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第54話 犬ぞりはじめました

「ふぉ!! しゅごい」


 サンプルで作った荷車α一号君は、もう一組車輪を付けて、荷馬車α一号君になり集会所デビューを果たした。少し押すだけで、コロコロと進んでいく荷馬車は子供達の興味を引き、現在大絶賛遊ばれ中だ。


「ひゃふ、ひゃふん?」


 はっはっと構われて嬉しいオーラをこれでもかと発しつつ、荒い呼吸でお腹を見せているラーシーは女の子達の遊びたい相手ナンバーワンになっている。愛くるしい瞳で、老若関係なくいちころだ。老いと言っても、三歳児だけど。


 この可愛く面白い二つを掛け合わしたら、面白可愛いになるのではないかと、紐をラーシーにつけて荷馬車α一号君を連結してみる。


「ひゃふん!!」


 よちよちと歩くたびに、コロコロと付いてくる物が気になるのか、しっぽを振り振り、右往左往しながら歩き回る。その可愛らしい姿を鑑賞し、女の子達が歓声を上げる。まぁ、あんまりストレスになりそうな事をやるのもあれかなと紐を解くと、物凄い寂しそうな目でラーシーから見つめられる。あれだろうか、犬ぞりとかしたい犬種だったのだろうか。しょうがないので、再度括りつけてあげると、楽しそうにてちてち歩いて愛嬌を振りまく。


「ほちい」


「ちゅくって」


 幼馴染ーズがその姿を見て、無体な事を言い出した。


「ざいりょうがないよ」


「じゅるい!!」


 ぷんと二人が拗ねると、ててーっとままごとの輪に入っていったが、事あるごとにこちらをちらちら見ているので、構って欲しいのだと思う。



 そんな感じで日々を過ごしながら、時間を見ては木板に図面と大体の寸法を記載していく。画板くらいの大きさの薄い壁板を何枚かもらったので炭でしゃっしゃと描いていく。これでも羊皮紙よりは全然安上がりだそうだ。羊皮紙、高い。後、寸法に関して全然分からない。両親もあまり単位を気にした事が無いようなので、キュビット単位なのだろうと想像して割合で寸法を記載していった。



 暫くのんびりと皆と一緒に遊びながら、学びながら日々を過ごす。冬の盛りは過ぎて、雪も少しずつその姿を消し始める。あぁ、もう春なのだなと。壁にぺたんと背をつけて、高さを測ってみると、思った以上に伸びていた。上機嫌で朝ご飯を食べて、幼馴染ーズと一緒に遊ぼうとした時だった。


「レフェショの子はいるか!!」


 でーんと集会所の扉を開けて大きな男が大きな声で叫ぶ。その瞬間、一瞬静まり返った集会所は、ギャン泣きの渦に巻き込まれた。しまったと言わんばかりの表情を浮かべる男にお母さん方の一人が出てきて叫ぶ。


「お義父様!! ここは子供達の学び場です!! 何をやってらっしゃるんですか!!」


「いや、図面がな……」


「仕事の話は仕事場でなさって下さい!!」


 がーっと凄まれて、すごすごと帰っていく男。私に用だったと思うのだが、不憫な。少し経つと、そっと男が覗いていたので子供達が思い出し泣きを始める。


「おーとーうーさーまー?」


 お母さんの一人に言われて、慌ててぴゅーっと逃げていく。何なんだ、あれは。

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