第105話 誕生日の贈り物(タイプ:ジェシ三歳)
新連載を始めました。
(違法という意味で)ブラック会社に勤務していた私が異世界に転移したら
https://ncode.syosetu.com/n1336eh/
違法な物を扱う商社の四十代おっさんが異世界に飛ばされて、違法な知識で無双する作品です。
ちょっとダークな娯楽作品。こちらもお楽しみ下さい。
重大発表です!!
連載を中断してまで頑張っていましたが、遂に異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろうがコミカライズです。
デンシバーズ http://denshi-birz.com/ にて、この秋連載スタート予定です!!
やっと連載再開出来ました!!
絵柄や詳細は下記をご確認下さい!!
https://twitter.com/n0885dc/status/913917731665190912
また、十月三十日には、異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろうの三巻が発売となります。
コミカライズと合わせて楽しんで頂ければ幸いです。やっとタロの出番です。可愛いです!!
「たんじょーび、おめえとー!!」
本日はジェシの誕生日。去年と同じく、あわあわしながらプレゼントを受け取っている。それでも去年よりは落ち着いているし、引き攣りながらも笑顔は維持している。そんな成長の跡が見えて微笑ましい。
「おめえとーなの!!」
「フェリルー」
ひしっと抱き合いながら感動の一時を過ごすのも一緒。
「ティーダ……」
妙に紅潮した顔で、トゥンクトゥンクみたいに胸を押さえているジェシの前に、悠然と進む。心の中は、悄然としている。毎回トリなの、本当に勘弁して欲しい。期待を煽る気は無いのに。
ちなみに背後にはフェリルが引っ付き虫みたいにスタンバイしている。すでに肩に顎が乗っているので、噛む気満々だ。教育して、お母さん。
「はい、ジェシ。おたんじょうび、おめでとう」
そっと差し出した小さく長い箱。フェリルが背後で一瞬愉悦顔を浮かべようとして、引き締め直したのが筋肉の動きで分かる。去年の経験で、大きさが戦力の絶対的評価基準では無いのを学習している。
ジェシも同じく今年は期待に満ちた表情で、箱を開ける。
「ぼう?」
ジェシがするりと引き抜いた、編み棒みたいな一本の棒。それを見て、勝利を確信したのか、フェリルの表情が動いたのが分かった。
「ふぉ、おはな……」
ジェシは諦めず、棒を隅々まで確認し、彫りの緻密さにほぅっと息を吐く。
「もみじというきのはっぱなの。しかがさいきんとれるから。あいしょういいの」
花札の世界でだが。そう言っても通じないのできっぱり言い切ると、ジェシが期待を込めてそっと棒を手渡してくる。
「おちえて」
わくわくという文字が背中に透けて見えるようなジェシの背後に回って、長く艶やかな髪をまとめて、下側で二回捻じる。一旦上に上げて、棒を引っかけて、半円を描く。そのまま上から刺し込んだら、まとめ髪の完成だ。
「できたよ」
そっと櫛をお団子の上に刺してそのまま離れると、ジェシがうなじの辺りをぺちぺち触る。
「ふぉぉ、しゅじゅちい」
クルクル回りながら、後ろ髪が靡き躍るのを楽しんでいる。
「どーなってゆの?」
暫くクルクルしていたジェシが聞いてくるので、小刀を抜いてジェシの顔の横に翳す。距離はきちんと測っている。
「みてごらん」
その言葉でジェシが小刀に映る、横顔をチラチラ確認しながら、後ろ髪を引っ張ったり、上に上げたり試す。
「ふぉぉぉぉぉ!! ねーたまみたい!! おちょな!! おちょな!!」
状況が理解出来たのか、目を丸くして興奮し、お母さんの方にててーっと駆けだす。腕に抱き着いて、引っ張りながら、後ろ髪を楽しそうに見せつけているのは無邪気で可愛い。
私は肩が痛い。フェリル、千切れる。ステイ。本当に、ステイ。てちてちとフェリルのお母さんの元まで引っ張っていって、何とか外してもらって拘束してもらう。あぁ、赤くなってる。
「ティーダ!!」
服を開けて肩を確認していた私は、超至近距離で聞こえた声に反応して、顔を上げてしまった。
「ちゅき!!」
ぶちゅっと柔らかいものが物凄い勢いで顔に追突してくる。このままだと歯で切れちゃうと思って上体を反らすと、そのまま抱き着いてくるジェシ。
あぁ、もう油断した。フェリル、成長に伴って顎の力も増しているんだから考えて……。あまりの痛みに、ジェシの攻撃をすっかり失念してた。
「む!! むむむ……」
顔も腕もロックされて、上体を反らしているのに体重をかけられて、結局支えきれず、ばたりと尻もちを搗く。
痛いと叫びたいが、啄ばむようなジェシの攻勢は収まらず、顔という顔をぷちゅんぷちゅん攻撃される。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
遠くではフェリルの叫び。お母さん方のさんざめくような笑い声。母とヴェーチィーのまぁという呆れ声。
「たすけてー」
私の懇願は、興奮したジェシがぐじゅぐじゅと私の胸で顔を擦り付けるまで続いた。
ふぉぉ、避けきれなかった……。しょんぼり。
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(違法という意味で)ブラック会社に勤務していた私が異世界に転移したら
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