第46話 本格的な冬の始まり
体力を付けたいので、ありがたいなと思いながら、お遊戯という名目の訓練を続ける毎日を送っていると、本格的な冬が来た。これが明けると二歳になるのか、子供の頃って一年がもっと長かったような気がしたけど、あっという間だなと若干嘆息しながら日々を過ごす。
ある日、庭でみんなと鬼ごっこをして、体を温めていると、見知った文官さんと一緒に知らない若者がにこにこと玄関の方に向かってきた。
「ようこそいらしてくださいました。ぱぱにごようですか? どなたですか?」
きりっとした表情で、聞いてみるが、背中から恐る恐る覗いている顔二つのせいで台無しだよ。次は私が鬼だよ。ふぉぉ。
「あぁ、立派な挨拶だ。君がティーダかい? お父さんはいるかな。セーファが来たと伝えて欲しい」
そう言われたので、お待ち下さいと言い残し、三人でててーっと執務室にお使いに行く。
「ぱぱ、セーファさんがこられたよ」
私がそう言うと、書類を読んでいた父が目を丸くする。
「珍しいな。態々ここまで来るとは……。ティンに伝えてくれるかな?」
「あい!!」
お使いを言い渡されるのが誇らしいのか、私よりも先に二人が返事をすると、にこやかに父が二人の頭を撫でる。くすぐったそうにしていたフェリルとジェシがすちゃっと切り替えて、私の両手を引っ張る。
「いちょぐの!!」
「おちゅかい!!」
ててーっと台所に向かうと、母が作業をしていたので、同じく報告をする。
「あらあら。珍しい。リグヴェーダ以来じゃないかしら……。飲み物ね」
あらあらまぁまぁと少し楽しそうに用意をする母を二人が真剣そうな表情で見つめる。そっと二人の脇をくすぐると、めっと怒られたので本気だ。中々台所に入れてもらえない二人にとっては家事を生で見る絶好の機会なのだろう。今度はままごとに来客者のキャラクターが増えそうだ。
母が応接間に入っていくと、緊張を緩めた二人がふぅぅと深い息を吐く。
「しゅごいの」
「きえー」
ほわほわと颯爽と歩く母の姿をイメージしているのか、きらきらお目目で頬を挟んで、いやんいやんと体をくねくねしている。ふむ同じく二歳に向かって進んでいるが、女の子の方がそういう部分では成長が早いんだろうなと。男の子はまだ、遊ぶので精一杯の子ばかりだ。面白いなと思いながら、庭に向かう。ふと気付くと、白い物が舞っていた。あぁ、冬も本番だな。
一歳児は初めての雪に狂喜乱舞し、庭駆けまわり、お母さん方は寒さに毛皮で丸くなる状態だった。




