下されたFINISH!
「凛、あいつの得意術式は雷だ。軌道が読みづらいから気いつけろ」
「それで、戦法はどうする?」
「俺がどんな戦い方するかわかってるだろ?」
「正面から堂々と、でしょ?わかってる」
「わかってるじゃねえか、そんじゃぶちかませ!!」
そして両腕を左右に広げた構えで源治が走り出すとその後ろを凛が走る。
「死ねぇ!」
龍二の手から放たれた電撃を前にして源治は一歩も引かず。
「炎術、負亜衣亞卯尾留!(ファイアーウォール)」
急停止して地面に手をつくとそこから炎の壁が出現し雷撃を完全に防ぐ。
「行け凛!」
「うん!」
炎の壁が目くらましになった隙に龍二の横に回り込んだ凛が柱を蹴り加速した状態でレイピアを構え一直線に突進する。
「そんな浅はかな手食らうとでも、っ!?」
「残念、食らうんだなこれが」
一瞬龍二の注意が凛に向いたところで距離を詰めた源治が龍二の両腕を掴み拘束する。
「ぶちかませ凛!」
「はああああ!」
しかし龍二も頭を反らして頭部への突きを回避するが避けきれず左目の上の皮膚を切り、血が流れたことで左側の視界が塞がれる。
「凛は左から攻撃しろ。俺は右からだ!」
そして着地した凛は死角になる左目側から源治はまともに見える右目側から攻める。完全に龍二の劣勢だった。右からはまともに貰えば大ダメージの攻撃力を持つ源治が、左からは凛が手数で押してくる。
「2対1とは卑怯な・・・・」
「「最初に袋にしようとしたお前が言うな!」」
突っ込みと同時に凛の蹴りが左脇腹に、源治の左拳が右頬に突き刺さる。
「ぐおっ・・・・・」
その衝撃に体勢を崩す龍二しかしその口は笑っていた。
「誘われたっ!凛!」
「えっ?きゃ!」
源治が凛の後ろ襟を掴み後方に放り投げると
「雷術、鳴神!」
龍二を中心に巨大な雷による衝撃波が放たれる投げ飛ばされた凛は無事だったが至近距離に居た源治はモロに直撃し壁に向かって吹き飛ぶ。
「源治!」
「凛!「Bumblebee」!」
「えっ!うん!」
一瞬何のことかと思った凛だがすぐに源治の意図を読み取り氷の鎖を作り出すと壁に激突する寸前で源治に巻きつける。
「おっもい・・・・・」
鎖が源治に巻き付くと掴んでその場で一回転する。当然鎖で繋がれた源治はコンパスのように一回転する。
「オラオラオラァ!!」
回転する最中壁を走りながら何度も拳を前に突き出すとその度に拳から火の玉が発射され龍二をその場に釘付けにする。
「凛、放せ!」
源治の合図で凛が鎖から手を離すとその勢いで龍二の腹へ飛び蹴りが炸裂する。
「まだまだぁ!」
着地後間髪入れずに入れられる左フック、そこから多種多様な打撃技の連打。その技の前身は10年前のミラージュ戦で使っていた。本来この技は過去源治が気まぐれで読んだ漫画の技だった。それは空手家が放つ「一定のパターンで構成された一連の型の流れを複数用意しそれらをつなぎ合わせることで絶え間ない連打を浴びせる」というものだった。試しに菫に可能か聞いてみたところ、「きちんと出す技全てを理解し頭で考えずに身体が自然に出せる様になれば可能」とのことだった。そして源治はこの技に「殴獄」と名付けた。
「打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打打!!ほあたぁ!!」
そして最後の一撃、源治得意の右の正拳突きが放たれる。十字架の下に吹き飛ばされる龍二。土埃が舞いその姿が見えなくなる。
「やった!?」
「それはフラグ・・・っ凛!」
「え?」
源治の元に駆け寄った凛。その瞬間源治が止める間もなく凛を電撃が襲う。反応もできずに壁に叩きつけられる凛。
「はぁっ・・・・俺はまだ生きてるぞ源治!」
ふらつきながらもしっかりした足取りで立ち上がる龍二。先程の源治の一撃は怪我のせいで力が乗り切らずに結果決着を逃してしまった。
「龍二いいいいいいいい!」
