも紙じゃなかった。何かの皮を加工したような薄茶色の板のような物に、割りばしペンで書かれた絵のような物と見た事も無い甲骨文字みたいな文字が細々と記載されている。


 母が指を指して、発音するのに合わせて、練習を繰り返す。絵が何を指すのか分かる物と分からない物があるが、取り敢えず発音とイントネーションを覚えないと会話も出来ない。ここは割り切って、耳コピーをして、単語を吸収していく。


 ちなみに、ファーチャは書かれていないが繰り返し覚えさせられた。きっとパパを指すんだろうなと、覚えた途端父を呼びに行った母を見て気付いた。

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