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第20話 ドキッ幼児と母親だけの水泳大会

 二人の小さな怪獣(ベイビー・モンスター)の襲来を受けつつも、子供達の識字率は徐々に向上している。身の回りの物を何というかは大体分かってきた。ここまで来ると文法なのだが、逆に単語が理解出来れば、家庭で話す事によって文法も学べる。

 夏の最中、朝というのに日差しが差し込む窓からは、既に熱線が家の中を蹂躙している。私は体温が高めの子供の体を持て余して、ちょっとうでーっと伸び気味に、朝ご飯を食べる。


「会話が増えたと好評だ」


 父の唐突な言葉に母と私が首を傾げる。


「いや、子供達が文字や単語を覚えるようになっただろう? 家の中で盛んに話をするらしいので、家庭内の会話が増えたと言う事だ」


 その口ぶりからして、悪い報告とは受け取っていないようだ。まずは一段階クリアという感じだろうか。


「それもこれも、ティーダの頑張りだな。凄いな、我が子よ」


 大きな掌で、力強くぐわんぐわんと揺らされ、平衡感覚を失い、くわんくわんと体が揺れる。


「あい!!」


 その姿を見て、母がそっと目尻を布で押さえる。


「はは。頑張ったら何か褒美が無いとな。何か欲しい物はあるか? また木か?」


 父が上機嫌で言うのに、少し考える。もう少し大規模に単語木片を作って、村全体の識字率を上げるというラインは存在するが、そこまでいくと教育インフラの設備になる。私のような子供が一人でやるべきでは無いし、有用性を認識した父に働きかければ、公的な資金を以って実施してもらえる可能性が高い。そうなら、ここでご褒美に使うのは得策ではない。


「みず……」


「ん?」


 顔を寄せてくる両親に向かい、ぱっと花開く笑顔を見せる。


「みずがたくさんのところにいきたい。あついの」


 そう告げると、思案していた両親がぽんと手を打つ。


「川で良いか。浅瀬はあるし……。深みに行かないように注意は必要だが……」


「それは母親達で見るべきね。ついでに川石も集めてくるわ。釣りも出来れば良いわね」


 両親の議論に熱が籠る。


「ふむ。漁師の領分は侵さないように。分かっていると思うが、あれも免状あっての仕事だから。許してはくれようが、気遣いは重要だ」


「見張りも重要ね。流されたら問題だから……。もしもの為に換えの網を借りても良いかしら」


「漁師が何というかだが、子供の命には代えられないからな。しかし、水遊びとは。もう少し大きな子供がやるような遊びだが……」


「ふふ。この子ったら、おませなの、ねぇ?」


 ニマニマと笑う母の目論見が分からなかったが、はっと気づく。いや、ウェルシとか関係ないよ? そもそも一歳児から三歳児のプール保育を見ても何も感じないよ? お母さん、怖いよ!!

 そんな紆余曲折はあったが、村としての初の試み。ドキッ幼児と母親だけの水泳大会が開催される事になった。いや、目的は水産物の調査と川の様子の把握だからね? ロリコンの気はないよ? もう精神年齢五十を超えているからね?

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