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第22話 ダイブッ!!

 川からの爽やかな風を全身で浴びてます。おむつ一丁で。なにこれ、どゆことと思ったけど、水着なんて無いので、おむつだけだ。周りを見渡すと、今回川で遊ぶ老若男女関係なく、おむつの群れがうぞうぞしている。うん、一番の老人三歳の子供でも男女の差なんてない。みんな元気よくお母さんに手を引かれて、ぱちゃぱちゃ遊び始めている。

 ちなみに、川の本流ではなく、偶々出来た淵のような部分を下半分で堰き止めて川の流れを穏やかに作っている水浴び場のようだ。淀んでいたら濁っているのではと思ったが、川の本流も含めて、思いもよらない程透明度が高い。山の清水や上流の川のように澄んで透明だ。苔もそこまでは密集している訳では無く、日常的に遊び場や何かの用途に使われているのが良く分かる。キラキラと水面(みなも)が輝き、光が揺蕩い踊るさまに心を惹かれていると、唐突に両手を引っ張られる。


「およーの!!」


「あちょぶ!!」


 暑さから解放されて超ご機嫌のフェルリとジェシに引っ張られて、足を川に着ける。水温は思った以上に低く、これはあまり遊べないなと思ったら、岸辺ではお母さん方が手分けして簡易の(かまど)のような物を用意している。慣れているなと思いながら、手を引かれるままに膝上くらいの水深まで進んでみる。水の中に目を凝らすと、小魚達が飛び交うように泳いでいる。


「さかな」


 私が指さすと、二人がふんすふんすと気合の入った顔で、眺めはじめる。どうして気合が入っているかと言うと、お肉は狩りなどで比較的手に入りやすいが、魚は漁師から買わないといけないのでちょっとお高めらしい。女子達はお魚に飢えているでござる。


「いたー!!」


「ふぉ、ひおえない!!」


 ぱしゃぱしゃと魚を追うが、逃げられ回り、私はその余波を食らってびしょびしょになる。うわぁ、おむつまで染み込んでくる。と、気持ちが悪いので、諦めてとぷんと潜ってみる。水面で眺めるより、水の中は生命が豊富だ。濁りも少なく、遠くまで見渡せる。臭いも無く、蛭のような危険な生き物も見当たらない。それに、そこそこ大物の魚もうようよと川の堰の方では泳いでいる。ただ、その辺りは全く焼けていない真っ白な生足が何本も生えているので、近付けない。この村のお嬢様方は、スカートの丈が長めで、足は脛がちょろっと見える程度なのだが、こういう時はがばっと威勢が良いので困る。

 ぷはぁと水から顔を出すと、おぉぉというどよめきが生まれる。はてなと思うと、子供達が顔を浸けようとして、お母さんに止められる。


「あーしも、あーしもやいたい!!」


「おなじ、するー!!」


 じたばたしている子供を抱いたお母さん方が苦笑を浮かべる中、そっと母が後ろから抱きしめてくる。


「もう、駄目よ。心配したんだから。まだ泳ぐなんて無理なの。だから、顔は出していてね」


 いつもタライに入ったお湯で行水していたので、まさかいきなり潜ると思っていなかったのか、母が少し泣きそうな表情を浮かべている。


「ごめんなさい……」


 素直に謝ると、こつんと頭を叩かれて、優しく撫でられる。


「良いの。ティーダはお利口さんだから、分かるわね。まだ少し早いだけなの。急がなくて良いのよ」


 そう言って、両手を支えてくれるので、バタ足をし始めると、それを見た子供達が一斉にお母さんに飛び掛かっていく。岸辺では、小さな子豚さん達がずらりと並んでぱしゃぱしゃとしている光景が暫く続いた。

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