第15話 実績と新たな投資
と言う訳で、次の日からも若干遊び方を変えながら札当てゲームは続く。積み木や木馬など限られた遊具しかない状況に飽きていた皆は我先にと食いついてきたが、文字を覚えて難易度が下がっていくと、飽きたのか、また他の遊びに戻っていく。別にそれで問題は無い。まずの目的は果たせた。
現在は小さな子相手にウェルシが先生になりながら、私とフェリル、ジェシが助手になって、札当てゲームを続けている。子供達がキラキラと目を輝かせながら手を挙げるのを眺めて、ウェルシが感極まっているのを見るのが面白い。先生とかに向いているかもしれない。
「あしょばなーの?」
フェリルとジェシがくてんと首を傾げるが、頭を撫でて諭す。
「もうすこしで、つぎのあそびがつくれるよ。いちばんにあそぶ?」
そう問うと、ふんすと言った顔で、助手に戻っていくので、子供可愛い。
そんな感じで最近の日常が終わり、夕方と言う事で家に入って、夕食を食べる。離乳食からかなり普通食に移行しており、今日はちょっと硬めのお肉を齧りながら、乳粥を食べる。自由にならない紅葉を駆使しながら、匙を何とか口の範囲に納めてもくもくと咀嚼していると、父がぽつりと言葉を呟く。
「そういえば、聞くところによると、子供達が文字を読むようになっているらしい」
その言葉にピンときた私は、しめしめと思いながら表情には出さないように済ましたまま、もくもく食べ続ける。
「子供達って、家に来ている子達かしら……。文字を読むって、まだ早いわよ?」
「そう。聞いてそう思ったが……。どうもうちに来ている子達が、自宅に帰ってから、色々と聞くらしい。この文字は何と。日頃文字を使っている人間なら問題無いのだけど、親が答えられない状況というのはちょっとね」
父が少し困り顔で呟く。
「そうね。リグヴェーダのお仕事に従事している人は分かるだろうけど、普通の人は分からないから。でも、良い事よね?」
「あぁ。文字を覚える事は大切だ。この村の外の人間とやり取りをするにせよ、文字が分からなければ騙される心配もある……。で、問題は……」
父がそう言うと、こちらに温かな目を向ける。
「誰が子供に文字を教えているかだ。ティーダ」
「あい!!」
名前を呼ばれたので、元気良く返事をすると、少し苦笑したように父が頭を撫でる。
「文字の勉強をするというので、木を渡すのを許したけど、あれはティーダが勉強するものじゃなかったのかな?」
「みんなでする。もじはパパのおへやでおぼえた。おかあさんもおしえてくれたから」
そう答えると、母が感極まったように、うぅっと目の端を布で拭く。それを眺めて、優し気な表情を浮かべる父。
「そうか……。もっと勉強するのかな?」
「きがおおくあると、できる。ほしい!!」
少し思案気味に顔を下げる父だが、母の様子と、実績を考えれば折れるだろうと、ちょっとほくそ笑みながら考える。ふふふ、もう少し木材をゲットだ!!




