第23話 口から流れ出す得体の知れないもの
「くちん……」
並べられたバタ足ベイビーの誰かがくしゃみをした瞬間、天使が通る。束の間の沈黙の後、お母さん方がそそくさと水から掬い上げて、皆を火の回りに座らせて、体を拭ってくれる。ぺろーんとおしめを剥がされて、新しい物に換えてくれるのは良いけど、若干恥ずかしい。もう好きにしてと諦めて足を上げていると、両側からにぱっと満面の笑顔が輝く。濡れていないおしめが気持ち良かったのか、フェリルとジェシはご機嫌だ。
あんまり体感はしていないが、運動をして汗もかいていると言う事で、白湯が配られる。水で薄めたぬるめの白湯だが、柑橘系の香りと若干の塩味を感じる。まだまだ嗅覚が鈍感なのではっきりと何かとは分からないが、レモンとか酢橘とかあの辺りの香りだ。塩味はミネラル補給かな。そういうのもきちんと考えられているというのは経験って重要だな。
そんな事を考えながら、ほくほく顔でこくりこくりと楽しんでいると、横からだばーっと水音が聞こえる。何事!? と両側を見ると、物凄く嫌そうな顔で、二人が吐き出している。
「まじゅー……」
「にがーの……」
でれーっとよだれ混じりの何かを吐き出している二人にをお母さん方があらあらと布で拭う。子供にはまだ柑橘は早かったのか、苦味だけを感じて、吐き出したようだ。
平和な顔で私がのほほんと飲んでいると、両側から手が伸びてくる。
「こえ、うまーなの!」
「ちがゆ!!」
何か私の分だけ他の物が入っているかのような冤罪をかけられたので、お母さん方の方を見ると、苦笑を向けられる。しょうがないなとコップに注いであげて、三人で飲む。
「うでぇ……」
「にがー……」
先程と全く変わらないアクションにお母さん方がクスクス笑う中、私は引き続き平和な顔で飲み続ける。美味しい? いや、美味しくないよ。薬、薬。




