終わりなきFight!
凛が目を覚ますとそこは知らない天井だった。
「ここ・・・病院?あたしあの時・・・・源治!」
凛が隣のベットを見るとそこには「葛城源治」と書かれた名札が置かれていたが、そのベットに寝ている人物は白いシーツで頭まで隠されていた。
「まさか・・・・」
凛の顔から血の気が引く。その瞬間もぞもぞと顔の辺りのシーツが動く。
「へ?」
「又隠れてなにか食べてるな!まだ固形物は駄目だとあれ程言っただろう!」
部屋に入ってきた直後にそれを見た菫が怒鳴りながらベッドに近づきシーツを引っ剥がす。そこにはこっそり病室を抜け出してコンビニで買ってきた肉まんを頬張る源治が居た。
「うるへー!血が足りねーんだよ!なんでも良いからじゃんじゃんもってこい!」
「まず肉まんを食べるのをやめろ!、って力強いな!?」
見つかってもなお肉まんを頬張る源治から取り上げようと腕を掴むがその腕に込めれれて力にツッコミを入れる菫。その光景を見た凛は思わず吹き出してしまう。
「ふふっ・・・・」
「おっ起きたかじゃじゃ馬娘。お前が寝てばっかだからからかう相手がなくて暇してたんだ。まぁ心配は微塵もしてなかったけどな」
「嘘を言うな。凛君、ここだけの話源治が目を覚ましたのは二日前だが寝たままの君をえらく心配していたぞ。まったく親バカというかなんというか・・・・」
「お前っ、それをバラすんじゃないよ。そういうのは本人の居ないところでバラすのが粋ってもんだろ?」
「うるさい、主治医の言いつけを守らない男のプライドなど知ったことではない」
「源治・・・・よかったぁ」
安堵のあまり凛が源治に抱きつく。
「あの時源治が死んじゃったと思って・・・私心配で・・・・」
「バカタレ、俺がそう簡単にくたばるかってんだ。ちょっとやばかったが地獄の獄卒共何人かぶちのめしてあの世から脱走してやったぜ。・・・・後そろそろ離れろ傷口が締め付けられて死ぬほど痛い」
「あっごめん。でも・・・源治らしい。」
「源治に腹パンされて意識を失ったと思ったら謎の爆発。急行してみれば爆心地で二人が倒れている。すぐに緊急搬送してからの大手術。まったく君たちはどれだけ私を振り回せば気が済むんだ?」
「うっ・・・ごめんなさい」
「けどまぁ・・・・・・君たちが無事で良かった。友人の妹と恋人を一度に亡くすのは辛いからな」
「ちょいまて、誰が何時お前の恋人になったよ」
「あの時ハグして「愛してる」と言ってくれただろう?」
「ちげえよ!バカ!あん時は・・・・・・・」
突っ込みを入れようとしたが急にあの時にありがとうと言ったことが恥ずかしくなったのか押し黙ると、シーツを被って狸寝入りを決め込む源治。
「逃げられてしまったか・・・とにかく目を覚ましたようでよかった。後で精密検査を行うからそれまではゆっくりしていてくれ」
やれやれと肩を竦めると、病室を後にする菫。後には源治と凛が残される。
「ねえ源治」
「なんだ?」
「あの時初めてあたしのこと名前で呼んでくれたね」
「お前の実力はともかく根性は認めたんだよ。お前才能はあるがまだまだ実戦不足で荒すぎる、静葉には遠いな」
「わかってる。だから師匠として相棒としてこれからもよろしくね源治」
「俺の扱きは厳しいぞ覚悟しとけ、凛」
それから2ヶ月後。退院した源治と一足早く退院した凛は一人の墓前を訪れていた。
「あの怪我から2ヶ月で退院ってどんな体してるの?」
「そんなもん朝食に山盛りのコーンフレーク食ってれば簡単だ」
「・・・・・ほんとに人間じゃないんだね」
「ビビったのならコンビ解消でもいいぞ」
「まさか、少なくとも源治に勝つまであたしは源治と組み続けるよ」
「それなら一生無理だな。静葉残念ながらお前の妹は行き遅れが確定してしまった・・・・」
「ちょっと、勝手にそんなこと決めないでよ。」
普段どおりの漫才のようなやり取りを続ける二人その眼前には静葉の墓があった。
「姉さんはあたしが退魔隊に入るのを反対してたけど、あたしは源治と組むよ。それでいつか姉さんを越えてみせる」
「だ、そうだ。まぁあの世からゆっくりと見物しててくれ。それとこれお前の好物置いとくぞ」
そう言ってプリンを墓前に供える源治。
「・・・・・・姉さん、私は大丈夫だから、天国から見守っててよ」
「・・・・・おっとタバコが切れちまった。ちょっくら買ってくるからよ。お前は好きにしてな」
そそくさとその場から立ち去る源治。後には凛だけが残される。
「不器用なんだから・・・・・・姉さん。あたし、やったよ、姉さんの敵討てたよ・・・・・・・けど何でかな?全然心が晴れないんだ。姉さん。うっ、・・・・・・・うあああああああああああああああああ!」
その場で膝を付き大粒の涙を流す凛。それは今まで姉の敵を討つために戦い続けた少女が初めて流した涙だった。
「もっと姉さんと居たかった!もっと姉さんと話したかった!もっと姉さんに色々教えてもらいたかった!」
今までで誰にも言わなかった思いを墓前で吐露する凛。そして凛は泣き続けた。それこそ1年間押さえ続けた悲しみを全て吐き出すかのごとく。源治はそれをこっそりと物陰から聞いていたがその頬には一筋の涙が流れていた。
ひとしきり泣いた凛は源治と合流した。既に日は傾き夕方に差し掛かっていた。
「お待たせ」
「おう、しっかり泣いたみたいだな」
「・・・・ほっぺ。痕付いてるよ」
「マジかっ・・・・嵌めたな?」
「盗み見してたお返し」
「相変わらず可愛げのないガキだ」
そんな事を話していると源治の端末に連絡が入る。
「おっし、復帰後の初仕事だ。行くぞ凛!」
「うん!」
そして二人を乗せたバイクは夜の街へ向かっていく。狙うは罪なき人々に仇なす怪物「怪異」。二人の戦いは未だ終わらない。
第1部完
くぅ疲れました(略)これにて第1部は終了です。しかし本文にも書いたとおり源治と凛の戦いはまだ終わりではありません。まだ見ぬ強敵。そして源治の生みの親でもある吸血鬼、ジェームズ・モリアーティー教授との決着も控えています。
ここまで読んでくださった読者の方に深い感謝の念を捧げると共にこれからも続く源治と凛の物語を見守っていただければ幸いです。
ではまた2部でお会いしましょう。
See you again!