激高して走り出す源治。しかしその途中で不意に足が止まる。遂に騙し騙し戦っていたツケが源治に降り注いだのだ。傷口が完全に開き口の部分から血が流れる。いくら身体能力を上げても負った怪我までは治せない。だから源治は相手を煽り自分を鼓舞し早めの決着を狙った。しかし先程大きく体力を消耗する技、欧獄を放ったことで遂に限界が来たのだ。
「どうやら限界のようだな源治、反撃してみろ!さっきまでの威勢はどうした!誰が!誰を!殺すって!?」
源治の側まで歩み寄った龍二の手足が何度も源治を打つ。何度も打たれバランスを崩し地面に転がる源治。
「所詮お前みたいな雑種は俺のような選ばれた天才には勝てないんだよ!あの出来損ないの妹の元に送ってやるよ、死ねぇ!!」
そして振り下ろされる隆二の腕。龍二の目には次の瞬間砕かれる源治の頭が写り勝ちを確信した。しかし仮面の赤い目は輝きを失っていなかった。
その光景が現実になることはなかった。
龍二の一撃は源治の右腕によって止められた。
「てめぇ、今なんてった?・・・・・あいつが出来損ないだと?ふざけんなよ。死ぬのは・・・・・てめえだ!!」
左ストレートが龍二の腹に叩き込まれる。その今ままでで最も重い一撃に無様に地面を転がる龍二。源治を見ると歩くスピードは遅いが確実に近づいてくる。その姿に龍二は一つの思いを胸に抱いてしまった。
「(こいつは殺せない・・・・・死なない相手をどうやって殺す!?・・・勝てない、こいつには絶対に勝てない)」
急に止まった源治が両腕を左右に広げ腰を深く落とし右足をやや前に出す。足元に魔法陣が現れ源治の右足に炎が灯ると共に途方もないエネルギーが貯められていくのが肉眼でも確認できる。龍二は直感した。これを食らうと確実に自分は死ぬ。以前のように回収され再生手術によって復活などできないぐらい自分は塵になるだろうということが。
「さっきの言葉取り消せとかそんなことは言わねえ。なんせ今からお前は跡形もなく吹き飛んで死ぬからな。死人に口なし死んだら終わりってな。あの世であいつに詫びさせもしねえ。あの世にもいけないほど消し飛ばす。」
「ひっひいいいいいいいい!」
心が折れ恐怖を感じた龍二は咄嗟に電撃で天井に穴を開け、そこから脱出を図る。しかし屋根に飛び移りもう一度跳ぼうとした瞬間どこからか現れた氷の鎖が龍二の手足を拘束する。
「絶対に・・・逃がさない」
「このっ、クソカスがああああああああ!」
鎖を巻きつけたのは凛だった。龍二は怒りのあまり一時的に源治への恐怖を忘れて凛を睨みつける。
その瞬間屋根を突き破り天高く飛び上がる炎の塊。それは龍二のいる場所よりも遥か高く飛び上がり一定の高度に達すると満月を背に龍二に向かって飛び蹴りの体勢で突撃していく。拘束されているせいで避けることができずにまともに飛び蹴りを食らう龍二。一瞬で元いた屋根を突き破り床に叩きつけられる。源治の背中からは翼のように炎が吹き出ておりそれがブースターとなり龍二を踏みつけたまま逃がさない。
「いつまでも俺たちの人生に関わってくるんじゃねえ!!このまま消え失せろ!!」
「やめろっ!やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
床と源治に挟まれ破壊エネルギーはどこへと逃げることもなく龍二の身体に溜まり続ける。それが臨界を超えた瞬間。源治を中心に巨大な爆発が起きる。それは廃教会全てを吹き飛ばす巨大な爆発となった。
「けほっ」
瓦礫の山と化した廃教会。その瓦礫の山の中から凛が顔を出す。爆心地は小規模なクレーターとなっており。その中心に源治は立っていた。
「もうっ・・・威力強すぎ。危うくこっちまで生き埋めになるところ・・・・・・・源治?」
立ち尽くす源治からは反応がない。凛が触れるとその瞬間源治の変身が解けその場に倒れる。
「嘘・・・・げん・・・じ・・・」
源治が倒れたショックで凛も戦闘のダメージが一気に吹き出したのかその場で意識を失う。二人が菫達医療班に収容されたのはそれから間もなくのことだった。




