第24話 川の産物をどうするか、それが悩み
ぽかぽか太陽と焚火に照らされて体が温もってくると、うつらうつらと皆が揺れ始める。年の若い順からぱたぱたとお母さん方の太ももに倒れていく。二人も寝ないの、遊ぶのと言っていたが、睡魔には勝てず、すやぁっと寝入ってしまった。
「ティーダも良いのよ」
ぽんぽんと母が叩く太ももによじよじとよじ登ると、そっと抱き上げられる。柔らかで温かな体に包まれると、ふわぁと体の芯から眠気汁みたいなのが巡ってきて、一気に意識を落とす。瞼が落ちる刹那に見たのは、寝入った子供を他のお母さんに預けて、竿を持って颯爽と川の方に向かっていく女傑の姿であった。
「……だ……ぃだ、ティーダ。起きなさい」
緩やかに揺さぶられる感触で目を覚ますと、目の前に慈愛に満ちた母の顔があった。そっと手を伸ばすと、頬を擦り付け、そっと額にくっつける。
「ん。熱は無いわね」
気付くと、布で包まれており、風邪を引かないようにしてくれたのだと気付く。火の片づけは終わっており、空はもう茜が差し込み始めている。ヒグラシのような夏の声が少し物寂し気な音色を奏でている。
「じゃあ、帰りましょうか」
お母さん方が最後の確認を終えて、立ち上がる。行きしには空だった魚籠からはぴくぴく動く魚の尻尾がこれでもかと突き出している。最後に家に帰って分けるのかなと思っていたら、ささっとミイラ状態の私を抱っこ紐で縛る。
帰り道の子守歌は、少しだけ寂し気で、どこか懐かしい雰囲気を感じさせた。とすとすと一定のリズムに再び眠気を催していると、家に到着する。
「駄目よ。あまり寝ると、夜眠れなくなるわ」
くりくりっと顎で額を突かれた私は目を覚まし辺りを見回す。子供達は銘々、半分眠ったようにミイラ状態でぶら下がっている。お母さん方は、ささっと手早く、魚を分けて、ほくほく顔で家路を急ぐ。
家で待っていた父が、夕食で見事に料理された魚を前にして大喜びしたのは言うまでもない。
夜、少し眠り過ぎた私は、真夜中に目覚める。ふむ。川の規模は思ったより大きかった。すぐに水車動力に向かうにはちょっと投資が大きい。まずは手出しをしていない真水の資金を稼ぐべきだなと思って、川魚を思い出す。燻製……後は……。ふと閃いた内容を実施するにあたっての前提条件を考える。次は猟、罠猟を見せてもらえば、何とかなるかな。少し頼りないが目算を付けて目を閉じる。あまり遅くまで起きていると成長に影響する。出来れば身長は伸びて欲しいので、頑張って眠る事にした。すやぁ。




