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第48話 冬の対策をどうするか

 冬はどんどんと深くなる。何度かリグヴェーダとやり取りして、実施は春辺りを目途にしようという話になった。


 雪はどんどんと降り、辺りはすっかり雪景色になった。この辺りは森もあるし、川もあるので冬支度と言ってもそこまでぎちぎちに考える必要が無い。それに今年は……


「やはり……旨いな……」


 父が毟った魚の身を口に含み、しみじみと呟く。母が毟った身を口に入れてくれるので、にこにこはむはむと咀嚼して、ほっぺを差し出すと、母もほっぺでぐりぐりとしてくる。


 川魚の燻製だが、内陸の地方では現在大盛り上がりを見せている。冬になって保存期間が延びると、内陸の貴重な蛋白源としての発注がとんでもない数で押し寄せてきた。通常、冬場は山羊や羊などを潰しながら、耐え忍ぶのが常らしいのだが、今年は美味しいお魚が手に入ってあんまり潰さなくて良くなっている。そうなると、繁殖に回す数も増えるので、結局気前の良い話になるのだ。


「思った以上だな……」


 父がぼそりと呟くが、正規の契約による発注分のお金がもたらされたのだが、吹っ掛けただけあって、とんでもない金額になった。勿論、輸送隊に払う給料など諸経費を差し引いての純粋な利益としてだ。普通は、六十人の兵を受け入れるのに、借金をして環境を整えるのだけど、その必要がなさそうな程度に儲かった。交易、大好きです。


 また、今回の戦争に関しても仕置きがあった。ベベスタの父の兄はリグヴェーダより国外追放が適用された。やはり血の縁の柵が雁字搦めな世界では、こういう鶴の一声でばっさりといく必要があるのだなと納得がいった。資産の一部没収も一緒になされたので、そちらから今回頑張った村人達に贈り物を考えなければならない。


「そろそろつぎのいってなの」


 私がいうと、父が驚愕の眼差しで見つめてくる。


「まだやるのか?」


「けいぞくしないといみないの。ちんぷかするの」


 今は物珍しさと希少価値で高止まりしている燻製だが、今後レパートリーを増やしたり、価格を下げなければいけない時期がやってくる。その前に次の一手を考えなければならない。

 取り敢えず、まだまだ研究が必要な物に手は出ない。となると、簡単で効果的で、即効性のあるものに限られる。


 むむむと考えていると、モーニングミーティングは終わってしまった。



「ふぉ、どーだー!!」


「にげうの、てぃーだ、にげうの!!」


 フェリルの猛攻から、ジェシと一緒に逃げ惑う。家の庭も一面、白一色になっており、私が提案した雪合戦は子供の琴線をかき鳴らしてしまった。


 戦術も自己の保存も考えない雪玉の乱舞の中、一騎当千なのはフェリル。年長さんにも負けない勢いで、雪玉をぺぺぺっと投げてくる。私とジェシはその迫力に圧倒されて逃げの一手になっている。やはり、あの曾祖父にして、この曾孫ありだろう。ジェシの曾祖父に負けず劣らずフェリルの曾祖父も百戦錬磨の筋肉さんだ。そんな事を考えていると、フェリルの横っ面をべしっと雪玉が襲う。目をぱちくりとしていたフェリルの傍から、にょきっとウェルシが気配を表す。丁度出来ていた雪溜まりの小山の後ろに隠れて待っていたらしい。びっくりしていたフェリルにも笑顔が戻り、皆が大声で笑いあう温かい空間が出来上がった。


「うー、かいいの、かいかいなの」


 紅葉よりもう少し大きくなった手を、紅葉のように真っ赤にした幼馴染ーズがしきりに手を掻こうとして、お母さん方に止められている。


「ふぇぇ、ちゃみゅーの」


 吹雪いてきたので、皆で部屋に戻ったが、湿った服は容赦なく体温を奪う。この村の家に関してだが、夏の暑さに対応するため、開放は大きく、涼しい作りなのだが、冬場は寒くて敵わない。どんなに締め切っても、どこかから隙間風が入ってくる。土壁で補強している私の家でもそうなのだから、皆の家はいうまでもないのだろう。


「しゃかしゃかしてみて」


 私が手を合わせて、擦るのを見た子供達が、一斉に蠅のように手を擦り始める。


「ふぉぉ、ぬくいの!!」


「あったかーの」


 フェリルとジェシが温もった掌を林檎のようなほっぺに当てて温もっていたが、寒さ対策は急務だなと気付いた。

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